【インタビュー】KAMIJO「最新シングル“カストラート”は壮大・叙情的という意味のエピックを目指しました」

ポスト

5月10日、2014年7月にリリースされた「闇夜のライオン」以来、約2年10ヶ月ぶりに待望のシングルがリリースされる。タイトルは「カストラート」。“カストラート”とは、禁じられた歌声。“少年のままの歌声”を維持するために、声変わりする前に去勢をした歌手の歌声であるという──。このモチーフに込めたKAMIJOの心を紐解くインタビューだ。

◆KAMIJO~画像~

■「カストラート」という映画を音楽で表現したかったんです
■エピックには叙情的という意味もありそのエピックを目指しました


──久しぶりのシングルになりますね。

KAMIJO:そうですね、2014年にリリースした「闇夜のライオン」ぶりになりますね。僕の新曲というのは、単にシングルとしてではなく、20周年記念アルバムとして新曲を収録したりだとか、Versaillesの作品の中で新曲を披露したりだとか、そういった形で世の中に出ていたんです。でも、ソロとしてリリースするにあたって、やはりシングルは顔となる作品でありますし、自分の中で“これだ”と思った作品であっても、リリースするタイミングになってみたら、その曲はその時には“今”ではなくなっていたりだとか、いろいろな自分の中でのタイミングが重ならなくて、2年10ヶ月という期間が空いてしまいました。

──今回のシングルはタイミングが合ったんですね。

KAMIJO:「カストラート」という楽曲自体は以前からあった訳ではないですが、構想というのは、随分前からありました。サウンド面においても、まず自分が理想とするサウンドを作る勉強も必要でしたし、ストーリーを構築するという原作作り、まぁ、僕にとっては、それが作曲にあたるところでもあるのですが、シングルを作ればいい訳ではなくて、大きな流れを作った中から、この部分をお見せしますよ、というところなので、気持ちとしてはシングルカットになるんです。


▲「カストラート」初回限定盤


▲「カストラート」通常盤


▲「カストラート」タワーレコード限定盤

──なるほど、一つの物語の中の1ピースということなんですね。サウンド面に関しても、この2年10ヶ月の中には大きな出逢いもありましたしね。

KAMIJO:そうですね。Be Choirさん(マスコーラスグループ)と一緒にやらせていただいて、それがVersaillesの武道館にまでご一緒できて、またそれをソロに持ちかえることもできましたし。そこも今作には大きく影響が出ていると思いますね。あと、メロディの殺し方をどうやっていくか、というところがとても難しかったです。

──メロディの殺し方とは?

KAMIJO:1曲の中ですべて自分らしいメロディにしてしまうと、自分らしいメロディが最大限に伝わらないんです。

──なるほど。引き算ということですか?

KAMIJO:引き算というより、自分らしくないメロディを加えるということです。その楽曲にあった、別のメロディを加えることで、その楽曲のオリジナリティも増えますし、自分の個性も新しい聴かせ方が出来るんですよね。それが、今回の「カストラート」では出来たと思います。始めにサビのメロディが出来上がったんですよ。でも、サビが出来上がってから、そこで一旦サビのメロディは忘れて、冒頭から作り始めたんです。映画のサウンドトラックを作るつもりで、いつサビにたどり着くんだろう? という感じで。

──冒頭のイントロ、1分22秒もありましたからね。

KAMIJO:そんなにありましたか(笑)。そんな冒頭から、サビに行き着いたときに、やっとたどり着いたか、っていう、ただただサビに行き着くことだけを自分の中で信じて作っていったんです。キーも何もかも違いますからね。始めは拍子さえも違いましたから。全然違うものを合体させたイメージだったので。

──冒頭のオドロオロドしい印象から、あのサビは想像出来なかったです。サビでは一気に開けますからね。浄化されるというか。

KAMIJO:はい。Bやサビで一気に安心してもらえるというか。KAMIJOのサビです! って感じですね。

──サウンドトラックを作るイメージで作ったということですけど、本当に「カストラート」は、一編の映画を見ている気分になりました。

KAMIJO:そうですね。僕の中ではまさに、「カストラート」は映画なんです。映画を音楽で表現したかったんです。シングルでそれを壮大に表現する。壮大ということを英語にするとエピックになるんですが、エピックには叙情的という意味もあって。今作ではそのエピックを目指しました。

──1994年に「カストラート」という映画がありましたが、そことの関連性は?

