【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.54 「『CLIMAX TOGETHER』」
911と称されて以降、悲しみの日として世に浸透した9月11日。しかし、私にとっては大切な友のバースデイなので、喜びの日でもあります。
学生時代には幾多のライブやイベント、フェスを共に経験したのはもちろんのこと、高校生活も、留学中も、結婚式にも出席してくれ、この世で自分を最も知ってくれている彼女はBUCK-TICKをこよなく愛する人。彼女と知り合えたことで、BUCK-TICKが12年に1度という壮大な時間軸で開催する『CLIMAX TOGETHER』の3回をすべて体験することができました。
24年も前なので、今も記憶にあるのは当時おそらく強烈だったシーンだったはずですよね。1992年開催時は、友の誕生日を友の大好きなバンドのライブで祝える喜びが先でしたから、BUCK-TICKに関する深い知識ももたずにダビングしてもらった『狂った太陽』を聴いて臨みました。
その日の感動体験は、自宅に転がっていたアコギで「JUPITER」の練習へと導いてはくれましたが、星野さんのように素敵に奏でられないと悟り、あっさりと聴く側に廻りました。このとき、16歳。
それから12年が経過した2004年。まさかの2度目の開催が発表され、これは行かねばなるまいと前述の友と当時の同僚とで会場に駆けつけた『悪魔とフロイト-Devil and Freud- Climax Together』。アメリカ同時多発テロ事件から3年が経ったあの日のライブでは、「極東より愛を込めて」が激しく狂おしい演出だったことを筆頭に、櫻井さんの呼びかけによって会場にいた皆で911テロ犠牲者に黙祷を捧げるなど、愛が中心に据えられていたメッセージの非常に強い内容だったと記憶しています。このとき、28歳。すでに音楽ギョーカイに身を置いていたので、巨大なLEDスクリーンや美しい照明に釘付けにもなっていました。
12年前のライブでは、そうした舞台演出も、サウンド面でも、常に進化をし続けるBUCK-TICKというバンドが放ってきたものに受けた衝撃が大きくて、改めてBUCK-TICKの魅力を痛感したのでした。特に、終演後のスクリーンに映し出された「すべての亡骸に花を すべての命に歌を」という言葉を見て、それまでライブは観ていても、歌詞やバンドのメッセージなどについて深く考えたことのなかった私にとってはその意外過ぎる、世を憂い、愛を唱える姿勢に圧倒され、感動し、それまでの日々がなんだかものすごくもったいなかったような、損した気分になったのを覚えています。
そして今年。まさか、まさかの3度目開催に驚き、そして12年に一度の誕生日プレゼントとして腹心の友にチケットを贈ったのは当然の流れでした。ライブレポートは他で書きましたので割愛しますが、「JUPITER」での24年前のライブ映像をスクリーンで出しながら現在のBUCK-TICKによる「JUPITER」を魅せる演出などもあいまって、24年前と12年前と今年の9月11日がひとつの線上で結ばれた、まさに24年の時空を繋ぐ奇跡的なライブでしたね。ステージ上の5人のメンバー全員と、すべてのオーディエンスとが、まるで長年思い焦がれた織り姫と彦星のようで、その多幸感溢れた優しい雰囲気に胸を熱くしました。壮大な恋愛映画を観終えたようなこの感覚は、毎度のことながら、今回は通常の12倍か24倍をいっていたんじゃないかと。
常に前衛的であり続けながら、進化を止めない現在進行形の日本の誇るロック・バンド、BUCK-TICK。その音世界の進化にそぐった立体的な視覚効果を創り上げている照明、映像、特効、舞台セットなどを創り上げるクルーの存在も垣間見える、すべての技術をフル活用した魅せる最高のライブを若年層にも同世代にも観て欲しいです。日本の芸術はB-Tライブにありますよ。
次回、12年後はメンバー全員が還暦を迎えた後。ぜひ開催していただき、幾つになっても一緒にいかせていただきましょう。楽しみです。
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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