【インタビュー】岸田教団&THE明星ロケッツ「現代が良い時代だと全然思わないからこそ希望を歌わなければいけない」

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岸田教団&THE明星ロケッツのニュー・アルバム『LIVE YOUR LIFE』が3月22日にリリースされる。本作は、今までの彼らとは一味異なる内面の想いをダイレクトに綴った歌詞や新境地の楽曲、より熟成したプレイなどが詰め込まれた密度の濃さが印象的。始動から10年を経て、岸田教団&THE明星ロケッツが新たなフェーズに入ったことを感じさせる意欲作について、リーダーの岸田(b)とichigo(vo)に語ってもらった。

◆岸田教団&THE明星ロケッツ~画像&映像~

■自分はメッセージを発するのに向いているんだと気づいたんです
■メッセージといっても、そこら辺に転がっているようなものを期待されると困りますけど(笑)


――『LIVE YOUR LIFE』の制作は、どんな風に始まったのでしょう?

岸田:アルバムの制作は、前回の「Blood on the EDGE」を作り終えた直後から始まりました。その時期にレコーディングすると決まっていたので、やらざるを得なくて。制作に入る前は、追い込まれておりました(笑)。

――な、なるほど(笑)。では、新しいアルバムを作るにあたって、テーマやコンセプトなどはありましたか?

岸田:ありました。俺はこれまで自らのメッセージ性みたいなものは、あまり重要視せずに生きてきたんですよ。自分は元々サウンドを作る側だったり、プレイヤーだったりといった音楽的な方向を重視していて、作詞やバンドとして発するメッセージとかには、さしたるこだわりもなければ、さしたる情熱もなかったから。みんなが俺が書く歌詞を好きだと言ってくれるから歌詞も書くけど、本当にやりたいことではなかったんですね。でも、熱意が湧かないことを10年間やり続けるというのは難しいことじゃないですか。それが出来たということは、自分はメッセージを発するのに向いているんだと気づいたんです。なので、今回は今までから一転してそういう面を重視して、サウンドとかの面で自分の手が回らない時は素直に人に任せたりしました。


――ということは、こういうことを歌いたいから、こういう曲を作ろうというようなこともありましたか?

岸田:ありましたね。まずは、メッセージ性ありきで作るという。ただ、メッセージといっても、そこら辺に転がっているようなものを期待されると困りますけど(笑)。

ichigo:性格が、そうだからね(笑)。今回は、岸田からしっかりした歌詞の世界観のオーダーがあったんですよ。たとえば「nameless survivor」とかは、“世界の問題と目の前の女の問題をごっちゃにしてない?”みたいな歌詞を書いて欲しいと言われたんです。それってハリウッド映画とかが、そうじゃないですか。世界を相手にしつつ好きな女がいたり、守っていたりという。岸田さんは、そういうイメージはあったけど、岸田さんの中にそういう観念がないので(笑)。

岸田:ないね。俺の場合は、もし自分が世界の問題と争っていたとしたら、たとえば目の前で女が人質とかになっていたとしても気にせず戦うから(笑)。

ichigo:それだと、映画にならないから(笑)。岸田に、自分はそういう歌詞は書けないからイケメンの歌詞を書いてと言われて。ichigoはイケメン担当みたいな(笑)。私はそういうストーリーの映画とかドラマも大好きなので、岸田の言っている意味がよく分かったし、スンナリ書けました。

――良いパートナーシップと言えますね。岸田さんが言った通り、岸田さんの歌詞は個の内面を描いているようで、外側の大きな世界に目を向けていることと、“戦う姿勢”が基本スタンスになっていることが印象的です。

岸田:まさに、そうです。だって、勝たなければ何も得られないですから。今までは自分のそういうパーソナルな面は表に出さなかったけど、今回は強く打ち出しました。“戦う”ということに関して言うと、アルバムの1曲目の「希望の歌」からテーマは“戦い”ですから。この曲は、サビの後に出てくるメジャー感のあるシンセのリフが、僕の中では希望を表現しているように感じたんです。そこからイメージが膨らんで、これは聖戦を呼びかけるテロリストの檄文だなと思って。この曲は希望を歌っているけど、希望を歌うということは、今が良くないからなんですよね。俺は現代が良い時代だとは全然思わなくて、だからこそ希望を歌わなければいけないという発想です。その希望というのは戦うことだから、聖戦を呼びかけるイメージで歌詞を書きました。だから「希望の歌」だけど、希望に溢れた歌ではない。あと、今回の歌詞で最大DPSが出ているのは「zero-sum game」かな。歌詞的に一番攻撃的な内容で、ダメージが高い。

ichigo:この歌詞ヒドいよね(笑)。“皆様が認めている人格者である貴方でも どうせ守りたいのはお仲間だけなんでしょう”って(笑)。

岸田:しかも、それを言ったうえに、そういう生き方を否定しないという(笑)。いや、みんなこういう歌詞を書いて、誰かを批判しますよ。だけど、それを肯定することで、よりダメージが高まると思って。批判するお前らが間違っているというイメージで書きました。

ichigo:岸田の書く歌詞は男性的なんですよ、すごく。どこまで行っても男なんです。でも、ハリウッド映画とかを作っている人達は観る側に女性が沢山いて、女性を惹きつけないといけないから、そこにはロマンスが必要だと思って、そういうものを入れているわけ。つまり私は、ロマンス担当なわけですよ。楽曲というのは色気がないと成り立たない部分が、いっぱいあるから。

岸田:その通り。だから、同じバンドにichigoさんがいてくれて良かったです。

ichigo:感謝してね(笑)。

岸田:してるじゃん、いつも。

ichigo:ええっ! そうかな?

――あ、あのぉ……。ichigoさんは、ご自身の歌詞に関してはいかがでしたか?

ichigo:「nameless survivor」以外の新曲で今回私が歌詞を書いたのは「vivid snow」と「LIVE MY LIFE」という曲です。「vivid snow」の歌詞は、私らしいかと言われると、そういう歌詞ではないですけど、こういう風にちょっとイジイジした、イライラした恋愛観の歌詞というのは結局得意なので。そういう歌を、アルバムに1曲くらい入れておきたいなと思って書きました。「LIVE MY LIFE」は、この曲か、1曲目に入っている「希望の歌」のどっちかをリード曲にしようという話をしていて。最終的に「LIVE MY LIFE」がリード曲に決まった時に、単純に前向きなことを歌いたいなと思ったんです。みんなに対して、“そのままで良いんだよ”と言いたいなと。そう思って書き上げたら、“私こういう感じだよ”という歌詞になっていたという(笑)。

岸田:それで、タイトルが「LIVE YOUR LIFE」から「LIVE MY LIFE」に変わったんです(笑)。でも、アルバムはみんなが聴くものであって「私」ではなく「みんな」を主体にするべきかなって。聴いてくれるその人のものだから、“YOUR”のままで良いじゃんということになりました(笑)。

ichigo:「LIVE MY LIFE」の歌詞を書きあげた時は、自分でもビックリしました。いつの間に自分のことになったんだろうと思って(笑)。この曲の歌詞を書いた時は、これから先のいろんなことを見据えていたんですよ。武道館でライブをしたい、その先にも行きたい、そのためにはみんなに語りかける曲もないとダメだと。なのに、変わってしまったんです(笑)。でも、“私はこれで行く! ついて来い!”みたいな歌詞だから、これはこれで良いんじゃないかなと思っています。

――同感です。そういうことを歌うのがichigoさんらしいと思いますし。

岸田:そう。だから、今回は我々が自らのパーソナルに立ち返った曲が並んでいるといえますね。

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