【インタビュー】KIRA、「ツラいからって投げ出したり切り離してしまったらそれ以上何も生まれない」

■自分が落ちている時に前向きな曲にすごくパワーをもらったから
■自分もそうならなあかんやんってマインドが変わったんです

――「SPACEY LOVE」は、少し前は知らない人だったけど、あっという間に自分の中で大きな存在になっていたというラブソングですが、「すでに好きだなんて言えない」というフレーズが耳に残ります。

KIRA：トラックは海外作家が作ったもので、メロディも付いていたんです。それを聞いた時に「好きだなんて言えない」ってフレーズがポンって出てきて。「これは、好きだなんて言えないって曲だ！」と思って、ここから作り始めたんです。

――へぇー。

KIRA：私はもともとR&Bから入ってるので、言葉の響きを大事にしていて。ここはEで韻を踏むとか。そういう部分は絶対妥協したくないんですよ。「ってかすでに」とか歌詞的にアウトかもしれないけど、響きのカッコよさを徹底して追求しました。この曲はそういう意味で響きが大事に出来たと思います。



――ぴったりですもんね。「Ice Cream Harmony」でも恋愛がはじまりそうな瞬間が描かれていますが、こちらは秘密の恋で耽美な感じがします。ドラマティックで綺麗に描いているからこそ、不倫とか浮気心じゃなく、先生と生徒とか、禁断の恋という風にも受け取れますね。

KIRA：ホンマや。そっか、結ばれちゃいけない二人の恋って不倫や浮気以外にもありますよね。ボーイズラブでもイケるかも(笑）。今回は「女」っていうところを出したかったんですけど、今まで自分が作った曲の中で一番好きなんちゃう？っていうくらい好みの曲なんです。ビートとかめっちゃR&Bやないですか。内容的にはリード曲には難しいし濃いけど、どうしても収録したくて。自分自身が浮気されたりすることもあるけど、浮気心を持つこともありますよね。いろんな人に当てはまる。こういう気持ちを味わったことがある人もたくさんいると思うんです。それをドラマティックに綺麗に描きたいなと思って。

――妄想が膨らむ曲ですよね。この流れで聴くからこそ、「Dance Magic」が際立ちますよね。恋に破れた女の子を力づける歌だから。RYO the SKYWALKERさんと夢のコラボ曲。

KIRA：そうなんですよ。私がクラブシンガーになりたいと思ったきっかけがSugar SoulのAIKOさんなんですけど、「Ho-oh～女神のうた～」っていう曲をRYOさんとSugar Soulさんでやっていて。「RYO the SKYWALKERって誰なん？めっちゃかっこいいやん！」って、すぐにRYOさんのCDを借りに行ったんです。それからRYOさんの曲はカラオケでも歌うようになるくらい好きになって。だから、コラボできて本当に嬉しかった。一緒に作業していても、RYOさんってめっちゃかっこいいんですよ。ジェントルメンやし、私が曲の中で「こうしてほしい」と思ったことを、何も言わなくてもやってくれていて。例えば、「予想できないくらいHAPPYでしょ？」のあとに「ヤマーン！」って入っていて。


――入ってた入ってた。

KIRA：「それそれ！」っていう感じで入れてくれてたんですよ。最初、「ここの歌詞大丈夫かな？」って思ってたんですけど、RYOさんが「ヤマーン！」って入れたことで成立したんです。随所にそういうところがあって。完成度もグッと上がるし、最後のフェイクの掛け合いも「KIRAちゃん、こういう風に歌ってみて」ってディレクションしてくれたり。「先輩っ！」って言いたくなるくらい、素晴らしいコラボでしたね。MINMIさんとのコラボもそうだったけど、私がMINNMIさんやRYOさんを聴いて育ってるから、DNAが入ってるから合うのかもしれない。

