【2016年グラミー特集】刑務所バンドがノミネート
アフリカ大陸の南東部に位置するマラウイ共和国。一人当たりの国民所得は世界最下位、道路の舗装率は50%以下、90%の地域にはいまだに電気が通っていない世界最貧国のひとつであるこの国では、生きるために犯罪者になってしまうケースも少なくないという。そんなマラウイの刑務所で服役する囚人たちがレコーディングしたアルバムが、第58回グラミー賞の最優秀ワールドミュージック・アルバムにノミネートされ、話題となっている。
2013年、ある音楽プロデューサー:イアン・ブレナンがマラウイの土を踏んだ。グラミー賞受賞歴を持ちアフリカ各地で無名アーティストを発掘することに定評があるブレナンは、暴力防止やアンガ-マネージメントなどの訓練を手掛けるメンタルヘルス専門家でもある。そんな彼が訪れたのは、ゾンバ県にある重罪犯罪者約2,000人を収容する刑務所。そこでブレナンは、囚人たちに暴力対策などについて訓練を施しつつ、彼らの音楽的才能に目を付け、アルバムのレコーディングを提案したのである。
「男性たちは以前からバンドを結成したりしていたせいかレコーディングには乗り気だったけど、女性たちは否定的だった。「歌ったり踊ったりするのは好きだけど、曲を作るのは無理だ」ってね」
「でも、僕の滞在期間が終了する間際になって、1人の女性が立ち上がり歌い始めたんだ。それをきっかけに、次から次へと女性たちが歌いに来るようになったんだよ」
そうして50人以上の囚人による6時間を超えるレコーディングをもとに完成したのが、ゾンバ・プリズン・プロジェクトのアルバム『アイ・ハブ・ノー・エブリシング・ヒア(私はここでは何も持っていない)』。曲はすべて囚人たちのオリジナルだ。「アイ・キル・ノー・モア(もう人は殺さない)」「ラスト・ウィッシーズ(最後の願い)」など、非常に個人的なテーマを歌う囚人たちの想いが、時には明るく、時には切なく伝わってくる。動画サイトにアップされている彼らのミニ・ドキュメンタリー「ゾンバ・プリズン・プロジェクト(Zomba Prison Project)」では、レコーディングの様子はもちろん、刑務所生活も少し垣間見ることができる。彼/彼女らの心の声を、是非一度聴いてみて欲しい。
写真:マラウイ共和国のとある村の風景(Getty Images)
<WOWOWオンエア情報>
2016年2月16日(火)午前 9:00 WOWOWプライム
同日夜は、字幕版でリピート放送
★「第58回グラミー賞授賞式」※字幕
2016年2月16日(火)よる 10:00 WOWOWライブ
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