【インタビュー】若井望、浜田麻里とのコラボレーションとDESTINIAの未来像を語る
デビュー・アルバム『Requiem for a Scream』(2014年)が、広く話題になったのも記憶に新しい、Nozomu Wakai’s DESTINIA。2015年夏には同作の外伝的作品であるEP『Anecdote of the Queens』をリリースし、待望の初ライヴとなる<「a Live for a Scream」~One Night Only Requiem~>を、満員の観衆を集めて東京・渋谷O-WESTにて行った。このプロジェクトを司る若井望(g)に関しては、浜田麻里の最新作『Mission』で、再びの楽曲提供のみならず、トータル・サウンド・ディレクターとして参加したことも、注目度をさらに高める背景になっているが、自身のNozomu Wakai’s DESTINIAについても、「一夜限り」で奇跡的に実現した先のパフォーマンスの模様が4月27日に映像作品化されることになった。彼は今、何を考え、どこに向かおうとしているのか。2015年の活動を振り返りながら、今後の展望に関しても熱い思いを語ってくれた。
◆若井望~画像&映像~
■想像していた以上のフィードバックが得られた
■ターニング・ポイントになった作品
──若井望の2015年は、まず『Anecdote of the Queens』の制作に取りかかるところから始まりましたよね。
「そうですね。2014年11月に『Requiem for a Scream』を出して、その反応に驚くことから始まった、というのが正直なところかもしれないです。そこからスタートして、やはりNozomu Wakai’s DESTINIAとしてライヴをしなきゃいけないというか、やるべきなのではないかというところから、2015年は始まってます」
──もともとライヴ自体は、2015年の春にやれないかと、いろいろ画策をされていたんですよね。
「年始の段階までは、春にライヴができればということで動いていたんですよね。ただ、諸事情があって、夏にずれ込むことが決定して。それならば、その期間を有効に活用し、さらにライヴにも厚みを持たせることのできる、新たな音源の制作をしようと思い立ったんです。『Anecdote of the Queens』は、そういう中で生まれた作品でした」
──同作は『Requiem for a Scream』でコーラス参加していた、榊原ゆいさんとFukiさん(LIGHT BRINGER)をメイン・ヴォーカルにフィーチャーした作品でしたが、どのようなアルバムだったと振り返りますか?
「ファースト・アルバムの外伝、足りなかったこと、歌っていなかったことを歌うような位置付けではあったんですが、想像以上に自分自身に対してもフィードバックがあり、得るものが大きかった作品ですね。前作で歌ってもらった3人(IMPELLITTERIのロブ・ロック、GALNERYUSの小野正利、ANTHEMの森川之雄)はすでにスタイルも含めて完成しているのに対して、榊原さんやFukiさんは、今までにないものをさらに引き出すという作品創りになっていったんですね。だから、プロデュースをする感覚としては、とても新鮮で、様々な発見や成長ができる、ターニング・ポイントになった作品となりました。作曲の面でも、自分の中で再認識と発見が多かったです」
──二人の歌によって、自分のギター・プレイが影響を受けたこともありました?
「ありますね。Fukiさんも榊原さんもそうですが、ヴォーカルによって、楽曲の中で特にギターは引っ張られる部分が多分にありました。それは『Anecdote of the Queens』のほうが顕著でしたね。ファーストのときには、ほぼ完成された構築美の中でやっていくことが多かったですから。今回は歌が入ってから、さらにギターで大きく磨かれた。そういう面はあると思います」
──周知の通り、『Requiem for a Scream』は絶大なる支持を受けて、それこそ“無名の新人”でありながら、ヘヴィ・メタル専門誌『BURRN!』の読者人気投票において、<BRIGHTEST HOPE(最優秀新人賞)>に輝いたのを始め、様々な部門のランキング上位に踊り出る状況になりましたよね。続く『Anecdote of the Queens』に対する反応もよかったでしょう?