――遊び心も満載だし、「裏切られ」って言葉が最初から出てきて、この作品のテーマも歌っていますね。この曲と「Be Alright」では上げてくれますよね。

KIRA：「Be Alright」は夏に出た、下拓くんのアルバム『♯シモタクナウ』にも収録されているんです。私、下拓くんと出会うまで、病んでいて激太りで体重60キロ超えっていう時期があったんです。曲も全然できないし、辛い時期が長かった。そんな時に下拓くんと出会って、ランニングに連れ出してくれたんです。それまで運動とか一切していなかったので、「なんで出会って間もない奴とランニングなんかせなあかんねん」って思いながらランニングをはじめたら、そこから10ヶ月、毎日続いて。ランニング中、下拓くんがひたすら前向きな話ばかりするんです。最初は相槌打つのもしんどいって思ってたけど、ポジティヴなことばかり言われてたら、マインドがどんどんポジティヴになって。歌詞に出てくる景色の描写は走っていた公園の景色なんですけど、私はその景色の中で立ち直ったから、今、落ち込んでいたりくすぶっている人の気持ちを前向きにするお手伝いができたらいいなと思って、この歌詞を書いたんです。


――でも、「心の灯を消して-End of the love」でまたズドーンと落ちるんですね。「もう何も　引き寄せない」っていう歌詞から絶望感が伝わる。

KIRA：「引き寄せない」か「受け付けない」かで迷ったんですよ。わざと一曲、どうしようもないスーパーネガティヴな曲を入れたいなと思って。私、もともと暗い歌ばかり歌っている人だったんです。R&Bって慈悲を歌うところがあります。失恋の歌も多いし。そういうのに憧れてR&Bを歌っていたから、もともと暗い歌も多かった。自分が辛いことを歌で吐き出すっていう感じだったんです。この曲はその時とのヴァイブスで書いてます。

――なるほど。今はそういう曲だけじゃなくなりましたけどね。

KIRA：はい。ここ2～3年でレゲエのアーティストと関わるようになったのがきっかけですね。音楽って、大きいところでやるんやったら、聴く人に勇気を与えたり元気を与えたり、ポジティヴに元気にさせなければ、自己満足で終わってしまうと思ったんです。「もっと勇気を与えたり、みんなのことを元気にしよう！」って。私自身、自分が落ちている時に、そういう前向きな曲にすごくパワーをもらったんです。「自分もそうならなあかんやん」ってマインドが変わったんです。

――そういうことだったんですね。でも、なぜここでネガティヴな時代のヴァイブスの曲を入れようと思ったの？

KIRA：ポジティヴなことばかり歌っているフィールドに行ったからこそ、そこのみんながやってない、どうしようもないネガティヴなものを一曲入れたかった。しかもこれは女じゃないと書けない曲だし、女性やから不利なことって世の中たくさんあると思うので。ここでこんなに暗い曲が入っていることにドン引きされるかもしれないけど、リアルを追求したかったんです。

――人生、ポジティブなだけじゃいられないし、悪いことが起きるから、良いことに嬉しさを感じられるわけだし、この「心の灯を消して-End of the love」があるからこそ、この作品が物語として成立してるよね。だからこそ8曲めの「And I...S.U.R.V.I.V.E」の説得力が増す。こんなに辛いことがあったけど、そこから立ち上がれるんだよって。

KIRA：ホンマにそうです。「心の灯を消して-End of the love」があるから、「And I...S.U.R.V.I.V.E」で「どんな困難にも　立ち向かう」っていう歌詞も生きるかなって。「これから　どこへ向かおう」ってもう死んでしまうんじゃないかってくらいの雰囲気で終わっているんだけど、「And I...S.U.R.V.I.V.E」の頭に「I live my life」っていうセリフが入っているんです。「私は私の人生を生きる！」って強い決意の曲になりました。「これからこうして生きようとしてんねん！」っていう意思表示でもある。

――1枚を通して、メッセージが強く響く作品になりましたね。このアルバムを引っ提げた東名阪のワンマンツアーも予定されていますね。

KIRA：ワンマンライブって普通のライブとちゃうから、いつも反省点がめっちゃあるんですよ。だから体幹を鍛えるトレーニングも今やっていて。「次に活かせることができるように、完成度、絶対に上げたる！」みたいな感じで課題を克服できるように頑張っているのでめっちゃ楽しみですね。

取材・文●大橋美貴子