KAMIJO:それとはまったく関係ないです。もちろん、その映画は見たことありますし、素晴しい映画だと思いますが、そことは関係ないんです。僕がこの曲に何故「カストラート」という名前をつけたのかといいますと、大切なものを失うことで得られるより大切なものということを描きたかったんです。それを、少年の頃の歌声を維持するために、声変わり前に去勢し、その美しい歌声を守るという。すべては美しさのためという、その耽美な考え方に共鳴して、そこからインスパイアされて、この歌詞を書いたんです。

──大切なものを得るためには大切なものを失わなければならない。深い言葉ですね。

KAMIJO:僕の物語の中に、登場するナポレオン・ボナパルトが登場するタイミングだったんです。このナポレオン・ボナパルトは、このカストラートを禁止した人物でもあるんです。自分の中でいろんな接点が生まれたんですね。「Symphony of The Vampire」を作ったときに、何故かフランス革命の中にベートーヴェンがガッツリ入ってきて物語が出来上がったんですが、その時と同じ感覚といいますか。歴史の中で一つの点が結びつく感覚があったんです。ですから、カストラートと歌声そのものはこの物語の中には出て来ないし、僕がそれを歌える訳ではないんですが、Bメロの歌詞にもしているところなんですが、花は切られた段階でその命は終るけれども、その美しさが保つかぎり人にその美しさをもって安らぎを与えたり、人に愛を届ける役目を担う。流れ星は星としての命を終えた瞬間でもあるけれど、人の願いを叶える力を持つ。一つの命が消えるときというのは、人に大きなパワーを与えてるんですよね。今作「カストラート」には、そういう意味が込められているんです。

──なるほど、そういうことなんですね。

KAMIJO:僕自身、音楽をやる上で、歌うために出来なくなったこともありますし、でも、その分、ファンのみなさんを幸せに出来るんだったら、僕はそれを選びたい。きっとみなさん自身もいろんなことに当て嵌められると思うんですよ。歌声のために去勢までして、美しい声を出す、というその感覚に、誰もが共感するとは思わないんです。きっとほとんどの人がそんなことする必要はないって言うでしょうし。でも、極論を言ってしまえば、人が何かを叶える時というのは、根底にそういうことはあるんじゃないかなと思うんですよね。でも、この曲で歌いたいのは、何かを手に入れるためには、自分自身が身を削って、頑張って努力することが必要なんだよ、ということではないんですよ。現在と未来のどちらか選択する場合、ほとんどの人が未来を選ばなくてはいけないと分かっている思うんです。でもそれを選ぶことが出来ない。だから人間は死んでしまう。それが冒頭の歌詞でもあるんです。人間というのは、未来を選べず、現在を選んでいるから限界を迎えてしまっている。つまり、自分という額縁の中に収まってしまっていると思うんですね。そういうことを描いているんです。

──女性のナレーションが入ってきますね。この内容は?

KAMIJO:このナレーションの中で語られているナポレオン・ボナパルトというのは、フランス革命の中で、ある時期を境にものすごい力をつけて、一気にヨーロッパを制圧してゆくんです。そのきっかけというのが、エジプトに遠征したときに、ピラミッドの中で一夜を過ごした後からだと言われているんですよ。それが僕からのヒントですね。そのピラミッドの中で何があったのか? というのが、これから楽しんでいただけるミステリーになってくる訳です。

◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報