【インタビュー 後編】清春、デビュー25年の現在地「貫くことのほうが今の僕の年齢にとっては重要」
■表現っていうのは創作していくこと
■それは自分が好きじゃないとできない
──奇をてらったものではないという。
清春:急に、“ブレイクビーツやってみませんか?”とか“デスヴォイス、どうですか?”じゃなくてね。自分にないものでも、人に聴かせてもらったことをきっかけに好きになったら採り入れるけど、基本的に自分の趣味は曲げない。これは表現者としてのスタート地点です。お笑いとかでもそうじゃないですか。ボケとツッコミがあって、それが自分たちのいちばん気持ちいい武器だと思ってるなら、それをずっとやればいい。“間”や“テーマ”を変えつつ、そのスキルを磨いて。でも、スタート地点から外れて、“リズムネタが流行ってるからやりましょう”ということになってしまうと、ぎこちなくなるだろうし、“これの何が面白いんだろう?”みたいなところに陥ったら、看板立ててやるっていう意味では、もうダメだと思うんですよね。それに近いんだと思う。成長していくことを前提に、自分が信じていることを、ただただ貫き通す。もちろん、自分が信じる好きなところを詰め込んだ音楽を、今、聴き返してみると、“イヤだな”って思う部分もあるんですよ。
──そうなんですか!?
清春:はい。でもそれはスキルの足りなさとかサウンドの時代性とかでしかない。曲に関しては、嫌いな曲はあんまりなくて好きなものばかりですね。“清春”を総合的にとらえると、その長さは“これが好き”っていう人生でしかない気がします。プレイヤー側だからかもしれないですけどね、リスナー側だけにいればまた違ったのかもしれない。プレイヤーでありリスナーであることに、襟を正す時があるんですよ。表現っていうのは創作していくことで。それはやはり自分が好きじゃないとできない。1枚目や2枚目は化けの皮を被ったままできたりするし、バンドだとまた団体戦なんでわかんないですけど、それを続けるのは難しいんです。自分の趣味と別のものになってしまう時って、気持ちが入ってる気がしないでしょうから。
清春:日本が“フェスの時代”になってから20年ぐらい経つんだけど、“すごい時代が来たな”なんて思いながら、“また時代が変わるだろう”ってうっすら思ってるんです。“オリコンの時代”、“ホールワンマン公演の時代”が20年以上あって、“フェスの時代”を今眺めてるけど、絶えず変わっていくと思う。で、人間って、年齢が人生につきまとうじゃないですか。“何年生きたか”とか“あと何年残っているか”とか。年齢という概念を捨てて、どの音楽も楽しめるのが最高なんでしょうけど、それってリスナーの立場だと思うんですよね。プレイヤー側からすると、“あと何年ぐらい活動できるんだろう?”っていう考えもあるので、時代を客観視もしますよね。
──清春さんは、そこでどうしようと?
清春:デビューしてから、たまたま長く音楽業界にいる者の感想ですけど、時代に自分を変に合わせない勇気が大事だと思う。僕がデビューして4年経った1997年に<フジロック>が始まったんですけど、その頃の僕らはホールツアーをしていたので、そういうものに出る必要もない。僕らが邦楽マナーで活動している一方で、その当時から洋楽を軸としたフェスがパワーを持って、そういう流れに“いいな”って手を出したがった自分もいたんですよ。でも、「君らはもう違うから」って言われたりね(笑)。
──うーん。
清春:もちろん僕らは、そういうフェスに出ることを目標を置く世代のアーティストではないわけで。“これを貫かないと駄目だ”っていうことにいずれ気がつくんです。今や50歳目前で、“フェスに出たい”が結成の経緯となるような10代や20代のミュージシャンと並ぶ必要はないなって。もっと自分がベストに表現できるようなスペースで、求めてる人たちに向かって、自分の音楽で彼ら彼女らをどれだけ幸せにできるか、時を忘れさせることができるかっていうのが、僕の役割だし、やりたかったことでしょ?っていう。
──やりたかったことができている現在ですね。
清春:まだ“最高”ではないけど、だからこそまだやってるんですよ。去年から、キャンペーンで媒体を廻ると必ず「50歳ですね」って言われるようになって(笑)。前までは自分でそう言ってたんですけど、それを人に言われるようになって。若い人には負けないと思ってる自分もまだいるけど、闘うべきはそこではないんです。こちら側から“僕、おじさんですけど観て”っていうことではなく、若い人が間違えて僕のステージを観る機会があれば、“あ! 全然違う!”“そっちに行ってみたい! 聴きたい!”って思えるようなことをずっとやってないといけない。普段ライヴに来てもらえなかったとしても、貫くことのほうが今の僕の年齢にとっては重要。
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