【インタビュー】KAMIJO、美しい旋律は血の代わりとなる「ベートーベンからのメッセージ」
■愛する人に悲しい想いはさせないという想いから生まれたのがヴァンパイアだと思う
■だから、ヴァンパイアは決して怖いものではなく、愛の象徴だと思うんです
──今回の『Symphony of The Vampire~Heart~ベートーベンからのメッセージ』の見どころは?
KAMIJO:『Symphony of The Vampire』もありつつ、いただいているクワイアアレンジも本当に素晴しいですし、楽曲の中に、本来歌がないところに歌が乗ってくるんですよ。歌詞が付いて、クワイアが乗ってくるんです。そこが見どころですね。
──単なるコーラスアレンジには止まっていないですね、もはや。
KAMIJO:そうですね。僕の作った物語が一人歩きしていますので、僕自身も楽しんで物語を紡いでいけている気がしています。
──物語の見どころとしては?
KAMIJO:『Heart』という物語はラブストーリーなんです。ヴァンパイアと人間との禁じられた愛を歌っているんです。HeartとはSymphony of the Vampireで抉り出された『心臓』であり『心』でもある。さらに、Heartとは、Heとartで、“彼の芸術”という意味でもありまして。愛とは何なのか? ということを描いているんです。ルイが知っている愛とは、幼い頃に触れていた、父と母の愛と、人間を愛してしまったベートーベンの愛しか見ていないんです。ですから、今回、愛の見本となったのは、サブタイトルにもなっている“ベートーベン”なので、そこから届くメッセージが、何であるか? というところが見どころになってくるんだと思います。愛国心なのか、それとも、愛する人へのメッセージなのか、それとも、ルイへ個人的な未来の希望を託すものなのか。そのあたりも含め、ベートーベンからどんなメッセージが受け取れるのか? そこは僕自身も楽しみにしているところでもあります。
──フランス革命のことを詳しく知らなくても楽しめます?
KAMIJO:もちろんです。たしかにそうですね、ちょっと敷居が高いというか、気軽に入れそうにない世界観に思えたりもしますよね。でも、まったく知らない方でも大丈夫です。
──また今回続編ということなので、1回目を知らなくて行っても大丈夫なのかな? とか。
KAMIJO:大丈夫ですよ。僕、『名探偵コナン』が大好きなんですけど。
──え!? 意外過ぎます!
KAMIJO:あははは。大好きなんですよ(笑)。それは、何故かというと、毎回読み切りなので、誰が何処から読んでも楽しめるからなんです。でも、ちゃんとずっと読んでいる人だけにしか解らない、大きな物語の進行もあったりするので、そこはずっと読んできた人たちだけに解る特別なメッセージだったりもする。今回のストーリーもそうなんです。どなたが何処から見ていただいても、楽しんでいただけるようになっていますので、ぜひ、安心してお越しいただければと思います。フランス革命に出てくる、マリー・アントワネットの息子とベートーベンの間に何があったんだろう? というストーリーだけを楽しんでもらえたらいいんですよ。そして。ベートーベンから、この『Heart』の物語の中で、どんなメッセージが届くのか? 全然時代が違うわけですからね。それは、きっとみなさんが知っているメッセージなんですけどね。
──知っているメッセージ?
KAMIJO:はい。『Symphony of the Vampire』の中には、“美しい旋律は血の代わりとなる”というメッセージがあるんですけど、そこが再定義されることになってくるので、楽しみにしていていただければと思います。
──なんだか、大感動が隠れていそうですね!
KAMIJO:そうですね。感動していただけると思います。僕は、ヴァンパイアって、愛の象徴だと思うんですよ。人間って、“誰かのために死ねる”とかではなくて、“誰か愛する人のために自分は生きる。愛する人に悲しい想いはさせない”というところだと思うんです。“誰か愛する人のために自分は生きる。愛する人に悲しい想いはさせない”という想いから生まれたのがヴァンパイアだと、僕は思っているんです。永遠の命を生きる者としてね。だから、ヴァンパイアは決して怖いものではなく、愛の象徴だと思うんです。なので、そんな感覚で物語の中に入って来てくださればいいのではないかなと思いますね。
──でも、ヴァンパイアって孤独ですよね。
KAMIJO:そう。周りがみんな居なくなってしまうわけですからね。でも、自分はずっと生きている。それは「Romantique」という歌詞の中に書かれているのですが、ヴァンパイアにとっては、全ての星の流れも、全部流れ星なんですよ。自分は永遠を生きているんで、星の動きなんてすべてが流れ星のように一瞬で去っていってしまう。それくらいヴァンパイアにとっては、人の命なんて儚いものだったりするんです。でも、その一人一人と向き合って、愛を歌うというのが、この物語の一番伝えたい部分なのかなと思います。
──なるほど。深いですね。ところで。今回のステージに向けて、長谷川さん(Be Choirのリーダー)たちとはいろいろとお話されたんですか?
