【対談連載】ASH DA HEROの“TALKING BLUES” 第2回ゲスト:中島卓偉
ASH DA HEROをホスト役に、毎回ゲストを迎えてトークセッションを繰り広げる連載が2017年春スタートした。デビュー2年目のASH DA HEROが、あるときは同じミュージシャン目線で、またあるときは異ジャンルに斬り込む同対談連載企画のタイトルは、“TALKING BLUES”だ。
◆ASH DA HERO × 中島卓偉 画像
第2回目となる今回のゲストは、中島卓偉。ASH DA HEROが敬愛するアーティストであり、ソロロックヴォーカリストとして、18年間シーンを切り拓き続けてきた大先輩でもある。ASHたっての希望により実現した対談は、事前に「魂の色が近いのかなと思います」と語っていたとおり、互いのスピリットが共鳴するような内容となった。しかし、孤高同士のスタンスに馴れ合いはない。
互いの音楽的印象や初対面秘話はもとより、“ソロ”“ロック”“ヴォーカル”について語り合ったトークセッションをお届けしたい。ちなみに前回のKen [L’Arc-en-Ciel]対談同様、今回も10000字超えの深く長いものとなっている。なお、ASH DA HEROと中島卓偉は明日4月5日、下北沢 GARDENにて開催される<ASH DA HERO 2MAN SHOW SERIES 2017「CONNECT X」>で対峙する。こちらもご注目を。
◆ ◆ ◆
■“やっぱりシンガーって凄いな”って
■衝撃を受けたのが卓偉さんの音楽──ASH DA HERO
──卓偉さんとASHは面識があるんですよね。まず初めて対面したときのことを教えてください。
ASH:初めてお会いしたのは去年の8月だったと思います。下北沢のライヴハウスでステージを観せていただいて(<TAKUI NAKAJIMA SUMMER LIVE 2016 THANK YOU ROCK’N ROLL!!!!>2016.8.11@下北沢GARDEN)、その終演後に楽屋でご挨拶させていただいたんです。
──そもそも卓偉さんのライヴに行ったのは、ASHのフェイバリットだからということですよね。
ASH:もちろん。僕はずっと卓偉さんの音楽を聴いてきたし、今も大好きな存在で。卓偉さんの前でこういうことを言うのもおこがましいんですけど、僕のデビュー時にはいろんな媒体の方から「中島卓偉の再来」とか言われることがあって。それは僕にとって光栄なことでもあったんです。
──中島卓偉という存在が、日本のソロロックヴォーカリストのひとつのひな型でもあるという。
卓偉:ただね、それは気にしなくていいですよ。そういうことを言う人はだいたい僕のことを本当の意味で知らない人たちですから。僕もソロデビューしたときに、“●●っぽいね”とかいろんなことを言われたけど、全部FUCK OFFだと思ってましたよ(笑)。
ASH:はははははは!
卓偉:僕たちはオリジナルでやっているわけですから。もちろんASHくんから「光栄」って言ってもらえるのは、とても嬉しいことだけど、ASH DA HEROは中島卓偉ではないわけだから。おそらく、ソロのヴォーカリストでバンドっぽくやっているっていう、その一点だけを見て言ってることだろうし。
ASH:僕としても、 “●●に似てる”と言われること自体、FUCK OFFなんですけど、「卓偉さんっぽい」って言われることはポジティヴに捉えていて。あ、そうなんだ!って気づかされたというか。
──気づかされたとは?
ASH:たとえば僕が、「卓偉さんみたいになりたいんです!」ってソロをやっていたら、そういう評価をいただいた時点で、“伝わっている”ことに対して悦に入れると思うんです。ところが、僕は卓偉さんが大好きですけど、同じことをやるつもりはない。それは失礼だと思っているから。でも、そういう評価をいただいたことによって、“俺は卓偉さんが好きでずっと聴いてきた”っていうことに改めて気づかされたわけで。しかも、今はファン目線ではなく、僕が立っているソロロックヴォーカリストというライン上に、卓偉さんもいる。デビューした以上、超えなければいけない存在だというところに、気持ちを持っていくことができたという。
──では、下北沢GARDENの楽屋で挨拶したときも、目標に掲げる人と対面したという感覚?
