“フジロックが育てたアーティスト”に訊く【検証】フジロックが20年愛され続ける理由 ~clammbon編~
「“フジロックが育てたアーティスト”に訊く」第2回のゲストは、クラムボンのミトだ。もしかしたらそういうイメージはないかもしれないが、クラムボンは2003年の初出演以来、ほぼ2年に1度の割合でフジロックに登場、去年まで計6回の出演回数を誇る立派な「常連組」である。
前回のROVOと同年代の1995年の結成で、1997年スタートのフジロックともほぼ同期。だが当初からフジの理念と自らの方向性に共通点を感じ、出演を熱望していたROVOに対して、ミトは客としてフジロックに参加していたものの、自分のバンドで出ることはまったく考えていなかったという。それがある時期を境に両者の方向性はシンクロするようになった。そしてフジロックに出演することで、クラムボンはステージ・パフォーマーとして大きく成長することになったのだった。
なお残念ながら今年はクラムボンとしての出演はないが、ヴォーカルの原田郁子がソロで出演予定。ミトはスクエアプッシャーのライヴのためだけに当日券を買って乗り込むかどうか考え中だという。クラムボンは「沈黙中」だが、新曲作りなどで動いている様子。
取材・文=小野島大
◆ ◆ ◆
■ 豊洲の時は、「最初から最後まで観ないともったいない」みたいな
■ フェスの楽しみ方がまだ全然わかっていなかった
──クラムボンの結成は1995年。第一回フジロックがその翌々年。クラムボンとフジロックは、いわばほぼ同期ということになります。フジロックが始まった時のことは覚えてますか。
ミト:普通にお客として行ってましたよ。僕、場内駐車場で寒くて震えてましたから。
──あ、台風で2日目が中止になった第一回に行かれたんですね。天神山スキー場の。
ミト:うん、友だち何人かでクルマ借りて行ったんですよ。早めには着いてたんですけど、とにかく雨と風が凄くて、ほぼほぼ観ないで(クルマの中にいて)、エイフェックス(・ツイン)だけ観て帰ったという(笑)。
──当然、今のフジロックに来る人みたいな万全の雨対策などしてるわけもなく……。
ミト:もう全然!とっても軽装で(笑)。だってそんな情報なかったじゃないですか、当時。
──みんなそうでしたよね。Tシャツ短パンサンダルに毛の生えたような格好で。
ミト:あれはもう地獄絵図ですよ。みんな靴をビニール袋で覆って、シェルターみたいなところでガタガタに震えてるという。せっかく来たのにクルマから出たくなくなるほど、雨と風が凄かった。
──当時はおいくつだったんですか。
ミト:22、23歳かな。フジは単なる野外イベントじゃなく、野外レイヴ的なイメージもありましたけど、私はそういう野外レイヴ的なものは初体験だったんですよ。楽しみにしてたのに(苦笑して溜息)。
──エイフェックスの、着ぐるみが一杯踊ってるステージだけ観て帰ったんですね(笑)。
ミト:しかも本人は小屋の中にいて見えないし(苦笑)、なんなんだよー、みたいな(笑)。いろいろ萎えて帰った記憶があります。
──会場内のオペレーションも混乱してましたね。
ミト:ねえ。僕らと同じ年ぐらいの若い人たちがセキュリティで仕切ってましたけど、もうめちゃくちゃで……。
──翌日は中止になっちゃうし。
ミト:そう。その夜は山中湖に泊まって、さんざんだったけど明日は晴れるっていうから楽しみにしてたら、中止だって聞いてがっくり。スクエアプッシャー観れなかったよ〜って。
──あの時は、もう日本にロック・フェスが根付くなんて不可能だろうってみんな思ったと思いますよ。今のフジロックの隆盛を思うとウソみたいですけど。
ミト:そうですよね〜確かに。
──2回目は東京の豊洲で開催されました。
ミト:2日とも行きました。でも当時はフェスを全日楽しめるような体力がなかったというか……途中から観る、みたいな発想がなかった。とにかくお金払ってるんだから最初から最後まで観ないともったいない、みたいな。フェスの楽しみ方がまだ全然わかってない。行ったら全部観なきゃいけないみたいな使命感があって。それで2日目の夕方ぐらいになって体力が尽きて、もうダメだ、と……
──確か2日とも晴れてすごく暑かったんですよね。
ミト:暑かったすよ〜 ホースで(客席に)水蒔いてましたけど、全然涼しくならない(笑)。
──じゃあ最初の2年は普通に客として行ってたわけですね。
ミト:そうです。苗場になってから全然行ってなくて、2001年だったと思うんですけど、ニュー・オーダーが2日目に出た年。あれはクルマで1日だけ行きました。そのころから、好きなものを適当に観て帰る、という楽しみ方になってきて。
──ガチガチに決め込んでスケジュール通りに観るんじゃなく、ゆるく楽しむ。
ミト:そうそう。苗場になってご飯も美味しいし、いいなあ楽しいなあと。
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