【インタビュー<前編>】清春、『エレジー』完成「ダークさとか、今までやってきたことは剥せない」
清春が日本コロムビアTRIADレーベル移籍第1弾として、2作連続アルバムリリースを発表。その1作目となるリズムレスアルバム『エレジー』が12月13日に満を持して世に放たれた。東京・渋谷のMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREでの年間66公演に及んだシリーズライブ<MONTHLY PLUGLESS“エレジー”>で創り出した濃密な空気をスタジオレコーディングで再構築した本作は、既存の音楽の枠にとらわれない、清春の人生観や美学がふんだんに詰まった内容となっている。
◆清春 画像
全キャリアから厳選した楽曲に豊潤なサウンドアレンジを施した“DISC1”、彼の詩にどっぷりと浸ることのできるポエトリーリーディングを収録した“DISC2”、さらには、小田切明広監督によるライヴ映像とリードトラック「LAW’S」のミュージックビデオが収められた“DVD”。形容しがたい魅力に満ちたこの衝撃作と、他の誰も成し得ていない稀有な66公演について、たっぷりと語ってもらった。まずは、その前編からお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■僕の表現方法のなかでも
■かなりアート的な音楽
──<エレジー>66公演中64公演目まで終えられた今(※取材日は12月12日)、2CD+DVDという形態で作品がリリースされるお気持ちはいかがでしょうか?
清春:まず、内容からすると安いなと思いますかね(笑)。3枚で5,000円。
──ははは(笑)。
清春:いろんな人に言われるんです。歌のCDが入ってて、ポエトリーリーディングも特典とは言えないような一つの作品になっちゃってて。映像もそもそも凝ってるし、まあ、普通に12,000~13,000円かなぐらいの感じはします。
──ポエトリーリーディングと映像は、そもそも最初から付けようと思って動いてらっしゃったんですか?
清春:途中からだね。メーカーによって違うんだけど、今って、特にヴィジュアル系と言われるジャンルでは、2形態や3形態が普通。でも、TRIADが「1枚で行きます」って言ったのよね。逆に「大丈夫ですか?」って心配になったくらいの。アルバムが2枚出る(本作『エレジー』と2018年2月14日発売予定の『夜、カルメンの詩集』)ので、これはホップ・ステップ・ジャンプの助走というのか。TRIADに移籍してすぐ出したいっていうのがあったし。ライヴのほうの<エレジー>が終わっちゃうから、その辺までに出すか、終わった直後に出すのがいいと思ってたんです。これを出して1週間後に66本の実演のほうが終わるんで、タイミング的には良かったという感じ。レコーディングの途中からですね、ポエトリーリーディングをやろうということになったのは。「特典は何にしましょう?」ってなった時に、冗談で、「ポエトリーリーディングかなあ?」みたいな。
──そういう発想に至ったのは、<エレジー>公演をやっていくなかで、演劇的な空間の作り方みたいなところに考えが及んだからなのでは?
清春:本来、ポエトリーリーディングっていうのは、今回の僕のやつと違って、感情を入れてはいけないらしいのよ。基本的には演技じゃなくて音楽なんだけど、ミュージシャンが何ができるかっていうところがポイントで。ミュージシャンが、映画やドラマに出て役者になっちゃう場合もあるじゃないですか。それはやったことないし、やりたくないなあと思ってるんですけど、音楽の範疇で何かパフォーマンスができるとしたら、セリフとはまたちょっと違うポエトリーリーディングかなと。
──そうなんですか。
清春:僕の場合は、読んでるだけなのに、歌を入れるようなやり方で、ちょっとニュアンスが入っちゃってるんだけど。それが、ポエトリーリーディングをやってる人にとっては邪道なんだと思われます。歌以外にどんなパフォーマンスが音楽でできるかというと、役者でもなければ、バラエティタレントでもないので。ミュージシャンってところでいうと、あの公演では、ポエトリーリーディングなら似合うなって。僕最近、ステージ衣装でヨウジヤマモトとか着てるんですけど、昔、作詞家の森雪之丞さんのポエトリー・リーディング・アルバムがあって、若い頃の僕もなぜか参加していて。それに山本耀司さんも参加してたのを、ヨウジで服選んでる時に思い出して。“そういえば、俺ポエトリーリーディングやったことあるな。それもいいかな”と。今回のアルバムを曲順通り、DISC1では歌ってて、DISC2では喋ってるっていう。
──そもそも、<エレジー>という公演形態や今回のアルバムの中身を友達に薦める時に、どういう風に説明したらいいのか困ってしまって。「アコースティックのアルバムなの?」って訊かれたら、「いや、そうじゃないよ」とは答えるんですけど(笑)。
清春:アコースティック・ギターは入ってますけどね(笑)。
──そうですね(笑)。清春さんはそんな時、どういう風にこの作品のことを説明されるんですか?
清春:簡単に言うと、よく音楽がわからないというか、そんなに興味もなく、僕のこともそんなに知らない人に対しては説明が面倒臭いんで「アコースティック・アルバムです」って言っちゃいます。“暗いアコースティック・アルバムですね”と(笑)。
──さまざまな要素を削ぎ落としてシンプルな状態に持っていってる、と。
清春:ディープなファンの人とか、僕に興味がある人とか、音楽をよく知ってる人に対しては、そういう風には言わないんですけど。やっぱり、どうしても、イメージ的にロックっぽいのを想像してる人のほうが多いので。「これはすごく静かで暗いです」って。で、僕の音楽に触れたことがある人には、「音楽っぽくないアルバムです」って言ってます。「音楽なんだけど、結果的に、音楽っぽくないニュアンスを感じられるのかなと思います」って。今まで普通にバンドアレンジの作品も作ってるんですけど、僕の表現方法のなかでも、かなりアート的な音楽ではありますね。
──他の芸術分野にも接近していくような?
清春:うーん。結果的にそんな感じもあるだろうなっていう。説明難しいですね、すごく。
──ただ、そういう深さに浸るファンも続出したわけで。
清春:後輩のミュージシャンとかには、「この俺の歌、聴いたほうがいいよ」と言ってます。それは愛なんですけどね。“長く歌ってると、こういうパターンの解釈もできるようになるから、長く歌いなさい”っていう意味で。たまたま僕の場合こうなっちゃったんですけど。若い子たちはそうじゃなくていいんだけど、歌って絶対変わってくるからっていう意味でね。<エレジー>公演に来た人でもホントに好きじゃないとちょっと聴きづらいと思うんですよね。ドラムが入ってないですから。ロックを象徴するスネアの音がね。
──リズムレスアルバムと銘打たれているぐらいですからね。
清春:ギターの歪んだリフとかスネアの音っていうのは、ロックを象徴する音の要素ベスト5ぐらいには入るじゃないですか。ヴォーカルが叫んでる、とかさ。歌は叫んではいるけど、ロックという風に聴こえてくる要素って、このアルバムにはまったく入ってないので。それでも、十分ロックといえばロックだし。よく言われるのは“ブルースっぽい”って感想。僕は全然意識してないですけど。
──確かに。曲によってはそういう色を感じます。
清春:僕は全然ブルースとか通ってないんですからね(笑)。ただ、「渋い」とか言われる。「渋いかなあ? 暗いだけだと思うんだけど」って言うんですけど。
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