ショバリーダー・ワン、笑ってしまうほど豪快でテクニカルで創造的なパフォーマンス
ライブ・バンドのコンセプトを根底から改革すべくスクエアプッシャーが招集した凄腕ミュージシャンたちによるバンド“ショバリーダー・ワン”が、デビューアルバム『Elektrac』を引っ提げた東名阪ツアーを昨日4月12日よりスタートした。オフィシャルより、ツアー初日・東京公演のライブレポートが早速到着した。
◆ショバリーダー・ワン ライブ画像
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4月12日、スクエアプッシャー率いるショバリーダー・ワンの初来日公演が東京・渋谷Tsutaya O-eastで開催された。
先に結論から。2017年を振り返った時、この年のベスト・アクトはショバリーダー・ワンだったと思い返す人はきっとたくさんいるのではなかろうか。そう思ってしまうほど鮮烈なパフォーマンスだった。
オープニング・アクトのにせんねんもんだいが素晴らしいまでに不変のストイシズム溢れる演奏を繰り広げた後、ショバリーダー・ワンの面々がステージに登場。メンバーはスクエアプッシャー(ベース)、STROBE NAZARD(キーボード)、COMPANY LASER(ドラム)、ARG NUTION(ギター)の4名。CDのビジュアル・イメージと同じ格好をしており、全員が黒装束をまとい、顔の部分がLEDスクリーンになったマスクを着用。すでにこの時点で異様な磁場が形成されている。チケットがソールドアウトとなった満員の会場は、メンバーのマスクが点灯しただけでも歓声が上がるほどのボルテージの高さだったが、その期待を吹き飛ばすほどの勢いで圧倒してみせたのが1曲目の「Coopers World」だった。“ワープ”から最初にリリースしたアルバム『ハード・ノーマル・ダディ』(1997年)からのナンバーである。
ショバリーダー・ワンは、スクエアプッシャーの初期曲を演奏するバンド。音の同期は一切なし。完全に人力で、ジャコ・パストリアスが引き合いに出されるほどのバカテクで知られるスクエアプッシャーに匹敵する屈強のプレイヤーたちが、あのデタラメに屈折した高速ブレイクビーツを生で再現している(動画を見たり音源を聴く限りでは確証を持てなかったのだが、本当に全部生演奏だった!)。近年のスクエアプッシャーのライヴでもアンコール時にベースプレイを見ることができたが、ここでは全パートが生演奏で、それも1〜2曲ではなく、まるっと1公演分を堪能できるというわけだ。しかも、若かかりし頃の破天荒な楽曲を中心に。
マスクのLEDはそれぞれの演奏とシンクロしており、例えばドラマーがドラムをドドっと叩けば彼の顔がピカピカと光る。これはシンプルでわかりやすく、暗いステージ上でバンド演奏の音がグラフィカルな光で可視化されるのは見ていてじつに刺激的。音楽が音楽なだけに痙攣するように明滅することもあるし、グルーヴに合わせて光が美しく波打つこともある。時には電光掲示板となってメッセージを発することもある。筆者が確認できた「GLOBAL FUNK PATROL STATION」なる文字の並びは宇宙人という設定の彼ららしいユーモラスな一面だと感心した。
それにしてもキャッチーな名曲群を次々とダイナミックに演奏していくのでたまったものではない。「Squarepusher Theme」や「Iambic 5 Poetry」を聴いて痺れないファンがいるのだろうか。「Journey To Reedham」の終始ループしているリフも鍵盤で延々と弾いている……もう一方の手を慌ただしく動かしながら。
基本的には原曲に忠実だが、速弾きのパートがいくつもあるのも見どころ。音だけ聴いてもギターソロなのか鍵盤ソロなのかすらわからないと思っていたものが、じつはスクエアプッシャーの6弦ベースから繰り出される演奏だとわかったときは仰天した。鍵盤がベースのフレーズを奏でることもあれば、ギターがパッド的な役割を果たすこともあり、メロディー楽器陣の境界線が滲むさまも4人で演奏するための創意工夫が見てとれて面白い。
要となるドラムもやはり強烈。生で叩くのが困難な打ち込みの変則ビートがドリルンベース(ドリルを使ったようなドラムンベース)と呼ばれたりしたわけで、それを再現してみせるというのは正気の沙汰ではない。当然、阿修羅のごとき手数である。テクノ系のアーティストのライヴでツーバスを見たのも個人的には初めてだった。
アンコール含めておよそ1時間半。ドラムンベースはもとより、メタル、フュージョン、フリージャズなどの様々な要素が奇妙な形で入り混じった音楽とユニーク極まりない視覚表現でもって、会場は異次元の興奮に包まれた空間となった。本日4月13日には愛知・名古屋CLUB QUATTROで、翌日4月14日には大阪・梅田CLUB QUATTROでの公演が控えているので、この、笑ってしまうほど豪快でテクニカルで創造的なパフォーマンスをぜひ体験してみてほしいと思う。
text by 南波一海
Photo by Masanori Naruse
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