【インタビュー】若井望、浜田麻里とのコラボレーションとDESTINIAの未来像を語る

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■奇跡的に実現した一夜限りのライヴが
■ついに映像作品としてリリースが決定


──そして、ついにその当日の模様を収めたライヴ映像作品『A Live for a Scream~One Night Only Requiem』がリリースされることになりました。本作に触れれば、会場に来られなかった人も、あの記念すべき一夜を疑似体験できますね。

「今、映像編集を絶賛進めていますが、実はライヴ映像のリリース予定も決めていない中で、映像班が『(若井がライヴをやるのであれば)撮りたい!』ということで入ってくれていたんですよ。まさに心意気ですよね。とてもいい画を撮ってくれたので、その臨場感は相当伝わるものになると思いますよ。本当によい感じですので、期待していてください!」

──あのライヴが行われた時点では、参加アーティスト個々の契約上の問題などもありますし、むしろ映像作品の販売は難しいだろうと思われていましたよね。

「そうですね。この冬になって、やっと動きがあった話だったりするんですよ。いろんな壁もあり、もう二度とできるものではないので、来られなかった方に映像で伝えられることになってよかったです。『また観たい!』という声にも、ステージで応えることは難しいと思うので、そういう人にもう一度堪能していただけるという意味でも、この映像を提供できることになって、本当によかったです。リリースはこの春頃を予定しています」

──ただ、映像作品がリリースされるとなると、それに伴ってライヴもやって欲しいという声がますます寄せられるでしょうね。実際の映像に触れれば、さらに昂揚感も増すでしょうから。

「今後のDESTINIAとしてのライヴに関しては、完全に未定です。あの日のライヴが終わって以降は、以前からお話をいただいていた浜田麻里さんのアルバム制作に本格的に携わっていましたし、そして今はこのライヴ映像の編集も進めなければならない。そろそろ、自分の次のアルバムに手をかけていかないと出遅れてしまうので……」

──FacebookやYouTubeを見ていると、海外からもリクエストが様々に寄せられている印象がありますね。インターナショナルな展開にも注目が集まるところだと思います。

「実際に『Requiem for a Scream』がリリースされた台湾以外にも、海外からの反響は少なくないですね。かなりメールもいただきますし。実はロブ(・ロック)からも、もう少しきちんとした形で、海外で販売するルートを作ったほうがいいということを、直接アドバイスをもらったりしているんですよ。満を持して、そこに向かうべきタイミングになってきたのかなとは、日々痛感しています」

■浜田麻里の新作『Mission』で授けられた
■予想だにしなかった崇高な“使命”


──去年は『Anecdote of the Queens』の制作と並行して、浜田麻里さんの『Mission』に向けた曲作りやレコーディング作業なども、とても大変だったのではないかと思いますが。

「そうですね。でも、それこそ“使命(Mission)”ですから(笑)」

──今回、特に驚かされたのは、トータル・サウンド・ディレクションまで務めていることなんですよね。前作『Legenda』に引き続いて楽曲提供の依頼があった時点では、そこまでの話ではなかったのでしょう?

「ええ。だから当初は、いつもの通りに楽曲提供をするつもりで、曲作りをしていたんですよ。その後、Nozomu Wakai’s DESTINIAとしてのライヴが終わって、他に追加する曲の作業を進めているときに、浜田さんのスケジュールの兼ね合いもあって、レコーディングの中で、『若井に一部の作業を預けてみるか』ということになったんですよ。そこからですね。だから、どちらかというと後半戦から本格的に参加して、結果としてサウンド・ディレクションのお手伝いをすることになったんですね」


──その話を持ちかけられたときは、どんな気持ちでした? 浜田麻里という稀代のシンガーの作品でもありますし、演奏陣も豪華な顔触ればかりですよね。

「衝撃でしたね。プレッシャーは当然大きくありました。だからこそ、自分ができる最大のことは何なのか、そこをよく考えましたね。基本的には浜田さんとやりとりしながらジャッジをするのですが、一番大切になるのは、やはり楽曲や歌としてどうなのかということです。確かに錚々たるミュージシャンが参加していますし、個性を出すべき部分もあるのですが、たとえ誰が弾いていたとしても、すべては作品ありきですから。そこは浜田さんも同じように楽曲中心で考えていらしたので、同じベクトルで進めていくことができました」

