【ライブレポート】the GazettE、代々木第一を染め上げた<漆黒>。「そんなオマエらを愛してるよ。そして…」
2016年2月28日。国立代々木競技場第一体育館。<LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC FINAL-漆黒->と名付けられたその日のライヴは、2015年9月5日の羽生市産業文化ホールからスタートした<the GazettE LIVE TOUR 15 DOGMATIC -UN->、<the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC -DUE->という2015年から2016年を又にかけた大規模なツアーのファイナル公演であったのと同時に、【漆黒】と【教義】を掲げた大きなプロジェクトの1つの締めくくりでもあった(※この公演の終演後に新たに国内スタンディングツアーが発表された)。
◆the GazettE 画像
この大きなプロジェクトの始まりを告げたのは2015年3月10日の日本武道館。全員が軍服をモチーフとした黒の衣装を纏い、中央に13段の階段を象徴的に置いたコンセプチュアルなステージは、明らかに【始まり】を感じさせるものだったのだ。
30分押しで始まったステージは、メッセージ性の強い映像と教義を思わす音像が支配するエキセントリックなオープニングで、オーディエンスを【漆黒】の世界へと誘った。
真っ黒な空にゆっくりと流れる白い雲。視覚を覆うかのような不気味な演出の中、「DOGMA」の導入が流れ始めると、オーディエンスはメインステージにメンバーの姿を探した。そして、「DOGMA」のイントロに差し掛かったその瞬間、メインステージには戒、会場の前方と後方4ヵ所に設けられたサブステージに、RUKI、葵、麗、REITAが姿を現したのである。突然客席の中にそびえ立つかのようにせり上がったRUKI、葵、麗、REITAの姿は想像以上にオーディエンスに近い距離であったこともあり、まったく予期していなかった意表を突かれたそのオープニングに、オーディエンスは半狂乱の声を上げた。メインステージでは戒を乗せたドラム台も高くそびえ立ち、集まった信者たちを大きく包み込んだ。サブステージを使ったのは実にこの瞬間だけ。この一瞬のために設けられた演出へのこだわりはさすがである。
ゆっくりと扉を開くように「DOGMA」を届けると、メインステージに戻った5人は2曲目に置かれた「RAGE」へと繋げた。低音をザクザクと刻む竿隊の音像と畳み掛けられるドラム。当たり前に進んでいかないテンポ感。お経のように響く歌詞。メロウに広がるサビの景色。彼らが示す漆黒の世界に染め上げられていくのを肌で感じた時間でもあった。
「代々木! かかってこい!」
RUKIは色濃く塗り潰されたその曲の中で叫んだ。作り込まれた世界観をしっかりと保ちながらも、生っぽさを感じさせる勢いは、<the GazettE LIVE TOUR 15 DOGMATIC -UN->のときには無かった景色と言ってもいいだろう。彼らは43本目の集大成の場で、ライヴとしての“DOGMA”を完成させたと感じた。間髪入れずに届けられた「DAWN」で歌われたのは、この教義の始まりであった2015年3月10日の日本武道館の景色。オーディエンスは彼らの教義に激しく頭を振って応えた。ループするギターフレーズに合わせ、客席からクラップが沸き上がっていたことにも驚いた。これもまた<the GazettE LIVE TOUR 15 DOGMATIC -UN->の始まりには無かった景色である。コンセプチュアルなアルバムであっただけに、それをライヴに落とし込むのが難しいと語っていたツアー初期の彼らだったが、このツアーを通し、見事なまでにその景色を変化させたのだ。
「SLUDGY CULT」「VENOMOUS SPIDER’S WEB」で、激しく拳を上げさせ、頭を振らせた勢いも素晴しかったが、彼らならではのライヴの個性と素晴しさを感じたのは6曲目の「BIZARRE」からの流れだ。麗のタッピング奏法のギターが印象的なこの曲から、彼らはしばしライヴを“静”へと切り換えたのだ。刹那的な空気を漂わせる「DERACINE」、悲壮感が漂うドラマチックな「GRUDGE」、ドラムソロから繋がれ、ギターがウネリを上げ、感情を音に変え描き上げていった「GODDESS」、人間の闇の部分を感じさせる「WASTELAND」。決して激しくないわけではないこのブロックだったが、客席はピタリと動きを止め、この時間に入り込んだ。食い入るようにステージを見つめ、彼らの音と唄をただただ浴び、そして聴き入った。目に見える盛り上がりとは違う、身体の奥、魂へと音を送り込み、全身で音を感じているかのようなその光景は、the GazettEというバンドの軸となる部分を感じさせる時間だった。
彼らが、目に見えた盛り上がりだけを考えた音源制作をし、そこだけを重視したライヴを作っていく表面的なバンドであれば、確実にこのブロックは設けていなかったであろう。例え設けていたとしても、2曲ほどに止めていたはず。しかし、彼らは恐れることなく、5曲というかなりな範囲をしめる時間を中盤に差し掛かる、いわばライヴの流れの中で1番盛り上げるべき場所に迷うこと無く置いていたのだ。私はここに、the GazettEというバンドの本質とプライドを見た気がした。
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