【BARKS×楽天ミュージック特集】清春が語る、変貌するリリース形態の現在・過去・未来「求められるのは広さよりも深さ」

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■“ジャンル問わず一緒に”みたいな風潮
■むしろそれは間違いだと思っていて

──現実味のある話ですね。そんななか、たとえば楽天ミュージックでは“配信から購買へと導く”というような流れを備えていたりするわけなんです。

清春:新しいアイデア、新商法ですね(笑)。

──配信と同時に、同じサイトでパッケージも購入できるようになっている。盤だけじゃなく、場合によっては公演チケットも。

清春:なるほど。配信だけでいい人はそれで済ませればいいし、それじゃ足りなくなった人はそこで買えばいい、と。つまりCDをまだ売っていこうという姿勢の表れなんですね。それは今や貴重なことだと思いますよ。今やレコード会社の人たちの発想というのも“いかにCDが売れないか”というところから始まってるわけですからね。そこで、読者の皆さんも知ってるように、CDにDVDを付けるとか、何かオマケを付けるとか……そうやってCDという商品としてのあり方が変わってきていて、悲しいかな、音がメインじゃなくなってきてるじゃないですか。これはある意味、みんながやりすぎたことによって起きてることだと思います。この傾向を喰い止めるには、それこそもう全員が、“じゃあ歌詞カードは24Pまで”とか“盤は1枚だけじゃなきゃ駄目”とか規則を作っちゃえばいいんだと思う(笑)。“DVDを付けるのは違反です”とかね(笑)。

──ジャケ違いとか、さまざまな特典とか、それこそ握手券とか……。

清春:もう全部駄目(笑)。特殊パッケージもね。もう、そうしたほうがいいんじゃないのかなと思う。もちろん値段も全部一律にしてね。そうするとまた“じゃあどうやって制作費を捻出するの?”とか、そういう問題も出てくるわけですけど。でも、CDとチケットがセットになってたり、Tシャツが一緒になってたりとか、ああいった欧米のやり方はいいと思うんですよ。もう全部込み、みたいな。CDとチケットを同時に買うというよりも、“チケットにCDが付いてくる”という感じだったりするケースも多いよね。日本もそうなっていくのかな、という気はしてます。360度ビジネスね。レコード会社の人たちとかもよく言ってることだけど、レコード会社がライヴ制作やマーチャンダイズも手掛ける、みたいな。今は、興業を請け負っているところがいちばん強いわけですよ。アメリカではそういう会社がCDも売るようになってる。だから、日本も徐々にそうなっていくんじゃないのかな。今のような業界の構図は崩壊することになる。“メジャーのレコード会社と契約する必要があるの?”という疑問を持ち始めてるアーティストや事務所がほとんどだと思う。ただ、それでもまだ日本は“盤”が売れる国だし、それがいつまで続くのかはわからないわけだけども。僕がデビューしてからの約25年のなかで、すごく変わってきたのは確かですよね。昔はホントに、大きなレコード会社と契約できたら“すげえ!”ってことになったし“人生変わるかもしれない”みたいなところがあったけど(笑)、今はどこと契約してもそんなに大きく変わらないし、メジャーもインディーズも新しい意味で関係なくなってきてるよね。

──確かに。ただ、音楽業界の低迷、CDセールスの減少といったものについて論じられる際に、お決まりのように配信が悪者にされる傾向というのがあるじゃないですか。それはちょっと違うんじゃないか。という気がするんですよ。

清春:そうですね。なんか……配信については、どれくらいまで網羅できてるのかによるところはあると思うんですよ。売れるモノ、一般的なモノしか扱ってないのか、それとも何か特定のカテゴリーに特化していて、その範囲内で隅から隅で網羅できてたりするのか。たとえば邦楽の僕らみたいなジャンルで言えば、1980年代に出てきて消えちゃったバンドのデモ・テープが復刻音源としていまだに買える、とかね(笑)。今の場合、“何だっけ、あのバンド?”みたいに頭のなかで思い出すと、YouTubeで検索したりするじゃないですか。それくらいの感覚で使える音楽配信サイトがあったならすごいんじゃないかな、とは思う。ものすごく濃いところまで手が届いてる、専門的な感じであったならね。ただ、それもまたジャンルによるところがあるじゃないですか。たとえば、いわゆるアイドルの曲を配信で聴く人ってどれくらいいるのかな、という疑問もあるし。わざわざそれをハイレゾで聴きたい人がいるのかな、とかね。そうなると結局、ジャンルで分けるしかなくなってくるのかもしれないけど。ロックならロックで特化して、そこに膨大な量のものがある、みたいな感じに。店頭でも配信でもそうだと思うんだけど、売れなかったアーティストの曲って、どんどん扱われなくなっていってしまうじゃないですか。

──ええ。新しいものがどんどん出てきて足されていくのに対して、そうしたものは“なかったもの”とされていくことになってしまう。

清春:うん。僕自身、配信は便利だと思うし使ってもいるんだけど、探しても出てこないものというのがあるわけですよ。同じジャンルのなかでそこまで細かいところまで網羅できている配信サイトがあったならすごいと思うんですけどね。

──実際のお店の場合、たとえばパンク専門店、メタル専門店、ヴィジュアル系専門店みたいな形態があるじゃないですか。そんなふうに、配信にも専門店があっていいんじゃないかということですね?

清春:実際そういうことを考えている人もいるんでしょうけどね。いくつかの専門店を抱えた総合音楽サイト、みたいな。だけど、大本のサイトがあってそこから飛んでいくというよりは、末端のお店のほうをメインに考えるべきだと思うんです。たとえば俗に言われるロッキングオン系のお店があったとしたら、そこでは本当にそれだけを扱ったほうがいい。そこにヴィジュアル系とかを混ぜるからおかしなことになる。逆もまたしかり、なんですけど。ラウド・ロックとかについても同じだと思う。“ジャンルを問わず一緒にやろうぜ”みたいなのが良しとされる風潮が実際あるけど、僕はむしろそれは逆というか間違いだと思っていて、それが日本で音楽が廃れていく原因のひとつでもあるような気がしてる。何もかもが一緒にされることによって、むしろ興味がそがれていく部分があると思うんです。せっかくの濃いものが薄れていくというか。そこを完全に分けていくことで、それぞれに権威が生まれてくるんだと思う。

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提供: Rakuten Music
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