──彼女の場合、どの曲を誰に演奏してもらうのか、各プレイヤーの個性はすでに織り込み済みで作業しているわけですね。

「まさにそうです。本当の意味でのプロばかりですからね」

――作曲者として若井望がクレジットされた楽曲のうち、オープニング・トラック「Sparks」は、このアルバムの核と言ってもいい存在になっていますよね。

「浜田さんからは、基本的に今までやっていないような、常にどこか革新的なものを求められるわけですが、楽曲としてはハードでありキャッチーな要素があり、さらに驚きがあるものをということですよね。今回はさらに演者側にもよりやり甲斐が感じられるものというか、それぞれの強みを活かせるものといった要望もあったんですよ。その意味ではハードルが高かったんですが、「Sparks」は自分にとっても挑戦的でしたし、技術的にも音楽的にも、もはや浜田さんの作品でしかあり得ない楽曲に仕上がったと思います」

──随所で言えることですが、「Sparks」の間奏を聴いたときには、あまりの凄さに笑いがこみ上げるほどでしたよ。その話を麻里さんにしたところ、「でも、あの曲も、最初はもっと難しかったんですよ。だから、歌ものにするために、あそこまで簡単にしたんです……簡単にはなっていないんだけど(笑)」とおっしゃってましたよ(笑)。

「そうですね(笑)。随所にもっと細かなキメやブレイクがありましたね。実はそういうところにも、浜田さん自身は相当に注力していますし、さらにアイディアを織り込んでくるんですよ。結果として『デモより簡単にはなった』と言っていますけど、トータルな部分ではさほど変わらないと思いますよ(笑)、拍子がいくらかシンプルになったぐらいで。だから、驚愕の歌唱力に対して、相応にプログレッシヴな部分を盛り込むと、自然にこうなったということですよ(笑)。でも、結果、一つの楽曲としてフィットするというのは、まさに超人的な要素があってのことだと感じますね」

――「Rin」も素晴らしいですね。アルバム中盤で強烈な求心力を持つ楽曲だと思いますよ。

「鍵盤やストリングスをジェフ・ボヴァが手がけていますが、絶妙でしたね。坂本龍一さんともやったりしている方なんですけど、私がデモで作ったラインに合わせてアレンジしてあって、音質もよかったんですね。だから、LAでミックスをしているときも、ストリングス・アレンジをちょっと大きめに使いたいねっていう話になって。マイケル・ランドゥも特に最後のオブリガートが浜田さんの歌と非常に上手く絡んでいて。そういった要素が加わることで、楽曲が新たな力を得た気がします」

――今回は国内のみならず、LAで行われたミックスにも参加しましたよね。今までとは違った現場ではあったとはいえ、プロデューサー/ディレクターとしてやるべき仕事は、過去に経験してきたものと基本的には変わらないように思うんです。

「いやいや、作業そのものは変わらないとしても、初めて経験することもありますからね。たとえば……これはミックスではないですが、LAで急にギターのレコーディングをすることになったんです。「Tears Of Asyura」は、元々、マイケル・ランドゥが弾いたベーシックがあったんです。ところが、それとはまた違うヘヴィなアプローチのプレイが欲しいという提案が、浜田さんからあったんですよ。そこで私が弾くことにはなったんですが、アレンジも決まっていなかったですし、何しろ自分のギターもアンプも持っていってはいなかったので、急遽、現地で段取りをして録って。環境も何もかもが違う状況ですよ(笑)」

──麻里さんも「ここは何か違うギターが欲しいな。そうだ、(ここにいる)若井くんが弾けばいいじゃないと思ったんです」と話してましたが、そこに信頼感の強さを見出せますよね。当初はミックスのベーシックが決まる3日間のみの同行予定だったにもかかわらず、結局、最終日まで立ち会うことになったそうですし。

「そうなりましたね。まずは3日目で終わりきらなかったのがあって、そこで滞在が1日延びたんですよ。実は私はその後にニューヨークで予定が入っていたんですが、新たにギターをレコーディングしたこともあって、それをミックスすることも考えると、そのままLAいたほうがということになり、結局、最後まで携わることになったという流れですね。いずれにしても、本当にありがたいことです。機会をいただけるだけでも感謝ですし、これからもまさに“音”返しをしなくてはなりませんね」

■期待されるNozomu Wakai’s DESTINIAの新作は
■ロブ・ロックの参加で制作もスタート!


