【音踊人35】J-WAVE「SONAR MUSIC」と<MINAMI WHEEL>がくれた、とけた電球との出会い(蒼山静花)

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2016年9月30日。首都圏の音楽ファンだったらほとんどの人が一度は聴いたことがあり、慣れ親しんでいたであろう、J-WAVE「TOKYO REAL-EYES」という番組が終了した。この番組を、そしてDJの藤田琢己を慕ってたくさんのアーティストがスタジオに駆けつけ、出演できなかったアーティストたちも番組の終了を惜しむ声を直接スタジオへ、もしくはTwitterなどのSNSに寄せた。この番組がいかに多くの人に愛されていたのかを感じられる2時間半だった。

週は明け、まだまだ番組終了の余韻の最中、10月3日から藤田琢己がナビゲーターを務める新たな番組が始まった。その名も「SONAR MUSIC」。”SONAR”とは、超音波を探すマシンのことを指すらしい。曜日ごとに変わるナビゲーターと藤田がラジオの電波を使い、リスナーがまだ知らない音楽や各人のルーツとなった音楽を、テーマに沿って紹介してくれる番組とのことだ。私自身、秋の夜長のお供としてこの番組を楽しむリスナーのひとりとなった。

10月6日。番組開始初週ラストのオンエア日だったこの日、番組内「SONAR TO THE NEXT」というコーナーで私は新たな音楽と出会った。バンド名は、とけた電球。流れていた楽曲は「夕焼けを見て音楽を聞こう」というタイトルだった。慶應大学の学生たちで結成されたバンドと紹介されていたが、深夜の時間帯に聴くに心地よいサウンド、メロディアスな旋律に乗っかる情景的な歌詞。思わず、ラジオを聴きながらすぐにバンド名で検索をかけてしまった。直近のライブ予定を確認したところ、ページに記載されていた<MINAMI WHEEL>という文字。音楽に精通した人間であれば、一度はその名を目にしたことがあるであろう、関西のライブサーキットだ。奇しくも、今年やっと念願かなって3DAYS PASSを手に、関西に乗り込もうとしていたところであった。これはいいチャンス。観に行くしかない。そう思い、私はマイタイムテーブルのとけた電球の部分にチェックをつけた。

<MINAMI WHEEL>2日目。南堀江にあるknaveというライブハウスで私は初めてとけた電球のライブを観ることができた。ラジオという電波から流れてきた音に誘われて、実際に本人たちが目の前で音を鳴らしている瞬間に立ち会うまでにちょうど10日。音を聴いたときに感じた想い冷めやらぬうちに、ライブで生の音を体感する。とても運がよかったと思う。「SONAR MUSIC」で聴いた曲も聴けたし、個人的には初めて聴いた「ムーンラヴァー」という曲がとても印象に残った。鍵盤とベースが時折挟み込む印象的な旋律に、軽やかなドラムの音、そこに連なる柔らかみのある歌声。Aメロ、Bメロとサビの緩急のつけ方は、一日の始まりに太陽の光が差し込むカフェで小休止した後に、軽やかにリズムに乗りながら歩き出したくなってしまうな……と思った。(実際に歌詞を見てみると、夜の歌だったのだが)<MINAMI WHEEL>の会場のなかでは中心地から少し離れたknaveに、たくさん人が集まる様子を純粋に喜ぶメンバーたち。少しの初々しさと、オーディエンスの様子を見て楽しそうな顔を浮かべる若々しさに、光り輝くものを感じた。

きっとまた、私は彼らのライブに足を運ぶだろう。“ラジオ”という耳から得た興味に、“ライブ”という実体験が加わり、自身の“好き”のフィールドが広がっていく瞬間。この瞬間があるから、音楽への愛は止められないのだ。今回の新たな音楽との出会いを通じて、オンエアからまだ数週間だが、私は「SONAR MUSIC」のファンになった。恐らく、これからもこの番組は私にたくさんの音楽との出会いを与えてくれるであろう。そして、その出会いで得た興味を、“好き”という確信に変えてくれるライブの存在。特に<MINAMI WHEEL>のようなライブサーキットは、興味の対象を一気にザッピングすることができる、とても良い機会だと思う。これからもこのような素敵な番組、ライブイベントは長く続いていってほしい。改めてそう感じた出来事であった。


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