KAMIJO:はい。東京キネマ倶楽部の支配人の計らいで、長谷川さんを始めとするBe Choirのメンバーのみなさんと、お酒を交わす会を設けていただいたんです。前回のときは、練習やリハーサルで顔を合せたりはしていたのですが、一人一人と言葉を交わす時間が持てなかったので、ステージでなかなかアイコンタクトが取れなかったということもあり、今回は事前に交流を深めようという計らいを、支配人がしてくださったんです。僕の新曲にBe Choirのみなさんに参加していただいたんです。僕は、作曲の時点から、Be Choirさんのみなさんに参加していただくことをイメージして歌詞も書いていきましたから。その楽曲のレコーディングに参加していただいて、最高の歌を歌っていただいたんです。50トラック以上の大合唱。そのレコーディングの後に、ワインとイタリアンで、みなさんとパーティをしたんです。なので、今回の歌は前回以上にすごいことになっていると思いますよ。歌って、心を重ねると、素晴しくなりますから。前回も、“残されたロザリオ♪”っていう1行を歌ったとき、ファンのみなさんは頭振りながら大号泣していましたからね。みんなで、ルイ17世の歴史上史実としては暗かった世界が、明るく塗り替えられた瞬間でもあったんです。合唱のパワーと言いますか、歌詞を一緒に歌うというのは、楽器ではどうにも出来ない人の声の素晴しさをBe Choirさんから教えていただいた気がします。
──そうですね。でも、前回は長谷川さんも相当緊張されてらっしゃいましたけどね(笑)。
KAMIJO:あははは。そうですね(笑)。僕も前回で長谷川さんのそういうキュートな部分を知ることができたので、今回はどうしようかなって思っています(笑)。僕は、乗っかる振りして、彼を乗っけますから(笑)。長谷川さんの熱い人柄が、僕のファンの人たちからもすごく人気でして。本当にみんなで僕の音楽を愛してくれている空気感も、『MOSHIJO』ならではの空気感を作っているのだと思います。本当に、来ていただけたら、歌の素晴しさをお伝えできると思います。なんというんですかね、音楽で、ロックで暴れたいという願望も、歌詞で感動して涙を流したい、その両方が『もしクワ』には、『MOSHIJO』にはありますからね。
──演奏面でも、今回も前回と同じく、Kelly SIMONZさん、Tomotaka Sekiyaさん、Kota Sayamaさん、Shin Watanabeさんといった錚々たるプレイヤーのみなさんが、最高のプレイで盛り上げてくれますからね。
KAMIJO:はい。両方プラス無限大な力が生まれるのが『もしクワ』の魅力だと思うので、そこを体感していただけたらと思います。僕自身、そこの魅力に惹かれて、新曲は合唱曲になってしまいましたからね。
──音楽の概念から覆った感じですね。
KAMIJO:そうなんです。Be Choirさんと出逢う前と後では、まったく変わりましたからね。僕、以前までは、ボーカルは一人であるべきだと思っていたんです。でも、一人じゃないんだ! っていう考えに変わりました。気持ちの問題も大きいんですけど、僕一人で歌うときも、もうBe Choirさんが一緒に歌っていると思って歌うようになりましたからね。歌はみんなで歌うものだっていうとらえかたに、一気に変化したんです。
──歌を始められてから、一番大きな変化だったりします?
KAMIJO:一番大きな変化ですね。まず、ロックバンドを始めたときと、まったく違う理由ですから。ロックバンドを始めたときは、ステージの真ん中に立って歌っている“俺を見ろ”という思いで歌っていたので。でも、Be Choirさんとご一緒するときというのは、歌詞を伝えたいというのが一番なんです。そのためには、みんなで歌うこと。その素晴らしさを知ったんです。僕の中でその革命が起こったのが、2015年12月13日なんです。
──なるほど。ということは、更なる革命が2016年12月11日に起こるということでもありますね。
KAMIJO:そうですね。さらなる革命が。
──ここでのKAMIJOさんの変化は、ご自身のバンドVersaillesの方にも大きな影響を与えそうですか?
