【音踊人14】下車したから見えた景色<超特急 LIVE TOUR 2016 Synchronism〜Shout & Body〜>山梨公演・感想(れこ)

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超特急史上最も動員数の多かったライブ、2015年末に行われた代々木第一体育館でのワンマンライブ以来、実に5ヶ月ぶりに超特急の現場に足を運んだ。超特急のファンを辞める下車宣言をしてからの約4ヶ月間は、現場どころかTVや雑誌などのメディアも全くチェックしておらず、彼らについてはたまにTwitterのTLに流れてくる情報を目にするくらいだった。

下車しておきながらなぜこのタイミングで現場に行くことにしたかと言うと、理由はたったひとつ「今の超特急をどうしても見ておきたい。見ておかなければいけない。」という衝動に駆られたからだ。

彼らから離れ、今はDa-iCEを中心にいろんなダンスボーカルグループを見るようにしている。その中でわたしは、ダンスボーカルグループというものが日本の音楽シーンからどうも軽視され過ぎているのではないかと感じるようになった。いろんなグループを見ている内に、それは何となく感じていた「違和感」からはっきりとした「危機感」に変わった。

ひとりのリスナーとして、ファンとして、この状況をどうにか出来ないだろうか。自然とそんな風に考えるようになった。そうした思いが芽生えたことで、ダンスボーカルグループの現状をもっと知る為に「今の超特急」を見る必要があると思ったのだ。

スケジュールや予算の都合上、今のツアーで参加出来るのが山梨公演しかないということで、前日に急遽チケットを探し見に行くことにした。

これから超特急に会う、という実感が会場に到着するまで全くなかった。だが会場に入って続々と集まって来る8号車(超特急ファンの名称)を見ていたら、5ヶ月前まで毎週のように感じていた「超特急の空気」が蘇って来た。

そして17時、いよいよライブが始まる。

1曲目「バッタマン」冒頭の「1、2、3、4〜」という掛け声の部分、推しであるカイカイの号車番号がコールされるタイミングで、自然と両腕を上げて思い切り「2」と叫ぶ自分がいた。5ヶ月もの間彼らのパフォーマンスを全く見ていなかったのに、コールもペンラ芸もちゃんと覚えていた。わたしはまだ、超特急とシンクロニズム出来る。そう思った瞬間、涙が止まらなくなった。

現場を重ねることで忘れていた気持ち。ただただ超特急が好きという、たったそれだけのことが見えなくなっていた5ヶ月前のわたし。だけどこうしてまた戻って来れた。それがうれしくて幸せで、ステージ上で輝く彼らに負けじと声を張り上げた。2曲目「Burn」が始まる頃には、涙は止まっていた。

時間の流れと共に戻ってきた感覚。下車以降の、わたしが知らない彼らと8号車の間に流れていた時間。それを交互に受け止めながら、いろんなことを考えた。

MCが冗長気味なのは相変わらずだなとか、「Rush Hour」で始まり「Drive on Week」で終わるメドレー最高だなとか、「Turn up」の間奏の部分はダンサーのフリースタイルにしたらもっとかっこいいんじゃないかとか、カイはMCでこんなに貪欲に前に前に出るようになったんだなとか、コーイチがまたリアコ殺しな発言連発してるなとか、その瞬間を楽しみながら同時に思考を巡らせていた。

身体と思考が完全に切り離された状態で、コールしながらペンライトをグルグルしていても、頭はすごく冷静にパフォーマンスを見ていて不思議な感覚だった。きっと下車という区切りをつけて、彼らと距離を置いたからこそ見えた景色だったんだろう。

今回1番うれしかったのは、「POLICEMEN」で大好きなカイの成長を見られたことだ。

わたしは以前から「カイの弱点は下半身だ」と言っていた。カイは踊っている時に下半身が安定せず、足元がふらつく傾向がある(ようにわたしには見えていた)。レギュラー番組「ふじびじスクール」の体力測定で反復横跳びをした際、最後の方になると左右の身体の動きに足がついけず、フラフラする場面があった。代々木の時期に雑誌のインタビューで「腰が弱い」と発言していたので、わたしが感じていた弱点はおそらくカイ本人も自覚があったのではないだろうか。

超特急の振付けは上半身の動きが多く、下半身を使うのはフォーメーション移動が主という傾向がある。「POLICEMEN」の振付けは超特急の中では比較的足回りの動きが激しい曲で、どうしてもカイの足の動きと音にズレがあるように思えた。

自身初のセンターという記念すべき曲で弱点がモロに露見してしまうという理由から、カイ推しにも関わらずわたしは「POLICEMEN」のパフォーマンスを見るのが好きではなかった。

前述のインタビューでは、腰の弱さを克服する為にトレーニングを始めたとも言っていた。その効果なのか、今年に入ってからカイは誰が見てもはっきりと分かるくらい身体つきに変化があった。前はスキニーを履くとムチッとしていた太ももが、一回りも二回りも細くなっている。

そうした努力が実を結んだのか、今回の「POLICEMEN」はこれまでと全然違った。「Kura☆Kura」終わりからのストンプで駆り立てられたワクワク感を引き受け、イントロ部分の華麗なステップで堂々と「弱点克服」を見せつけてくれた。推しの贔屓目だと言われても良い、あそこが今回1番の見どころだとわたしは断言出来る。

メンバーカラーに光る警棒を他のメンバーに手渡す時の自信に満ち溢れたニヒルな笑み。あれは心の底から「俺かっこいい」と信じて疑わない時の、スーパーかっこいいカイの顔だ。自分のことが大好きで自信満々なカイこそ、わたしが最も大好きなカイの姿である。

比較的初期の楽曲をたくさん披露したということもあるが、何となく「Shout&Body」は原点回帰からのアップデート的な位置付けのライブという印象を持った。

「POLICEMEN」でのカイの弱点克服もそうなのだが、デビュー当時からやって来た楽曲を「今の超特急がパフォーマンスするとこうなる」という、彼らの現在地を示すような内容だったのではないだろうか。

ツアーが始まった頃は自分が超特急の現場に行くのは代々木が最後だと思っていた。だけどこうして再び戻って来たことを、素直にうれしく思う。ただ今のわたしには、彼らが東京ドームを目指すのと同じように、自分の人生で成し遂げたいことがある。だからそれを果たすまでは、以前のように超特急を生活の中心に置くことは出来ない。

すごく楽しかったし、たくさんの感情をプレゼントしてもらった良いライブだった。この気持ちを糧に、今日からまたわたしは、彼らと違ったレールを走ることにする。同じレールじゃなくても、走り続けていればどこかでまた会えるはず。その時はまた、一緒にシンクロニズム出来たら良いなと思う。

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