【インタビュー】岸田教団&THE明星ロケッツ、骨太なロック感や尖りを継承しつつ洗練感を増したシングル「ストレイ」

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■岸田は、もともと結構センチメンタルな歌詞を書く
■でも久しぶりだったから気持ち悪いというか(笑)


――メンバー皆さんの新しい魅力を味わえますよね。では、続いてカップリングの「sleep walk」について話しましょう。

岸田:これは作ったのが去年の9月とか10月で、ちょっとだけトレンドを意識した結果、こういう曲になりました。

ichigo:そうなんだ。

岸田:うん。リズムの辺りにトレンドのブレークダウン感を採り入れてみた。だから、Aメロとか、2番のサビが終わった後の間奏の辺りとかに若干の“イマドキ感”がある。そういうものを少しずつ採り入れていこうという気持ちがあって、もっといけるけど、とりあえずはここら辺かなというところに落とし込みました。

ichigo:「sleep walk」の後もレコーディングしているんですけど、またちょっとサウンドが変わりつつあるんです。

岸田:そうだね。「sleep walk」の頃からキック(バスドラ)の口径が一回り小さくなったんですよ。「ストレイ」は24インチだけど、この曲から22インチになった。全体的に、キックが下に行き過ぎないようにしたいというのがあって。ここ数年はドラムやベースの重心を下げることによって、ボーカルやギターのための隙間を作るという手法が主流だったけど、僕はそれはそろそろ終わると思っているんです。重心を下げるといっても程度があるし、そういう作品があまりに多くてリスナーは飽きてきている気がして。少し前の僕らもワイドな方向性を採っていて、「GATE II ~世界を超えて~」(2016.1.27)の頃にピークになったんです。それが当時のトレンドだったから。そこから1~2年経って、今後はそう遠くないうちに、またナローな方向に変わっていくと思う。「sleep walk」はそういう意味でも、一歩先にいけているかなと思いますね。それに、この曲の歌詞はすごく気に入っています。


▲「ストレイ」(アーティスト盤・通常盤)


▲「ストレイ」(アニメ盤)

――岸田さんは、こういう繊細な歌詞も書かれるんだなと思いました。

岸田:いや、僕は本当は、こういう感じなんです。

ichigo:そうだね。元々、結構センチメンタルな歌詞を書く人なんですよ。でも、久しぶりだったから、気持ち悪いというか(笑)。“本当に思ってる?”みたいな(笑)。

岸田:思ってる、思ってる(笑)。思ってもないことを書くこともあるけど、「sleep walk」は素顔の自分だよ。みんなが思うセンチメンタルと、俺が思うセンチメンタルさは違っているかもしれないけど(笑)。

ichigo:どんどん素を曝け出してきているよね。そういえば、最近の岸田の歌詞はどの曲もそうですけど、放っておくとエグかったり、酷かったりするんですよ。たとえば、「ストレイ」には“生涯で一度くらいは本当の愛を知る”という文節があるんですけど、元々は“生涯で一度くらいは人に愛されることもある”みたいな感じだったんですよ。それはないなと思って、変えさせてもらいました。

岸田:ichigoさんに、「一回くらいじゃねぇよ!」と言われました(笑)。

ichigo:だって、本人が気づいていない場合もあるかもしれないけど、人というのは生きていればいろんな愛情を貰っていると思うんですよ。だから、「そこは、本当の愛」にしておこうと言ったんです。そうしたら、なぜか「さすがだわ」と言われました(笑)。

岸田:たしかに、そうだなと思って。一度くらいしか愛されないと思っているとしたら、それ以外の自分に好意を抱いてくれるヤツはみんな詐欺師だと思って信じるなということになってしまうから。僕が自分的に良くできたなと思っているのは、「sleep walk」の2番のAメロです。

ichigo:“何か君が信じた大切なことの話をしよう それがどうあれ今日の天気はこの後曇っていきそうだね”というところ?

岸田:そう。

ichigo:人の話を聞いてないヤツじゃん(笑)。でも、たしかに、ここは岸田らしいなと思います。

岸田:人の信じた大切な話がどうでも良いというポジション取りがすごく良いなと思って。

ichigo:さっきセンチメンタルという話が出たけど、ここは全然センチメンタルじゃない。で、岸田はそこが一番気に入っているという。人柄が出ているよね(笑)。

――岸田さんは、ちょっと中2病が入っているんですね。

ichigo:いや、“ちょっと”どころじゃないです(笑)。

岸田:完全に中2病です(笑)。

ichigo:相手が大切な話をしているのに、天気の話をし出すという(笑)。そこには、ちょっとサブカルっぽさを感じました。

岸田:ここは、井上陽水のオマージュなんだよ。

ichigo:そうなの? 「傘がない」とか?

岸田:そうそう。それが分かってくれる人がいたら嬉しいなと思って。

ichigo:分かる人、いるかなぁ……。ちょっと貶すようなことを言ったけど、私も「sleep walk」の歌詞は好きです。『博多豚骨ラーメンズ』の世界観を、この曲にも引き継いでいるところも良いなと思うし。

岸田:歌詞を書くにあたって、「ストレイ」に対するアンサーでいこうと決めたんです。それを決めるまで2~3日掛かったけど、決めてからは早かった。2時間くらいで全部書き上げました。

――楽曲的にも「ストレイ」とリンクしている気がします。曲調は違っていますが、どこか似たところがありませんか?

