【インタビュー】トミー・ゲレロ、20周年マスタリング盤が新アートワーク仕様で限定LP再発「このアルバムは、等身大の俺を表現した作品だよ」
■俺のインストミュージックなんか
■誰も興味を持つとは思ってなかったんだ
──どういうきっかけで、トーマス・キャンベル(編注:映像作家、ぺインター、フォトグラファー、サーファー、レコード・レーベル“Galaxia”のオーナーなど多様な顔を持つ西海岸カルチャーの重要人物)が『LOOSE GROOVES & BASTARD BLUES』をリリースすることになったのでしょうか?
トミー Mo'Waxが最初に興味を持ってくれたんだけど、すぐにリリースに繋がらなかったんだ。そのあとにトーマスが、Galaxiaからリリースしたいと言ってくれたんだ。俺は承諾したんだけど、レーベルに負債を抱えてほしくないから、「リリースの費用を半分出すよ」と言ったんだ。俺のインストミュージックなんか誰も興味を持つとは思ってなかったんだ。
──トーマスと出会ったきっかけは?
トミー 覚えてないんだよ(笑)。スケートの世界で共通の友達がたくさんいるからね。もう20年前からの仲だよ。90年代半ばから、彼のアート展でよくライヴをやってるよ。
──アーティスト、レーベルオーナーとして彼のことをどう思いますか?
トミー 彼は生粋のアーティストで、クリエイティブなことは何でもやる人なんだ。彼はそれ以外の生き方ができない人間だよ。実は彼をレーベルオーナーと思ったことがないんだ。どちらかというと、クリエイティブな人間に刺激をあたえてくれる存在だと思ってる。
──Galaxiaは何が特別でしたか?
トミー ファミリーだったんだ。彼らは金儲けのためにレーベルをやってたわけじゃないし、確かに儲かってなかったよ。クリエイティブな表現をするためのレーベルだったんだ。それがあのレーベルの存在意義だったんだ。
──96年か97年にマニー・マークに出会って、音作りの自信になったと聞いたことがありますが、実際どうだったのでしょうか?
トミー いや、彼に出会って音楽制作の自信になったわけじゃない。マークに出会う15年前から、すでに俺は音楽制作をやってたからね。彼のアルバムを聴いた時に、インストミュージックで人を感動させられる、っていうことを実感したんだ。彼が作った「Keyboard Repair」が大好きで、すごく共感したんだ。ああいう作品は当時なかったんだよ。いい意味で、どこかぶっ壊れたサウンドの作品だった。俺がやってきた音楽とある意味似てたんだよ。音楽を通して、心の内側を露呈してるんだよ。アーティストっていうのは、心の内を見せないとできないものなんだ。
──『LOOSE GROOVES & BASTARD BLUES』はブルージーでシネマティックなサウンドですが、どういう経緯で生まれたサウンドですか?
トミー アートをやってる人間っていうのは、媒介であり、世の中で起きていることが自分たちを通して表現されるんだ。俺は色々な音楽を聴いてるから、自分が作る音楽は吸収した音楽全てのブレンドなんだ。音楽というのはエモーショナルなものであり、俺にとってセラピーでもある。自分の音楽を通して、自分の内側にあるものを解放するのは、一種のカタルシスなんだ。
■初めてこのアルバムを聴くリスナーは、
■その純粋な気持ちを感じ取るんだと思う
──『LOOSE GROOVES & BASTARD BLUES』がリリースされて20年経つわけですが、初めてこのアルバムを聴く新しい世代のリスナーにメッセージをお願いします。
トミー このアルバムは、等身大の俺を表現した作品だよ。それだけさ。自分の直感を信じてほしい。最初に降りてくる直感というのは、たいてい当たってるんだよ。
──あなたがファーストの曲をライヴで演奏するときは、オーディエンスのリアクションがとてもいいですが、このアルバムはあなたにとって特別なものでしょうか?
トミー もちろん。当時の俺は無邪気に音作りをしていた。音楽のレコーディングの方法をちゃんとわかってなかったし、音楽を商品として考えてなかった。ただクリエイトしたいからクリエイトしてただけなんだよ。そもそも、あのアルバムは商品としてリリースしようと思ってなかったからね。初めてこのアルバムを聴くリスナーは、その純粋な気持ちを感じ取るんだと思う。
──ファーストの曲をライヴで演奏するときに、20年前に比べてオーディエンスの反応は変わりましたか?
トミー ファーストの曲を知ってくれてるファンが多いから、ファーストの曲を演奏すると喜んでくれる人が多いね。
──ボーナス・トラックについて教えてもらえますか?
トミー 「In My Head」のボサノヴァ・バージョンなんだ。ナイロン・ストリング・ギターを使うときは、こんなスタイルで演奏する。Tascam 244の4トラック・カセット・レコーダーで録音したんだよ。
──次のアルバムは10枚目になるわけですが、どんな作品になりそうですか?
トミー 次のアルバムはどういう方向になるかまだ決まってないんだ。数年前に4トラックでダブ風の曲を9曲くらい作った。ドラムマシン、ベース、レコードからサンプリングした音をRoland Space Echoに通して使ってるんだ。このプロジェクトではギターは使ってなくて、キーボードとかサンプリングが主体だね。それぞれの曲を4トラックという制約の中でレコーディングしたんだけど、すごく楽しかった。この作品はカセットや7インチでリリースしたいと思っているよ。
Photo by Claudine Gossett
『LOOSE GROOVES & BASTARD BLUES』(LP/REMASTER)
RUSH-00001-LP 2,160円(税込)
Side A
A1 B.W.s Blues
A2 So Blue It’s Black
A3 Keep On Keepin On
A4 Azule
A5 Black Sheep Blues
A6 30
Side B
B1 Pollo Caliente
B2 Never
B3 Solow
B4 Introspection Section
B5 Gone
B6 In My Head
B7 Soul Miner
◆RUSH PRODUCTION オフィシャルサイト
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