【インタビュー】人間椅子 鈴木研一が語る、郷土愛とこだわりの音詰めた新作『異次元からの咆哮』

ポスト

■“弘前ねぶた”なんて言われたら訂正します

──今回はジャケ写も念願のねぷたコラボが実現しましたね。

鈴木研一:あの写真は、弘前の有名なねぷた絵師の三浦呑龍さんのねぷたが運行しているところを撮った写真なんですよ。今年のねぷたです。この絵の周りで囃子とか笛とか鐘がジャーンジャジャンジャンって鳴ってるのが、自分には聴こえてくる。

──ジャケット用の描き下ろしではなく、実物の生写真をそのまま使っているんですね。

鈴木研一:それはね、ねぷた絵っていうのは中に火を入れて完成形なんですよ。火を入れてこうなるであろうっていう色で描いてるんです。火を抜くとなんだかベタッとしたように見えて、火を入れると急に躍動感が生まれる。白いところが光って見えるのは、ロウが塗ってあるところ。

──ロウ?

鈴木研一:ロウソクを溶かしたロウです。黒い墨で描いた絵を縁取ってロウで描いてるんですよ。そうすると、黒の周りに細く白い線が入るんですよね。そこから光が見えるんです。だから浮き出て見えるんですよ。塗らない白とロウを使った白でもまた全然違うんです。目ん玉が光って見えるけど、これはロウを塗ってるからですよ。

▲『異次元からの咆哮』

──基本的な話なんですが、“ねぷた”と“ねぶた”の違いって?

鈴木研一:一般的にわかりやすく言えば、弘前の扇形の山車に絵が貼ってあるやつが“ねぷた”で、青森みたいに立体の人形のやつが“ねぶた”ってことになってますね。でも、実は青森県の各地域で“ねぷた”という町もあれば“ねぶた”という町もあって、特に定義はないんです。でもめんどくさいから、とりあえず弘前の扇形が“ねぷた”で青森みたいなのが“ねぶた”っていうことになってます。

──“ねぷた”のことを“ねぶた”とは言わない?

鈴木研一:それは怒りますよ。どの町の人も自分のところが一番って思っていますから。だから“弘前ねぶた”なんて言われたら訂正します。

──青森県人は“ねぷた”も“ねぶた”も、どっちも好き?

鈴木研一:いやー、弘前の人はねぶたは見に行かないですよ。たまに親戚が来て、見たいって言われれば渋々行って「やっぱ弘前の方がいい」って帰ってくる。みんなそう。

──郷土愛ですね(笑)。山車は使い捨てなんですか?

鈴木研一:祭りが7日で終わっちゃうんですけど、終わったらビリビリ剥いで捨てちゃう。

──切ない。

鈴木研一:この絵はもう見れない。だから、必ず8月中に帰って見なきゃだめなんですよ。

──保存しないんですね。

鈴木研一:そこがいいところなんですよ。何台かは川に行って山車ごと燃やしちゃうんです。ねぷたには表と裏があって、このねぷたの裏がちゃんと裏ジャケになってるんです。鏡絵(表)と見送り絵(裏)って言うんですけど、僕としては見送り絵がよくてこの絵をジャケットに選んだようなものです。

──どうもアルバムの話より、ねぷたの話の方が熱量が上になりますね。

鈴木研一:いいんですよ、バンドもねぷたも宣伝したいから。青森ねぶたと五所川原立佞武多っていうのが始まって、そっちに観光客が行っちゃって弘前は押されてるんです。

──時期も同じなんですか?

鈴木研一:重ねてくるんですよ。ちょっとズレてて1日にやってるのは弘前だけだから混むんですけど、2日から青森が始まるとみんなそっちに行っちゃって。

──次の週にやればいいのに。

鈴木研一:そうすると夏が終わっちゃう。すごく短い夏なんでこうなるんですよね。

──それでまた1年が始まる。

鈴木研一:そうなんです。もうあと1年ねぷたが見れないっていうガッカリ感です。

──レコーディングが終わって、8月に帰省したんですよね。

鈴木研一:そういう風に仕向けたというか組んだというかね(笑)。8月をまたいだら絶対集中できないから。

──『異次元からの咆哮』が10月4日に発売され、そのあとはワンマンツアーですが、どういうライブになりそうですか?

鈴木研一:新曲だけでピンとこない人がいないように、適度な数で新曲やって適度な数の古い曲やって、適度な数のレア曲やって…みたいな感じにしようかなと思ってますけど。

──『異次元からの咆哮』から、どの曲をやってくれるかも楽しみです。

鈴木研一:1回のライブで新曲全部はできないから、全部聴くためには2ヶ所以上ライブに行かないとね。神戸と梅田は2ヶ所行けば全部聴けるみたいに組みたいと思います。楽しみにしていてください。

取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也



リリース情報

New Album『異次元からの咆哮』
2017年10月4日(水)発売
■初回盤(CD+DVD)
¥3,704(税別)TKCA-74561
■通常盤(CD)
¥2,685(税別)TKCA-74562

[CD収録内容]
1.虚無の声
2.風神
3.超自然現象
4.月夜の鬼踊り
5.もののけフィーバー 
6.宇宙のシンフォニー
7.太陽がいっぱい
8.痴人のモノローグ
9.悪魔祈禱書 
10.悪夢の添乗員
11.地獄のヘビーライダー
12.異端者の悲しみ 

[初回盤ライブDVD収録内容]
ライブ盤リリース記念ワンマンツアー「威風堂々」 2017年3月25日(土)赤坂BLITZ
鉄格子黙示録/宇宙遊泳/宇宙からの色/ロックンロール特急/恐怖!!ふじつぼ人間/猟奇が街にやって来る/地獄

[iTunes]
『異次元からの咆哮』プレオーダー受付中
新曲「虚無の声」独占先行配信中

ワンマンツアー情報

2017年
10月31日(火)宮城・SENDAI CLUB JUNK BOX
11月2日(木)青森・LiveHouse Mag-Net
11月4日(土)北海道・cube garden
11月8日(水)兵庫・Chicken George
11月10日(金)香川・高松オリーブホール
11月12日(日)大阪・umeda TRAD(前AKASO)
11月14日(火)福岡・DRUM Be-1
11月16日(木)愛知・Electric Lady Land
11月19日(日)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
9月24日(日)より全公演一般チケット発売開始

この記事をポスト

この記事の関連情報