岸田:そう。2曲をリンクさせることによって、より作品としての色彩が強くなるというのがあって。今回は、そういう手法を活かしました。

ichigo:真夜中の「ストレイ」と、明け方の「sleep walk」みたいな感じだよね。なので、2曲でセットみたいに捉えてもらっても良いなと思います。

――同感です。「sleep walk」のプレイ面についても話していただけますか。

ichigo:「sleep walk」は、歌いやすかったです。イメージが湧きやすかったんですよ、ニュアンスとかも含めて。Aメロとかは温かい感じにしたくて、リズムをキッチリあてるんだけど、あまりそういう風に聴こえないようにしようとか。だから、舌っ足らずまではいってないけど、甘く聴こえるように歌っています。緩く、甘く聴こえるけどリズムはあたっているという状態で歌えるように頑張りました。サビは得意な感じなのでスルッと歌ったら、良いんじゃないかと言ってもらえました(笑)。

――サビは爽やかでいながらせつないというニュアンスを絶妙に表現されています。

ichigo:サビも明るいメロディーですけど、歌詞が結構せつないんですよ。“涙”とか“眠らない”“許す”みたいに、ちょっと淡くなる言葉が入っていて、そこで自然と歌のニュアンスが変わったんだろうなと思います。

岸田:この曲の歌は、すごく良いよね。この曲のベースは、ちょっとがんばりました(笑)。適切な場所に効果的なフレーズを入れ込んだり、サビはマイナー・コードになるところでハイポジに行ったりしていて。僕は、そういうアプローチが好きなんです。

――サビのエモさを増幅していますよ。さて、「ストレイ」も必聴といえるシングルに仕上がりました。本作のリリースから始まる2018年は、どんな1年にしたいと思っていますか?

岸田:今回の「ストレイ」を聴いてもらうと分かるように、岸田教団&THE明星ロケッツは良くも悪くも大衆向きのバンドになりつつあって。良い言い方をすると、より完成度は上がっています。今後は、そこをさらに突き詰めていきたいと思っています。

ichigo:もっと広く聴いてもらいたいという意識がありますからね。ボーカルについても、いろいろ考えていて。分かりやすく、いろんな人に歌詞の内容とか感情とかを伝えるために必要なのが「本気」なのか、「本気に見える演技」なのか、どっちなんだろうと最近は考えることが多いんです。たとえば、楽曲と向き合った時に荒々しく歌いたくなれば本気で荒々しくなれるけど、そうならない曲で荒く歌ってと言われると、“荒くって、なんだよ?”と思ってしまうんです。ラフに歌うんじゃなくて、しっかり歌わせろよと。一番良いのは私がその曲を聴いた時に自然と荒く歌いたくなるとか、ちょっと緩めに歌いたくなったりすることなんですよね。そういう意味では、今後は今まで以上に楽曲に対する理解を深めていきたいと思っています。

――バンドとして、プレイヤーとして、より意識が高まっていることを感じます。2018年のライブ活動に関してはいかがでしょう?

ichigo:去年ライブを沢山したので、今年は制作に主点を置きたいですね。私達は2017年の11月から【10th Anniversary TOUR 2107~2018 ~懐古厨に花束を~】というツアーをしていて、これまでのツアーでエースになっていたような曲達を聴かせるライブをしているんです。それをやったので、また新たな気持ちで曲を溜めていかなきゃなというのがあって。今年は、そういう1年にしたいなと思っています。

岸田:要は、次のツアーでは新しい曲を演奏したいので、まずは新しい曲を溜めて、アルバムを出してからツアーかなと思っているんです。アルバムの年内リリースは難しいかもしれないけど。

ichigo:ええっ? がんばろうよ。働こうよ。

岸田:だって、年内にアルバムを作ろうと思ったら、夏に超頑張らないといけないじゃん。俺、夏に働くの嫌なんだ(笑)。なので、まずは「ストレイ」で最新の岸田教団&THE明星ロケッツを楽しんでもらいつつ、その先の僕らにも期待していて欲しいです。

取材・文●村上孝之

リリース情報

「ストレイ」
<アーティスト盤> CD +特典DVD (2枚組)
品番:1000705987 \1,800+税
特典DVD収録内容:
・ストレイMUSIC VIDEO
<アニメ盤>CD (1枚組)
品番:1000705988 ¥1,500+税
特典DVD収録内容:
・アニメ「博多豚骨ラーメンズ」ノンテロップOP
<通常盤> CD
品番:1000705989 ¥1,200+税
■収録曲(アーティスト盤・通常盤)
<収録内容>
1. ストレイ(TVアニメ「博多豚骨ラーメンズ」オープニングテーマ)
2. sleep walk
3. ストレイ(Instrumental)
4. sleep walk(Instrumental)
■収録曲(アニメ盤)
1. ストレイ (TV アニメ「博多豚骨ラーメンズ」オープニングテーマ)
2. ストレイ (TV size)
3. ストレイ (instrumental)
※アニメ盤には、「ストレイ」TV size を収録予定

ライブ・イベント情報

「ストレイ」リリース記念ミニライブ
対象:アーティスト盤、アニメ盤、通常盤
対象店舗:タワーレコード渋谷店
開催日時:2018年3月3日(土)19:30スタート
開催場所:タワーレコード渋谷店B1F 「CUTUP STUDIO」

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