【インタビュー】Purple Stone、新曲に「狂気と正気、歌舞伎町の二面性が面白い」
■夕方に川原でトランペットを吹きながら
■“これヤバいな。カッコええな”と思ってた(笑)──風麻
──では「歌舞伎町バタフライ」のギターレコーディングはいかがでした?
GAK:まず、デモに忠実にコピーしつつ、そこに自分の色を入れるようにしました。あと、今回の制作中にアンプを替えたんですね。3年前くらいからずっと欲しかったフラクタルオーディオのAxe-FXⅡを、ついに導入したんです。それまでは別のアンプシミュレーターを使っていたんですけど、Axe-FXⅡはもう次元が違う。想像以上に良かったので、買って2日後くらいのレコーディングで使いました。詳しい使い方とかは分からない状態だったんですけどね(笑)。
▲風麻(B) |
GAK:エングルです。実はこの曲のギターは以前使っていたアンプシミュレーターで録り終えていたんですけど、Bメロ以外は全部録り直しました。Bメロだけ雰囲気を変えたかったので、前のテイクを活かすことにしたんです。
──かなりチューニングを下げているようですが、ギターがクリアに聴こえますね。
GAK:そう。ドロップBチューニングだけど埋もれない。そこに関してはかなり気を遣って、イコライザーとかも決め込みました。自分でもいい感じに仕上げられたんじゃないかなって思います。
風麻:ベースは勢いのみです。疾走感を出すことだけを意識して、音もブリッ!ゴリッ!としていればOKみたいな(笑)。この曲はメロディーがしっかりしているから、ベースは邪魔をしないことに徹したほうがいいなって。それに、ライブの時に余裕を持って弾けるというか、暴れながら弾ける曲にしたいというのもあって、シンプルにボトムを支えるベースにしました。
──ファットに支えるベースのカッコ良さに満ちています。では、続いてカップリングの「RIVER」(A-type収録)は?
風麻:もともと3年前くらいにGAKが作ったデモがあって、長い間放置されていたんです。もうボツなんじゃないかという感じだったんですけど、僕らは定期的にストック曲を漁り直すことがあって。そのときに、この曲カッコいいやん!って。メロディーやアレンジを直して、今の形にリビルドアップしました。もう、元の曲とは別モノと言っていいくらい変わったよね?
GAK:最初に作った時はシングルを意識したわけでもなくて、思いついたからとりあえず録っておいたという感じだったんです。ボツでもいいかなと思っていたんですけど、風麻君がいいメロディーを付けてくれたので、これはぜひアレンジしたいと。元々は自分が作った曲だけど、メロディーが違うから全く違う視線で見ることができて、原曲から大きく変わりましたね。3年前よりは自分の中の引き出しが増えたというのもあって、やりたかったことが今回、音として表現できたんじゃないかな。
風麻:3年前に聴いた時は、“サビのコード進行がロックな感じだけど、歌謡曲的なものがハマりそう”と思ったんです。でも、ラウドロックっぽいメロディーが乗っていたから、どうしてもその印象が拭えなかった。それを3年越しで開いてみたら、頭がリセットされた状態だったということもあって、これは絶対にいいメロディをのせることが出来ると思ったんです。古き良きメロディーみたいなものを付けたいと思いつつ、サビができたら他のパートもすぐにできました。あと、歌詞は僕が書いたんですけど。
Keiya:「歌舞伎町バタフライ」の作詞者と同じ人が書いたとは思えない(笑)。
風麻:あはは(笑)。Purple StoneはKeiya君の声を主体に集まったバンドなので、ロックなものが多かったけど、壮大なものも歌ってほしいという気持ちもあって。この曲は歌詞によってはすごく壮大になると思ったので、大きいテーマを書きたいって。どういうテーマにしようかなと考えた時に、僕は川の近くに住むことが多かったので、川をテーマに、高校生くらいの頃を思い出して書きました。
▲「歌舞伎町バタフライ」B-type |
風麻:川を流れる水って、石とか障害にぶつかっても止まらない。そのまま流れていくじゃないですか。それを人を受け入れることに喩えて書いています。ただ、高校生だった頃の心情を元にしているけど、当時はこういう歌詞は書けなかったと思うんです。高校生の頃の僕は人嫌いだったから。喧騒が嫌で川に逃げて、川原でトランペットを吹いたりしていたんです(笑)。
Keiya:そうなんや。完全に自分ひとりの世界やな(笑)。
風麻:いや。ちょうどその頃、“パンク+スカ”みたいなバンドが出て来ていて、トランペットが吹けたらカッコいいかなと思ったんだ(笑)。
Keiya:そっちか。それはカッコいいわ。
風麻:でしょ? 夕方に川原でトランペットを吹きながら、“これ、ヤバいな。カッコええな”と思ってた(笑)。ドレミファソラシドが吹けるようになったところでやめたけど(笑)。
GAK:その時の映像とかないの?
風麻:ない! あっても人には見せない(笑)。
Keiya:ははは。この曲の新しいデモを聴いた時に僕は、「シングルにしよう」と言ったんですよ。というのも、僕がひとつの曲に集中している時に、2人は他の作業を進めてくれていることがよくあるんですね。そういう中で、急にこの曲が歌詞付きで仕上がっていて。僕は水の音がすごく好きで、子供の頃は川べりに三角座りでじっとしているような子だったんですよ。だから、「RIVER」と言われた時に、これは俺のことだろうと(笑)。聴いた瞬間に歌いたい!と思ったんです。それも、歌詞が肯定的なものだったから、絶対に歌いたいと。自分の中ですごく思い入れの強い曲になって、歌のレコーディングが終わった時に淋しさすら感じました。
──ご自身と重なり合う部分も多かったわけですね。
Keiya:子供の頃はこの歌詞と同じように、嫌なことがあると川原に行って何時間もボーッと座っていたんです。夕方、家に帰る道すがらに近所から晩ご飯の匂いがしたりしていて。この曲はそういう情景が浮かんでくるんですよ。すごくノスタルジックな気持ちになって。歌っている時にほんまにグッと来て、これはヤバいと。最後のサビの“何処までも行こう river”という辺りだと思うけど、ちょっと泣いていたんじゃないかな(笑)。そのテイクがそのまま活かされています。「歌舞伎町バタフライ」の時に話したように、歌詞に合わせて細かいところまで考えるけど、そういうところを超えて自然と出てきたものは大事にしたいから。
GAK:ギターはサビ以外、ほぼ1コードで押し切るアレンジになっているんですよ。Purple Stoneではあまりないパターンだけど、僕はそういう武骨さを活かすアプローチが大好きなので。リンキンパークとかリンプビスキッズといったニューメタルにも憧れていて、そういうテイストを存分に表現できたんじゃないかなと思います。
風麻:ベースはこの曲も邪魔をしない、無駄なことをしない、というアプローチを採りました。要は、自分の基本的なスタイルですよね。シンプルなフレーズで、ボトムを支えることに徹しています。
──低い位置でうねっているベースが川っぽさを生んでいるという印象を受けました。
風麻:そう感じてもらえたならよかったです。そういうことは一切考えていなかったので(笑)。僕はベースに関して直情型なんですよ。曲を作ったり、歌詞を書いたりする時はしっかり考えるけど、ベースを弾く時はあまり考えない。
Keiya:良い音で鳴っていればいいみたいな?
風麻:そう。このルート弾きがこのグルーヴで、この音で鳴っていればいいって。フレーズにはあまりこだわらないです。
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