【インタビュー】TSUKEMEN、「400本のライブ経験が違う世界を見せてくれた」

■インストだからこその良さを生かしつつ
■歌の良さにも匹敵、それ以上になれるように

――アルバム『TSUKEMEN CINEMAS』では、今までの作品にも収録した映画音楽を改めて新録していますが、まさに違う味が楽しめる作品になっていますね。

TAIRIKU：これが生音の良いところなんですが、毎回演奏が違うんです。クラシックの巨匠も、バッハの同じ曲を若い頃、中堅時代、老いた時に三回録ったりしているんですね。まったく同じ曲で同じアレンジでも明らかに違いが出る。そういう意味で、同じ曲を演奏しても、今の僕たちの良さが出せるということで再録して、それプラス新しい曲も入れました。

KENTA：ポップスだったら、テンポ80って決めたら、ずっと80のまま。僕らって、ひとつの音の一個一個を揺らすことができるんです。だから時代と共にすべてのパーツが変化しちゃう。それが自分たちが弾いていても楽しいところ。昔の方が若いアグレッシヴさがあったのかもしれないけど、時を経ると良くなったところのほうが絶対に多いし、それを自分たちが感じたいからもう一回録音するというのもあって。その違いを聴き分けてほしいとまでは言いませんが、感じることができるようなリスナーも増やしたいんです。


――まさに味の違いを嗅ぎ分けるような。

KENTA：うん、そうですね。「あの時のこの人のフレーズがいいよね」とか、聴き分けられるようになったら、いろんな音楽を聴くのが楽しくなると思うんですよ。もっと聴きたいと思うようになるだろうし、音楽を聴く人が増えると思うんですよね。だから、同じ楽曲を演奏していても、何か気づいてもらえるようなことを提示し続けられたらいいなと。

――言葉がある音楽もいいですけど、時に、言葉がないからこそ伝わるということもあると思うんです。TSUKEMENの音楽は、音だけでも雄弁だなぁと感じます。

SUGURU：歌詞があると、歌っているその人が直で入ってきてしまうから、歌詞がない方がいいと感じることもありますよね。僕らがやっているのは、自分たちの個性も出しているんですけど、聴いてくださる方にある程度の隙間を与えているかなと思います。いろいろ想像して、聴いているその人が主役になれる。そういう意味では体にも心にも優しい。受け身じゃなく、自分から入ってきてもらえるようになると「してやったり」感があります(笑)。歌を唄う方は歌詞で表現しますけど、僕らは音で、音符で表現してますからね。そこらへんのアプローチの仕方の違いはありますね。

TAIRIKU：僕は逆に、ある意味、歌詞に勝てないと思っている部分もあって。歌詞が心に入って、シンクロした時の強さというのは、「歌詞ってすごいな。かなわないな」って思っているところでもあって。だからこそすごいメロディで対抗しようとも思っているんです。

KENTA：歌詞はギュッとつかむのには強いよね。

SUGURU：そう。直接的だから。

TAIRIKU：もしかしたら不可能かもしれないけど、その言葉を超えられるインパクトのあるものができるんじゃないかと思いながら作曲をしています。それだけ自分も言葉のある音楽……歌手の方のコンサートやオペラで、声が強いというのも知っていますから。僕個人としてはそこを目指してやっているところもあります。インストだからこその良さを生かしつつ、歌の良さにも匹敵、それ以上になれるように欲張りな気持ちも持ちながら。

KENTA：言葉は時に押し付けになってしまうことがあるけど、音って、そういう押し付けはないですから。誰でもすぐに入れるし、普遍的なものなんですよね。その分、心にも優しい。


――ただ、TSUKEMENの場合は、「癒し系」ともまた違うと思うんですよ。

SUGURU：そうなんですよ(笑)。僕がよく行ってる歯医者さんでは、僕が行くとTSUKEMENを流してくれるんです。うるさいんですよね(笑)。主張が強いっていうか。イージーリスニングとは一線を画している。

――歌詞はないけど、言いたいことがある！っていう音ですよね。

SUGURU：そうそう。歯医者には不向きです(笑)。

TAIRIKU：僕も昔、行きつけのバーで流してくれた時、「うるせぇな」って思いましたよ。必然的に一枚を聴き終わったあとは、ノラ・ジョーンズに移行していきました(笑)。

――次回作もそういう思いの強いオリジナル曲が中心になりそうですね。

TAIRIKU：はい。また暑苦しいやつを(笑)。

SUGURU：ただ、眠る前に、「今日は全部デトックスしたい」っていう時にぴったりな曲も書いてみたいですね。

TAIRIKU：歯医者でも流せるような？(笑)

SUGURU：うん。

――3月18日からツアーも始まっていますが。

SUGURU：ツアーはまた楽しみですね。TAIRIKUとKENTAはソロプロジェクトを3月の頭にやってたんですよ。それを経てのツアーなので。今年最初のTSUKEMENのライヴでは、久しぶりに家に帰ってきて二人も楽しんでいたけど、これからソロ活動とかで蓄えてきた何かがにじみ出て、新しい化学変化がおきて楽しいのかなと。

TAIRIKU：家（TSUKEMEN）に集合した時に、個々でも強くなっている分、三人になった時に爆発力が増せるように、今、いろんなことをやり始めている真っ最中なんです。

KENTA：個人的には、去年までというか、しばらく一所懸命っていうことがデカくて、一所懸命やってたんですよ。その分、苦悩も強くなるんです。でも、今年は楽しみたいなと思っています。もちろん一所懸命やるんですけど、気張りすぎずに、呼吸をするような感じで楽しみたいなと思っています。疲れると良くないんですよ。普通に笑えなくなったら一緒にいるのもキツくなっていきますからね。それって音にも現れるし、空気感にも出てしまうので。

SUGURU：ツアーもやりつつ、新作の準備もしているので、新たに進化していくという意味では、オリジナル曲にも三人それぞれの個性があるので、もっと発展性を持って、いろんな角度の曲をみんなで生み出したいと思っています。それを持って、さらにいいライヴをしていきたいです。楽しみにしていてください。

取材・文●大橋美貴子




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