【インタビュー】人間椅子 鈴木研一が語る、郷土愛とこだわりの音詰めた新作『異次元からの咆哮』
■最後の1本だって言われて…買っちゃった
──そういえば、「もののけフィーバー」のレコーディングではプレベ(フェンダー製プレシジョン・ベース)を使ったとか?
鈴木研一:そうそう。「もののけフィーバー」と「痴人のモノローグ」で使いました。イマイチだった。
──え?
鈴木研一:ずっと欲しかったんですよ。あんまり東京に出てくることはないんで、レコーディングで東京に出てきて嬉しくてね。ドラムの音決めするのに時間がかかって暇だったんで楽器屋に行ったら、僕が欲しいやつがあって最後の1本だって言われて…買っちゃった。でも不評で。
──メンバーから?
鈴木研一:リハのときに和嶋くんが「パンチが無い」って言い出して。音でパンチが無いって言われたらもう弾く気しないでしょ(笑)。で、B.C.リッチを弾いたらノブが「あ、やっぱこっちの方がハイがカッコよく出ていいね」って言い出して。ノブは直接、新しいベースがダメだとは言わないけど、間接的にダメだと思ってたんだなっていうのがわかった。でもピックアップを換えたから、これでリベンジ。これで相当いい音するはずですよ…僕の中では。
──ボディ鳴りは? 素性はいい感じ?
鈴木研一:すごい弾きやすいですよ。プレベのいいところっていうのはデッドポイントが大事なところになくて、レコーディングに重宝するんですよね。その点B.C.リッチはデッドポイントだらけですごい苦労する。そういう意味では「レコーディングにいい」と思って買ったんだけど、やっぱり自分用にいろいろ調整しないとダメみたい。今度はいいはずだから、ライブで使おうと思って。でもまたお客さんから結構マジメに批判がくるんですよ。「あのベースはイマイチです」とか書いてくるから、そうなったらもうほんとに使わない(笑)。
──イーグル以外を弾くのって久しぶりですか?
鈴木研一:そうですね、最初はリッケンバッカーを使ってて、そこからイーグルに惚れ込んで。去年モッキンバードを使ったけど、ヘッドが重くて疲れたからやめたんです。音はすごくいいんですけどね。
──果たして、プレベは人間椅子にハマるのか。
鈴木研一:そこはね…、レコーディングではハマらなかったかもしれない。でもライブではバレないはず(笑)。ライブでは使いたいんですよ、今のところは。
──見た目は大丈夫ですか?
鈴木研一:自分ではカッコいいと思ってるんだけど、お客さんがどう言うかで。「やっぱりイーグルの方がいいです」って言われる可能性は大。
──イメージが確立しているからなぁ。
鈴木研一:でも、歳を取った身にプレベはいいんです(笑)。
──グレン・ティプトンも、歳取るごとにギターが小さく軽くなっていったもんなあ(笑)。
鈴木研一:ライブ1時間過ぎくらいからこれになる可能性は大ですね。
鈴木研一:そのとおりです。自分の家の周りがバイク好きの人が走るコースなんです。あそこに住んでいたら、乗らないわけにはいかないですよ。
──すげぇ言い訳してる。
鈴木研一:いや、ほんとライダーだらけで(笑)。でも中間部に入ってる音は和嶋くんのバイクの音です。ちょっと軽い音だけど…確かSUZUKIのGNとかいう125ccのバイクで。
──小型二輪のエンジン音をわざわざレコーディングするバンドなんて、聞いたことないです。
鈴木研一:ここで、素材集のハーレーの音を入れても全然おもしろくないじゃないですか。やっぱり和嶋くんのバイクの音でいこうと、ステップに録音機をガムテープで巻いて何回も何回も録ったんですよ。最初録って「これでいいんじゃないの?」って言ったら「いや、ここでバイクに抜かれる音が入ってる」とか細かく言い出して(笑)、納得いかないって、4回ぐらい録ったんじゃないかな。
──人間椅子、つくづく面白いなあ…。
鈴木研一:僕にはよくわかんなかったけど「このシフトダウンを入れたい」とか「ここはギターのせいでバイクの音がよく聴こえない」みたいな本末転倒な会話をしてんの。「どっちかって言うと、(聴こえるべきは)ギターじゃねえのかな?」って思ったんだけど、でもそんなのはね、やった人が楽しい方がいいんで。
──ですね。イントロもいいですね。
鈴木研一:イントロはファズですね。「ギターでバイクの音そっくりになるのをマスターした」って言ってね、あれを入れるたびに何回もスタジオでやったんですよ、多分。
──あれはアームじゃなくて、ボトルネック?
鈴木研一:ファズにスライドです。最初のゴゴゴゴっていう音は開放弦にファズをかけただけで、何も触ってない状態のマーシャルの音ですよ。あれカッコいいですよね。
──なんか、楽しんじゃっていますね。力の入れ具合もヘンテコで。
鈴木研一:こっちは1970年代リスペクトで演ってるだけなんですけどね。当時の楽器を使うっていう。
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