【インタビュー】ジョン・カビラが語る、第60回グラミー賞授賞式のゆくえ
日本時間1月29日(月)午前8:30より第60回グラミー賞授賞式が開催となる。例年通り、本年も[WOWOWプライム]にて同時通訳二カ国語で生放送となるが、番組でMCを務めるのは日本におけるグラミーの顔:ジョン・カビラとホラン千秋だ。
最新の音楽が一堂に会する世界最大の音楽の祭典として、様々な催しが用意されているグラミー賞授賞式だが、第60回を刻む今回の見所はどんなところだろうか。当日現地へ乗り込むジョン・カビラに話を聞いてみた。
──第60回グラミー賞授賞式、見どころはどのあたりになるでしょうか。
ジョン・カビラ:ショーの行方はもちろんのことなんですけれど、やはりグラミー賞ならではのステージ展開ですよね。誰がオープニングのパフォーマンスを担うのか、どういったコラボなのか…。
──ショーの内容がギリギリまで発表されないことも、ワクワクを加速させますね。
ジョン・カビラ:もったいなくて発表できないですよ(笑)。でもね、ホイットニー・ヒューストンがショーの前日に亡くなるとか、クリス・ブラウンとリアーナの一件とか、当日に来れなくなるとか、急にトリビュートをすることになるとか…グラミー賞は、その日になるまで何が起こるかわかりません。
──グラミー賞には洋楽の魅力が強烈に詰まっているわけですが、カビラさんからみて、洋楽の魅力とはどういう点にありますか?
ジョン・カビラ:邦楽大好きな皆さん!皆さんの好きなアーティストは、ひょっとしたら洋楽を聴いて育っているかもしれませんよ。そして今のヒットチャートを気にして聴いている若いアーティストもいっぱいいます。新たに「ボブ・ディラン凄い!」と言っている若い日本人クリエーターやアーティストもいらっしゃいます。もうひとつ大きな川の流れが洋楽だとしたら、その川を見ずしてどうするの?もったいなくないですか?だったらその川に飛び込んで泳いでみようよ、どんなところに連れて行ってくれるか分からないよ。
──まさに。
ジョン・カビラ:太い川からジャンルという細い支流が出て、色んな所に連れて行ってくれます。何と言っても発見の楽しみですよね。あとね、聴いてみると「あ、これ、なんとなくあのアーティストに似てる」とか「バラードってこんな歌い方もあるんだ…」とか。
──自分の好きな日本人アーティストと同じ香りを、洋楽の中に感じることってありますよね。
ジョン・カビラ:そうなんです。「Suchmos最高」「サカナクション最高!」とか、その最高なJ-POP/J-ROCK/J-R&B/J-HIPHOPのアーティストにつながるような音楽のスタイルって洋楽に必ずありますから、それこそ発見の喜びですよ。
──知的好奇心をも刺激されたり。
ジョン・カビラ:それとやはり歴史ですよね。歴史に触れる楽しみというか。
──食べきれないほどの激ウマ料理がぎっしりと積み重なっているようなもので。
ジョン・カビラ:食わず嫌いはもったいないですよね、という話だと思います。
──日本の音楽…ことアニメ/アイドル/V系といった日本が生み出した独自文化は、海外でも高い評価を得ているわけですが、グラミー賞で評価されることは難しいのでしょうか。
ジョン・カビラ:まずは言葉のバリアがありますから、そこはまだ大きいですね。でも、“まだ”と言うべきだとも思います。実は外国語の楽曲が主要4部門で受賞をしたのは、「Volare」(Domenico Modugno)の第1回グラミー賞での受賞だったんですよ。そして今回、第60回にして「デスパシート」(ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat.ジャスティン・ビーバー)が獲るか?非常に注目です。
──外国語の作品が主要4部門を受賞するのは、過去1度しかないんですね。
ジョン・カビラ:そう。非常に大きなインパクトを残さないと、外国語の曲がグラミー賞で受賞するのはとても難しいですね。といいつつ、アニメの力とかアイドルの文化…例えばBABYMETALのような存在もあるわけですよね。巡り巡っていろんなフィルターを通って日本に来て、そして日本から出ていく。インターネットがここまで普及してくると、もうわからないと僕は思います。必ずブレークスルーするアーティストが出てくる。ジャンル的に例えばEDMのような、言葉のとばりが重くない音楽にチャンスがあるかもしれない。