KAMIJO:そうですね。Be Choirさんと出逢ったことで、Versaillesの楽曲の捉え方というのも変わりました。僕が歌うということ自体への想いが変わったので、そう言った意味でも、変化はあると思います。そして、今、バンドとしても一致団結していて、とてもいい状態にあるので、僕の変化というよりも、バンドとしての心地良さが音楽のパワーに繋がっていると思います。やはり、バンドはメンバーの数だけの人生もあり、パワーもありますからね。歌で感情を動かすって、すごいことだと思いますから。涙を流させるってすごいこと。僕は、涙って記憶の覚醒だと思っているんです。記憶の覚醒というのはどういうことかと言うと、涙というのは、自分の記憶とリンクしたときに流れるものだと思うんです。何かしらその人の人生と重なり合う場面がないと、涙というのは生まれない。なので、誰もが感じる経験というのは、自分もいろいろと経験して、精進していきたいなと思っています。
【Be Choir リーダー長谷川雅洋コメント】
KAMIJOさんに、“Be Choirとの出逢いは、自分の音楽人生を変える、革命だ”というようなことをご自身のTwitterに書かれたことがあって、それを見たときには、これはとんでもないことになったぞ! って正直思いました。もちろん、僕たちにとってもKAMIJOさんとの出逢いはとても刺激的で、感銘を受けることばかりだったので、大変恐縮しております。僕たちはゴスペルを歌っているグループでもあるので、普段、リズミカルな黒人寄りの楽曲を歌うことが多かったんですが、どっちかというと、日本人の発声としては、伸ばしたり、伸ばした音を重ねたりといった、クラシカルな歌い方でクワイアで表現するというのが、とても相性がいいんです。それもあって、みんな2015年にKAMIJOさんとご一緒させていただいてから、メンバーの中にKAMIJOさんのファンがいっぱいになって。歌詞の世界観にもとても共感したようで、練習のときも、ずっとKAMIJOさんの楽曲と歌の話をしている感じなんです(笑)。またそういう想いで歌う歌って、違うんですよね。なので、聴いていただいてる方達の心の奥の方まで入り込む歌が歌えているんじゃないかなと思っています。今回、さらに、KAMIJOさんもインタビューの中でおっしゃってくださっていましたが、一緒に新曲のレコーディングをさせていただいたんですが、感無量でした。今回もこうしてご一緒できることになり、メンバー一同大変嬉しく思っております。今回は、さらに多くの感動をお届け出来ると思っておりますので、ぜひ、遊びにいらしていただけたらと思います
取材・文●武市尚子
<公演情報>
<MOSHIJO THE NEXT~Symphony Of The Vampire~Heart~ ベートーベンからのメッセージ>
2016年12月11日(日)東京キネマ倶楽部
【出演者】
KAMIJO
Be Choir
MOSHIJO バンド
Gt.Kelly SIMONZ
Ba.関谷友貴
Key.佐山こうた
Dr.渡邊シン
開場:16:00~
開演:17:00~
チケット料金 ¥3,500(ドリンク別)
プレイガイド
イープラス
購入ページURL(パソコン/スマートフォン/携帯共通)
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002201716P0030001
ライブ・イベント情報
「Chateau de Versailles」
2017年2月14日(火) 日本武道館
【チケット一般発売】
11月5日(土) プレイガイドにて発売
http://www.diskgarage.com/ticket/detail/no074027
「EUROPE TOUR 2017 “Renaissance”」
1月26日 Moscow (モスクワ) @ Teatr Club
1月27日 Helsinki (ヘルシンキ) @ Gloria
1月29日 London (ロンドン) @ Islington Academy
2月1日 Bochum (ボチャム) @ Zeche
2月2日 Warsaw (ワルシャワ) @ Hybrydy
2月4日 Barcelona (バルセロナ) @ Salamandra
2月5日 Paris (パリ) @ la Machine
【チケット一般発売】
下記サイトよりお申し込みいただけます。
http://www.b7klan.com/?page_id=166
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