ASH:「初めまして」っていう挨拶だったんですけど、「「上京難民」っていう曲、いいですね」とおっしゃってくださって。本当に気さくな方だと、ますますファンになったわけですが(笑)。
卓偉:そうそう。そのライヴの前にCDをいただいていたので聴かせてもらってたんですけど、「上京難民」、すごくいい歌詞でしたね。
ASH:「上京難民」には僕のルーツであるHIPHOPでラッパーな部分も、ポエトリーリーディング的でブルースな部分もあって。その曲を評価していただいたことにすごく感激したんですよ。っていうのも、卓偉さんの音楽って圧倒的にロックンロールなんだけれど、その根底にはソウルミュージックが流れていると思うんです。HIPHOPが好きなヤツらは、ソウルとかR&Bを含めたブラックミュージックも好きだと思うんですけど、僕もそのひとりで。卓偉さんの言葉の強さとかに惹きつけられるんですよ。歌詞の世界観とかメッセージはレベルミュージック(rebel music)だし。刺さるというか、“やっぱりシンガーって凄いな”って衝撃を受けたのが卓偉さんの音楽であり歌詞なんです。
卓偉:ありがとうございます。嬉しいですね。
ASH:実は「上京難民」が完成したときに、“卓偉さんがつくってきた音楽が僕に影響している”ってことを感じたんですね。「高円寺」とか「福岡」とか卓偉さんの曲が好きなんだよなーって。だから、「上京難民」をピックアップしてくれたことが一層嬉しかったんです。
卓偉:自分のリアリティを切り口に歌詞を書いていると、それが伝わる人って限られるかもしれないんです。だけど、同じように生きてきた人ってたくさんいるわけじゃないですか、細かくは違えどもね。たとえば、今挙げてくれた「高円寺」っていう歌は、僕が高円寺に住んでいたときの話をリアルにただ書いているだけかもしれない。けど、高円寺に住んだことがない人でも……大学のサークルでもいいんですが、そこと照らし合わせることができるような歌詞というかね。
ASH:僕は名古屋の新栄っていう街に住んでて、そこでの出来事が卓偉さんの「高円寺」だったんです。おこがましいですけど、それが自分の「上京難民」につながるという。
卓偉:おこがましいなんてとんでもないですよ。それが自分のストーリーでありヒストリーでもあるわけだから。「上京難民」からはASHくんのプライドとか、今まで生きてきた環境とか、その重さみたいなものを感じましたよ。だから僕も、自分の世界じゃなくても、ASHくんの歌詞の世界観に自分を重ねて感動できたのかもしれない。それが、ソウルっていうことですもんね。
ASH:すごくわかります。
卓偉:それにしても、ASHくんが最初、HIPHOPだったっていうのは意外だけど、今、話を聞いて、なるほどと思ったんですよね。もちろん、ASHくんのライヴは観させてもらっているんですけど、歌えてシャウトができて、ラップもできる人っていうのは、なかなか稀だと僕は思うんです。やっぱり、そのどちらかに寄ってしまうものなんですよ。僕も18年演ってきたなかで、ラップっぽい歌もあるけど、根本がラッパーを目指しているわけじゃないからそこにドップリいこうとは思わない。でね、本当にラップで持っていこうという人は、語弊があるかもしれないけど、歌が歌えない人のほうが多い。
ASH:確かに多いですね(笑)。
卓偉:だから、フィーチャリングでシンガーを呼んだりするわけで。ところがASHくんは、一人二役的なことが出来て、そのどちらも一端。それは素晴らしいことだと思っていたんだよね。ルーツにラップがあるという話を聞いて、そのヴォーカルスタイルに合点がいきました。
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