【インタビュー】ザ・チョッパーズ・レボリューション、三位一体による攻めの新作『3B』誕生

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▲ IKUO

■4年間一緒にやっている強みが出た
■最後の最後にデス・ヴォイスを入れたという(笑)

――ここまでの話からすると、それぞれの曲の3人の役割分担は、作曲者主導で決めているのでしょうか?

鳴瀬:そう。レコーディングといっても2人は家でやるから、どんなことをやってくるか分からないんだよ。だから、基本的に作曲者が3人の役割を決めている。たとえばIKUOの曲だったら、IKUOが1人で3本のベースを入れたデモテープを作って、それを聴いて自分のパートをコピーする。コピーするといっても速すぎて、ちゃんとできないんだけど(笑)。コピーした後、そこに自分の色を付けて弾く感じ。自分のパートがよっぽど意に沿わない時は変えて良いか聞くけど、ほとんどないね。そういう意味では、すごく面白いよ。デモの段階でどういう曲なのかは明確に分かりつつ、どういう仕上がりになるのかは分からないから。一緒にやるのとは、また違う楽しさがあるね。

IKUO:時間がなくて、曲の概要が分からない時もあって。そういう時は、とりあえずひたすら弾いておく…みたいな(笑)。それでも破綻せずに良い感じになって、このバンドはすごく面白いです。

――構築美と3人の化学反応の両方を活かせる、良いパターンといえますね。鳴瀬さんの軽妙なトークを活かした「Travels」は、どういう風に作ったのでしょう?

村田:鳴瀬さんは、この曲に入っているラップを、ライブのMCで必ず披露していたんです。それで、今回のアルバムを作っていく中で、あのラップを曲にしたいと思って。僕は高校生くらいの頃からタスカムのカセットテープMTRで、中村梅之助さんとか桂枝雀さんとかの落語に打ち込みのリズムとギターを入れて、“落語ラップ”みたいなものを作っていたんです。だから、「Travels」は、高校生の時にやっていたことをやっただけという感じです(笑)。

鳴瀬:この曲を作った時は、ビックリしたよ。タカから電話がかかってきて、ライブでやっているあの喋りを録ってくださいと言われてさ。例の「ヨーロッパから原っぱで…」みたいなヤツを3分くらい録って、送ってくださいと(笑)。どうしようと思ったけど、やり始めたらアッという間だった(笑)。

村田:すごく早くデータが来た(笑)。

――ということは、オケがない状態で喋ったのでしょうか?

鳴瀬:そう(笑)。でも、喋った俺じゃなくて、あの喋りをもとにして曲を作ったタカが凄いと思う(笑)。

――お二人とも凄いです(笑)。

村田:アハハ(笑)。鳴瀬さんの喋りに合わせてベースを弾いて、グルーブを合わせて、テンポを決めたんですよ。そうしたら、ちょうど110BPMくらいだったので、これくらいのテンポで、こういうグルーブでいけば良いなと思って。そこから作っていきました。あとは、僕が作るとR&Bっぽくなってしまうので、なにかフックを入れたいなと思って。よく海外の音源で、ジャズ・ミュージシャンとかがレジェンド的なハードロック・ギタリストと何かのきっかけで仲良くなってしまって、無理くりアルバムに参加してもらった…みたいな曲があるじゃないですか(笑)。そういう体で、IKUOさんに鬼のようなベースを入れてもらいました(笑)。

IKUO:あれは、すごく楽しかった(笑)。

村田:イメージ通りの……いやイメージ以上の過激さで、気に入っています(笑)。9曲目の「Fight!!!」は、アルバムの曲が出揃ってきた時に、足りないものを作ろうと思って作った曲です。ライブで盛り上がるものにしたくてベンチャーズっぽい感じを入れつつ、打ち込みとかは全くベンチャーズらしくない4つ打ちという形にして仕上げました。

IKUO:この曲は、僕はボトムに徹しています。

村田:そう。そういう曲が1曲もなかったことに気がついて。IKUOさんはスタイル的に、どうしてもギター的な立ち位置と特殊なテクニックというところになるけど、IKUOさんのロックなボトムは本当に素晴らしいので。それを味わってもらえる曲も欲しいなと思ったんです。そういう上に、鳴瀬さんにベンチャーズっぽさを入れて欲しいなと思っていたら、僕の予想を遥かに超えるベンチャーズ感を入れてくれました(笑)。2人とも、本当にさすがですよね。

鳴瀬:どうして欲しいかは、もうすぐに分かるからさ。4年間一緒にやっている強みが出たよな。最後に入っている「Land of Wild Guitars」もセルフカバーで、俺が’83年に出した『BASE METALS』の1曲目だった曲。俺は去年の夏前に自伝本を出したんだけど、その時は俺が昔徳間ジャパンから出したソロ・アルバム4枚が、まだCD化されていなかったんだ。その本が出た後に、タワレコからリマスターされてリリースになった。そういう流れがあったし、もともと俺がベース・アルバムを作る時は、ベースが何本か入るという構想が常にあったわけよ。それで、櫻井(哲夫)とツイン・ベースをやったり、3枚目の『BASE METALS』では日本で初のトリプル・ベースを、俺と櫻井と清水興でやったんだ。そのアルバムの1曲目なんだけど、この曲にはトラウマがあって。本当はその時にやっていたバンドのボーカルに歌ってもらおうと思っていたんだけど、歌う部分が少ないし、どうかなという話になって。それで、じゃあ自分で歌おうと思って、いろんなエフェクターを掛けた声で「ひゃあーっ!」とか言っていて(笑)。それで、いつかやり直したいなと思っていたし、あの曲はベースがいろいろ絡んだら面白いかなと思って、今回敢えて入れさせて頂くことにしました。

――他曲とテイストが違っていてアルバムの良いフックになっていますし、往年のファンの方には感涙モノですよね。

IKUO:そそそ、それ僕です! 一番最初に買った鳴瀬さんのアルバムが『BASE METALS』だったんですよ。だから、初めて鳴瀬さんに触れたのが、この曲だった。でも、今回聴いた時に、最初は「Land of Wild Guitars」だと気づかなかったんです。新曲だと思っていたから。

鳴瀬:似てるなぁ…みたいな?(笑)。

IKUO:そう(笑)。

村田:でも、それくらいサウンドが変わっているから。ちゃんと、ザ・チョッパーズ・レボリューション・バージョンに仕上げられて良かったなと思います。

鳴瀬:あと、サビの歌は、本当は全部3人で歌おうと思っていたんだ。この2人は歌も安心できるから。でも、サビ頭は俺1人で良いというから、1人で歌って、その後交代で歌ったんだ。

村田:この曲の後半に、鳴瀬さんのいろんな声が入っているじゃないですか。あのパートを録った日は、最初は3人いたんですけど、IKUOさんが打ち合わせがあって途中で抜けたんですよ。それで、鳴瀬さんと2人になったら、後半の叫び声とかを僕もやれと言われて(笑)。「いやぁ、ここまでのは僕は無理です」といって断ったんですけど、「タカ、最後に何か言えよ」と言われて。それで、「レボリューション!」と入れたんです。

鳴瀬:そうしたら、IKUOが一杯飲んで、ほろ酔いで帰ってきたんだよな(笑)。

村田:そう(笑)。「まだ、やってますぅ~?」とか言いながら(笑)。

鳴瀬:それで、ちょうど良いから最後にシメの一言を入れろといったら、最後の最後にデス・ヴォイスを入れたという(笑)。

村田:ああいうのをサッと出す辺り、さすがはプロだなと思いました(笑)。

――IKUOさんの奥深さが出ましたね(笑)。

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