【ライブレポート】アンドレア・ボチェッリ、たわやかで力強い歌声
クラシックの枠にとらわれず、様々なジャンルやスタイルを探求し世界を魅了し続けるテノール歌手、アンドレア・ボチェッリが4月28日、東京国際フォーラムで公演を開いた。2015年秋に映画音楽の名曲を集めた新作『Cinema(シネマ~永遠の愛の物語)』をリリースし、世界ツアーを行なっている中、唯一のプレミアな日本公演だった。
◆アンドレア・ボチェッリ画像
6年ぶりとなる日本での公演は、カルロ・ベルニーニを指揮に、東京ニューシティ管弦楽団の演奏のもと、2部構成で開かれた。1部では、『アンドレア・シェニエ』や『ラ・ボエーム』『椿姫』などのオペラ・コレクションをパフォーマンスし、世界最高峰のテノール歌手の1人としての本領を発揮。たわやかで力強い歌声が、会場に響き渡り、オーディエンスの心を揺さぶった。
2部では、新作『Cinema』がフィーチャーされ、『ゴッドファーザー』の愛のテーマ、『オペラ座の怪人』の「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』の「ポル・ウナ・カベサ」などの映画音楽を、ときに切なく、ときに優しく、壮大に歌い上げ、映画史に残る名曲に優美で情熱的な息吹をもたらした。
そしてアンコールでは、ボチェッリのパフォーマンスの逸品「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」「誰も寝てはならぬ」が披露され、クライマックスを迎えた中、2時間にわたる至福のときが幕を閉じた。いつまでも余韻にひたっていられるような珠玉のパフォーマンスに、ボチェッリへの称賛の声と拍手は鳴りやまず、オーディエンスにも彼にも笑みが絶えることはなかった。
この夜の公演には、ソプラノ歌手のマリア・カツァラヴァ、フルート奏者のアンドレア・グリミネッリ、そしてオーストラリア出身の歌姫サラ・オレインがゲスト出演し、ボチェッリの歌声にさらなる華を添えた。オレインは、『Cinema』に収録される「ドント・クライ・フォー・ミー・アルゼンチーナ」でボチェッリとデュエットしているが、コンサートでの共演はこれが初めてだった。
<CINEMA WORLD TOUR>日本公演のセットリストは以下の通り。
第1部
『カルメン』より第一幕への前奏曲(ビゼー作曲)
歌劇『アフリカの女』より「おお、パラダイス」(マイアベーア作曲)
歌劇『リゴレット』より「女心の歌」(ヴェルディ作曲)
歌劇『シチリア島の夕べの祈り』より「ボレロ」(ヴェルディ作曲)
歌劇『アンドレア・シェニエ』より「五月の晴れた日のように」(ジョルダーノ作曲)
歌劇『アンドレア・シェニエ』より「貴女のそばでは、僕の悩める魂も」(ジョルダーノ作曲)
歌劇『ナブッコ』より「行け、わが思いよ、金色の翼に乗って」(ヴェルディ作曲)
歌劇『ラ・ボエーム』より「冷たい手を」(プッチーニ作曲)
歌劇『ラ・ボエーム』より「愛らしい乙女よ」(プッチーニ作曲)
歌劇『椿姫』より「乾杯の歌」(ヴェルディ作曲)
第2部
「アマルコルド」(ロータ作曲)
映画『ウェスト・サイド・ストーリー』より「マリア」(バーンスタイン作曲)
映画『ゴッドファーザー』より「愛のテーマ」(ロータ作曲)
映画『ミッション』より「ガブリエルのオーボエ」(モリコーネ作曲)
「魅惑の瞳」(デンツァ作曲)
映画『オペラ座の怪人』より「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」(ロイド・ウェバー作曲)
映画『ニューオーリンズの美女』より「ビー・マイ・ラヴ」(ブロドスキー作曲)
「ニュー・シネマ・パラダイス」(モリコーネ作曲)
映画『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』より「ポル・ウナ・カベサ」(カルデル作曲)
映画『トップ・ハット』より「チーク・トゥ・チーク」(バーリン作曲)
「大いなる世界」(サルトーリ作曲)
アンコール
映画『グラディエーター』より「ついに自由に」(ジマー作曲)
「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」(サルトーリ作曲)
歌劇『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」(プッチーニ)
これまでに世界で8,500万枚のレコードを売り上げてきたボチェッリの作品は、クラシック・チャートだけでなくポップ・チャートでも常に高位をマークしているが、最新アルバム『Cinema(シネマ ~永遠の愛の物語)』で新たな記録を樹立した。同作は、『Cieli di Toscana(トスカーナ)』(2001年)と並ぶ、彼にとって全英アルバム・チャート最高位となる3位に初登場。これで、全英チャートで10枚のアルバムがトップ10入りした史上初のクラシック・アーティストとなった。『Cinema(シネマ ~永遠の愛の物語)』は全米チャートでも10位をマークしている。
写真:小林廉
アンドレア・ボチェッリ『シネマ ~永遠の愛の物語 [デラックス・ツアー・エディション]』
SHM-CD+DVD UCCS-9044 5,000円(税込)
演奏者:アンドレア・ボチェッリ(テノール)
1.マリア ~『ウェスト・サイド・ストーリー』(1961米)
2.ララのテーマ ~『ドクトル・ジバゴ』(1965米)
3.ムーン・リバー ~『ティファニーで朝食を』(1961米)
4.デボラのテーマ ~『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『マレーナ』(1984米)duet with アリアナ・グランデ
5.ビー・マイ・ラヴ ~『ニューオーリンズの美女』(1950米)
6.ミュージック・オブ・ザ・ナイト ~『オペラ座の怪人』(1925米)
7.愛のテーマ ~『ゴッドファーザー』(1972米)
8.ポル・ウナ・カベサ ~『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992米)
9.ドント・クライ・フォー・ミー・アルゼンチーナ ~『エビータ』(1992米)duet with ニコール・シャージンガー
10.愛とは素晴らしいもの~『慕情』(1955米)
11.ミ・マンケライ ~『イル・ポスティーノ』(1994伊)
12.チーク・トゥ・チーク ~『トップ・ハット』(1935米)duet with ヴェロニカ・ベルティ
13.ライフ・イズ・ビューティフル ~『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997伊)
14.ある愛の詩 ~『ある愛の詩』(1970米)
15.オール・マン・リバー ~『ショーボート』(1951米)
16.ついに自由に ~『グラディエーター』(2000米)
[日本盤ボーナス・トラック]
17.ドント・クライ・フォー・ミー・アルゼンチーナ ~『エビータ』(1996米)duet with サラ・オレイン ボーナス・トラック
[デラックス・ツアー・エディション・ボーナス・トラック(未発表音源)]
18.もしも ~『ニュー・シネマ・パラダイス』 ボーナス・トラック
19.さよならの前に ~『ある愛の詩』 ボーナス・トラック
特典DVD
01.『PBS Cinema TV Special 』(約80分)
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