【インタビュー】Versailles、再集結。「美しいマネキンに魂も入れるバンドでありたい」
■ 活動休止前にも増して“耽美”という言葉を大切にしていきたい
▲『The Greatest Hits 2007-2016』通常盤 |
TERU:インディーズ時代の「The Revenant Choir」ですね。最初のシングルと、アルバムに収録するときと、今回とで計3回レコーディングしてるんですよ。これだけ同じ曲を何度も録り直して新しく聴いてもらえることもなかなか無いので、過去の音源を持っている人には聴き比べてもらえると、いろいろと僕たちの歴史を感じてもらえて面白いんじゃないかなと思います。まぁ、アレンジはほぼ変わってないんですけど(笑)。
KAMIJO:僕も「The Revenant Choir」です。今回、結成時からずっとやりたかった歌い方ができたんですよね。バンドとしての空気の後押しもあり、やっと理想の歌声で歌えたので、特に“♪記憶の中の紅い血を〜”の日本語詞のところは注意して聴いてもらいたいです。
HIZAKI:僕は「Philia」かな。2011年に出したアルバム『Holy Grail』の収録曲で、当時メンバー全員の限界値まで……というか、魂を込めてプレイするのが難しいギリギリのところで作ったんですけど、今回もまだギリギリでした。
一同:ははは!(笑)
MASASHI:確かに改めてレコーディングしてみて、“俺、こんな難しい曲ライヴで普通に弾いてたんだ”って思う曲もあったけど、それが一番強かったのは「Philia」かもしれない。
── きっとイケる限界値が当時より伸びたんですよ!
HIZAKI:そうですね。楽曲に対して、1音に対しての心の籠め方というところでは、常に自分の限界値まで精神力を注ぎ込んで向かわなければいけない曲で、そこはいつまで経っても変わらない。
YUKI:ライヴでもウケが良かった曲ばかりを選んでいるし、それを全部新緑したんで新鮮ではありました。そういう意味で言うと、やっぱり新曲の2曲が一番新鮮で、特に1曲目の「Melodic Thorn〜美の暴力〜」は最初の段階からKAMIJOさんと二人でいろんなアイディアを出しながら骨組みを作っていたのが、すごく印象に残ってます。
MASASHI:「Melodic Thorn」がKAMIJOさん、「Chandelier」がHIZAKIくんの曲なんですけど、それぞれこれまでと変わらぬやり取りでやれたんで、すごくスムーズに進められましたね。
── 「Melodic Thorn」は新たな始まりを予感させ、「Chandelier」は共に夢を見ようという希望に溢れる、双方ともにVersailles節満点の疾走メタルチューンですが、ここでバンドが一番表現したかったものとは何だったんでしょう?
KAMIJO:耽美派のバンドであること。世界観もサウンド面も美しいだけじゃなく、鋭く尖っているようなところは大事にしました。なので特に何も悩むこともなく、Versaillesとして自分が今、一番聴かせたい部分を集約するような感覚で作っていきましたね。個人的には「Chandelier」で最初にHIZAKIくんが入れてくれたメロディから、「こっちのほうが上手いニュアンスが出せると思う」って、歌詞をつけながらどんどんブラッシュアップさせていくのが楽しかったです。
HIZAKI:曲作りやレコーディング自体はスンナリで、「Chandelier」とかホント2、3日でパパッと仕上げた感じなんですけど、一番気にしたのがバランス。メンバー間のバランスや押し引きも考えてフレーズづけをできたところは、この3年半で成長したところかなと思います。
── 確かに、耽美派の極みとも言える激しさと美しさが研ぎ澄まされた2曲ですが、非常に聴きやすくもあったんですよね。
HIZAKI:今まで、ミックスとかで「もっとここレベル上げてください」とかっていうやり取りが、すごく多かったんですよ。でも、この新曲2曲に関しては、ほぼ無くて。コッチのやりたいイメージやバランスがハッキリしていると、レコーディングしてくれる人、音を作ってくれる人にも意図が伝わりやすいんでしょうし、ということはリスナーにも伝わりやすいんじゃないかなと思いましたね。
TERU:個人的に印象深いことで言えば、「Melodic Thorn」のギターソロでKAMIJOさんからダメ出しを食らいました(笑)。ちょっと僕が間違った解釈で弾いていたみたいで、ダメ出しされるなんてすごく珍しいことだから、それでハッ!と目が覚めて。期間を空けてもう一回練り直したら、すぐにOKが貰えました!