――2015年はDESTINIAと浜田麻里という、二つの大きな活動が軸になりました。

「総括するとそうなりますね。Fukiさん、榊原さんに始まり、最終的には浜田麻里さんですから、女性ヴォーカル尽くし……まさに“Anecdote of the Queens”ですね、後付けですけど(笑)。Fukiさんのソロ・プロジェクトへの参加もありましたね。10月25日にはライヴ(東京・新木場スタジオコースト)もありましたけど、彼女はもちろん、あの日も披露した新曲を作ったMaoくん(LIGHT BRINGER)という、自分より若い世代の才能あるミュージシャンと新たに音楽を生み出せたのも面白かったですね。今まではどちらかというと先輩たちと何かをすることが多かったので、そこはとても新鮮でした。Maoくんは作家/アレンジャーとして日々成長していくと思いますし、彼らとは今度とも何か一緒に作っていきたいですね」

――さて、当面の注目となるのは、今春にリリースされるライヴ映像作品ですが、Nozomu Wakai’s DESTINIAとしては、その後どんな活動をしていく計画なのでしょう?

「実はロブ・ロックとも新曲のやり取りは始まっているので、どんな形になるかはわかりませんが、早い段階で1曲か2曲か、みなさんにご提示できればいいなとは思っています。そこからアルバムのリリースまでは、道筋が一本道になってきていて……まだ話をいろいろと詰める必要もありますが、ワールドワイドな戦略に基づいたものになっていけばいいなと思っています」

――DESTINIAの次作に参加するシンガーはロブ・ロックのみなのでしょうか?

「現段階では何とも言い切れませんけど、メインのヴォーカリストに関して複数の候補がいるのは確かですが、この先どう転ぶかは、誰にもわからないところはあります。生まれてくる楽曲によっても変わってくるでしょうし、蓋を開けてみたら、私が歌っているかもしれない(笑)。とにかく、今年の展望はアルバムですね。年内に出るのかな(苦笑)。ただ、前々から言ってはいますが、次の作品は本当の意味で大切なものになるし、ヘヴィ・メタルのためにヘヴィ・メタルをやる、その変わらぬ信念の下に進んでいきますので、最良の形で世に出るように計画していますよ」

このインタビューの収録後、若井は3月4日のZepp Sapporo公演からスタートしている浜田麻里の新作『Mission』に伴う全国ツアーにも参加することが決定した。最後にこの件に関する本人のコメントを紹介しておこう。

「浜田さんのツアーで弾かせていただける日がくるなんて、とても光栄です。こういう機会とチャンスを与えていただいた浜田さんに本当に感謝です。歴代のツアーにおいても、本当に素晴しいギタリストが参加されているので、プレッシャーも大きいのですが、先輩方とよいステージをファンの皆様にお届けするべく頑張っています。浜田さんには、まず何より自分を出して演奏するように常に言われていますね。自分自身と向き合う意味でも、この上なく充実しています! まさかこのいろいろな意味で大変な“Mission”が私に託されるとは(笑)」

取材・文●土屋京輔



リリース情報

■ライヴDVD/Blu-ray『A Live for a Scream~One Night Only Requiem』
2016年4月27日発売
Blu-ray:KIXM-233 価格:5800円(税抜き)
※特典映像として「Requiem For A Scream」「Ready For Rock」のMVを収録
DVD:KIBM-573 価格:4800円(税抜き)

ライブ・イベント情報

<Mari Hamada Tour 2016 “Mission”>
3月4日(金) Zepp Sapporo
3月11日(金) Zepp Nagoya
3月19日(土) BLUE LIVE広島
3月21日(月・祝) Zepp Fukuoka
3月27日(日) Zepp Namba
4月17日(日) Zepp Nagoya [追加公演]
4月23日(土) Zepp Sapporo [追加公演]
4月28日(木) Zepp Namba [追加公演]
5月29日(日) 東京国際フォーラム ホールA


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