──今後の楽しみですね。
ジョン・カビラ:そうですね。2020年にはオリンピック/パラリンピックで相当の数のみなさんが日本にやってくる。これ、絶好機ですよ。
──昨今では音楽が売れず、「アルバムなんか作ってもしょうがない」とまで発言するアーティストも少なくない中で、あくまで新曲・新作を讃える賞としてグラミー賞が存在しているところに、大きな意義があるとも思います。
ジョン・カビラ:ですから、僕らにとっては本当に発見の場なんです。アメリカのマーケットとしては2017年を振り返りつつ功績を称えるという瞬間なんですけど、僕らにとっては必ず色んなジャンルで発見があります。カントリーに触れたことのない人、ヒップホップが全然わからないという世代のみなさんにとっても、発見の楽しみがある。アメリカのオーディエンスにとっては賞賛/追認ですが、日本のオーディエンスにとってみれば絶好の発見の場所にもなる。そしてアーティストにとっては新曲/アルバムが讃えられる貴重な場なんですよ。
──そういう意味では、今もなおグラミー賞の姿勢は一切ぶれないですね。
ジョン・カビラ:供給側の大人の論理で巡る業界とは全く違いますよね(笑)。CDを一切リリースしないチャンス・ザ・ラッパーのような、これまでの形態にとらわれない人たちの出現や、ジャンルというものの境もよくわからなくなってきているなかで、これぞアメリカという国の大いなるチャレンジですよ。音楽が細分化し分散しているものを、グラミー賞がまとめてくれている。だからこその存在意義と価値を今後も守らないといけないんです。バラバラだからこそ、この日は一堂に会おうぜ、というね。
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──だからコラボレーションも面白いわけだ。
ジョン・カビラ:そうなんです。エルトン・ジョンとエミネムがデュエットする(第43回グラミー賞授賞式)なんてね、その直前までお互いディスり合っていたんですから、それが和解のシンボルとして音楽で紡ぐというのは凄いことですよ。
──今回もまた楽しみですね。
ジョン・カビラ:ジェームズ・コーデンもまた弾けてくれるでしょうし、「カープール・カラオケ」の車窓枠(註:前回のグラミー賞では司会のジェームズ・コーデンが客席でアーティストらと共に、車のフロントウィンドウを模した枠を使って「カープール・カラオケ」のパロディを披露)にはどんな顔が並ぶのか。今回の会場となるマディソン・スクエア・ガーデンも奇しくも50周年ですから、本当に何が起こるかわかりません。アーカイブものやトリビュートはとても楽しみで、3世代にわたって楽しめるものになるはずですよ。
取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
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WOWOWグラミー賞授賞式
1月29日(月)午前8:30 [WOWOWプライム] ※二カ国語版(同時通訳)
「第60回グラミー賞授賞式」
1月29日(月)夜10:00 [WOWOWライブ] ※字幕版
※生中継、字幕版ともにWOWOWメンバーズオンデマンドで配信予定
http://www.wowow.co.jp/mod/
「1月は第60回グラミー賞授賞式!洋楽重大ニュース」
2017年の洋楽シーンをニュースとしてお届け!今回の授賞式をより楽しむための特別番組を無料放送。
「グラミー賞授賞式 60周年スペシャル」
グラミー賞授賞式60周年を記念し過去59回を振り返るスペシャル。
奇跡のパフォーマンスシーンなど過去の貴重な映像を放送するほか、逸話のバックストーリーを出演者やスタッフの証言で振り返る。
「グラミー・トリビュートライブ ~ビー・ジーズ “STAYIN' ALIVE”~」
『2018 GRAMMY(R)ノミニーズ』
国内盤CD(全21曲) SICP-5649 / 2,400円+税 / 豪華スリーヴケース仕様 / 歌詞対訳付き
https://itunes.apple.com/jp/album/id1326292853
◆「第60回グラミー賞授賞式」スペシャルサイト