── でも最終的に、ここまで期待通りの新曲を持ってきてくださるなんて、ファンは嬉しいですよ。加えて初回限定盤には結成から活動休止、そして完全復活に至るまでを各メンバーの個別インタビューで綴った70分のドキュンタリームービーも収録とのことで。バンドとしては一種スルーしたいそんなところまで明かしてしまうのかと驚きました。
▲『The Greatest Hits 2007-2016』初回限定盤 |
MASASHI:僕らの言葉も全く嘘偽りナシです。インタビュアーの方がホントにズケズケと聞いてくるから、「え!? これ言わなきゃいけないんですよね」みたいな感じだったんですけど(笑)、もう、全部吐き出してしまえ!って。
── そのドキュメンタリーについているのが“信じる力を信じて”というタイトルで、「Chandelier」の歌詞にもある一節ですが、すごく良い言葉ですよね。
KAMIJO:ありがとうございます。以前『Holy Grail』を作っていたときに、HIZAKIくんが“愛”というものの定義をすごく考えていて。彼との会話で出てきた「愛しているから信じるんじゃなく、信じているから愛っていう感情があるんだ」っていう言葉がすごく印象的で、僕の中に強く残っていたんです。だから活動休止のライヴでも「待っていてくれとは言いません。でも、信じていてください」と言ったんだろうし、きっとみんなが信じていてくれたから、こうやってVersaillesとして再び集まれたんだと思うんですよ。
── つまり“信じる力を信じる”というのは、究極の愛ということ?
KAMIJO:どうなんですか?
HIZAKI:いやぁ、いいこと言いますねぇ!
── 先程も“愛”というワードを出されていましたが、どうやらHIZAKIさんは愛というものに大変深い考えをお持ちの方のようですね。
HIZAKI:まぁ……ね。愛に生きてますから。はい(笑)。
── さすがです。作り込まれた世界観で作り込まれた物語を綴る耽美派ならば、ある意味完璧な“綺麗事”であっても許されるのに、そこまで人間の感情の生々しいところまで踏み込んでいくのが素敵ですね。
KAMIJO:確かに“綺麗事”という言葉を僕もさっき使いましたけど、良い意味で使えば“綺麗事”って“理想論”ともイコールになると思うんですね。みんな、どこかで諦めてしまいがちなその理想論に向かって、真っ直ぐ向き合えるのがVersaillesだし、そこがこのバンドの一番胸を張れる部分なんですよ。
HIZAKI:そもそも綺麗な聴きやすい曲、大人しい曲をやっているだけでは、どんなに派手な衣装を着ていても、綺麗には見えないんですよね。もっと激しい部分や陰の部分も見せることで、より光を際立たせることができるわけで。やっぱり上辺だけじゃなく、中身がしっかりした人間というのが一番綺麗に見えるので、そこは真の耽美派として大事にしたいんです。
── なるほど。
KAMIJO:普通の耽美派は“美しさ”が全てなんですよ。道徳とか倫理とかも度外視して、美しければ後はどうでもいい。例えば、人間よりもマネキンのほうが美しければ、マネキンを愛すというのも耽美派の考え方だと思いますが、Versaillesはそのマネキンに魂を入れるような存在でありたいんです。おかげさまで今ではVersaillesのフォロワーのようなバンドも登場したりもしているので、僕らはその本流として中身の濃いものをファンの皆さんに届けて、もっといろんなミュージシャンに影響を与えていきたい。そんな気持ちが強いので、活動休止前にも増して“耽美”という言葉を大切にしていきたいんです。
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