「最高に栄誉あることでしたので、また今年も皆様にご支持いただけたら、本当に光栄です。ファースト・イヤーとしては出来過ぎですよね。大変にありがたく、皆様への感謝の気持ちで一杯です。素晴しいアーティストがたくさんいる世界なので、何とも言えませんが、今回は特に楽曲に関しては、前回とはまた違って、聴かせる部分というのを、上手く再現できたと思います。伝えたいメッセージを盛り込むこともできましたし。もちろん、彼女たちの歌唱によるところも非常に大きいですが、自分としては、後から何かあったときにまた聴きたくなるようなメロディを残せたことがとても大きかった。実際にみなさんから頂いた素晴らしい反応を振り返ってみても、そこは大きなポイントになっていたと思います」
■異なるものが重なり合う、“交差点”のような役割を果たしたい
■ヘヴィ・メタルに賭ける熱き思い
──その後、8月30日に東京・渋谷O-WESTにて初ライヴがようやく実現。チケットもソールド・アウトでしたね。
「かなり早い段階から準備を着々と進めていたんですが、最終的に2枚の作品に参加してくださった、ほぼ全員が揃い踏みするという状況にできましたし、とても華やかなライヴになったと思います。ロブ・ロックもフロリダから、この日のために来てくれましたし。彼に関しては、IMPELLITTERIの来日公演(2015年5月)があったときに交渉したんですよね。そこで『Anecdote of the Queens』とライヴへの参加が決まって。いずれにしても、あのようなラインナップが集まって、音源を再現できる機会など、なかなかないでしょうし、感慨深いものがありますね。当日のムービーやスチールを見ても、自分でも不思議な感じがするぐらいですから(笑)。そして何よりも嬉しく、ありがたい限りだったのは、多数の皆様にご来場いただいたことで、同じ時間・空間を創り上げ、真の意味でのライヴ・ショーとして完成できたことですね。当日、どうしてもご覧いただけなかった方に対しては、申し訳なく思うと同時に、期待をいただけたお気持ちだけでも大変感謝しております」
──ステージに立っているときは、どのような感覚でした? これまでは誰かのサポートといった立ち位置が多かったですが、今回は自分のリーダー・バンドなわけですよね。
「改めて当日の映像を観ると……やっぱり、MCはもう少し考えなければならないかな(苦笑)。ギタリストの感覚としては、あまり変わらなかったですね。DESTINIAは、もともと単純にギタリストのソロとして売り出しているわけではなく、バンド・サウンドに近いもの、楽曲バランスありきで考えていますし、ライヴ制作のスタッフ・チームのサポートがあり、思った以上に、一人のギタリストとしてステージに立てたと思います。ただ、そこに至るまでの段取りは、尋常ではなく大変でした」
──あれだけの参加メンバーですから、個々のスケジュール調整から楽器周りのことまで考えなければなりませんし、実際のステージでは曲順をどうするか、どのようなメンバー出しの順番にするのか等々、決めなければいけないこともたくさんありますからね。
「そうですね。セットリストをどうするのかはもちろんですが、事前のリハーサルのスケジュール一つをとっても、あれだけの数のメンバーなので、なかなか時間がとれない。一線で活躍されている方ばかりですしね。どんなリーダーにもあると思いますが、制作側の苦悩は随所に感じました。でも、とにかくこのライヴを成功させたい、その強い思いに突き動かされてましたね」
──客席フロアの様子を眺めていても、オーディエンス側も2枚の作品を何度も聴いて、この日を楽しみにしていた様子がよくわかりましたね。
「とても感慨深いものがそこにはありました。まずなにより感謝。それはスタッフを含めてのことですが、その瞬間、一つの空間でDESTINIAというプロジェクトを共有することで、私のもの、つまり、Nozomu Wakai'sというより、みんなの DESTINIAなのだなと、本当の意味で思いましたね。応援してくれる方々からの期待と自身の活動の意味を再認識しました」
──観客からも終演後に様々な声が届けられたと思うんですよ。
「はい。熱いメッセージを多数いただきましたね。長文のファンレターも多かったですし、DESTINIAの作品に思い入れを持ってもらえたこと、私の思いが伝わったことを確認できて、心を打たれました。そこにはいろいろな方がいるんですよ。たとえば、普段は洋楽しか聴かない人だったり、榊原さんのライヴは行ったことがあるけど、ヘヴィ・メタルのライヴは初めてだったという人、そういった様々な人たちが、私の作品を通じてジャンル自体を好きになってくれたのも嬉しかったです。何か異なるものが重なり合う、“交差点”のような役割を果たすことは、当初から目指すものだったので」
──確かに多彩なゲストが参加していましたから、それまでは接点がなかったようなファンも多かったでしょうね。
「私の楽曲ではロブ・ロックも歌っているので、純とは言いがたいかもしれませんが、日本人が創るハード・ロック/ヘヴィ・メタル、ジャパニーズ・メタルに、いろんな人が興味を持ってくれる起点になることが、DESTINIAを始める意義においてもとても重要だったんです。それが形になるということも、実際にお客さんと対面することで強く実感できましたし、反応によって再確認できたことも本当に大きいですよね」
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