【インタビュー】トゥライ、デビューアルバムは「まさかやると思ってなかった冒険の始まり」

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■最初はminatoが作曲でトゥライが歌という分け方でした
■今回「なぜminatoじゃなくトゥライなんですか?」って聞かれたら……

──ちなみにVALSHEさんとminato(トゥライ)さんの2人が影響を受けた音楽の共通項とは?

トゥライ:共通していたのは1990年代後半から2000年代初頭の歌謡曲やポップス、アニメソングなどですね。僕は特に日本的なメロディーが好きなんです。今回のアルバム『ブラックボックス』もそうだと思うんですが、少し歌謡曲的な要素があるメロディーに惹かれますね。

──当時、特に影響を受けたアーティストはいますか?

トゥライ:うーん、1人の方だけを強烈に熱中して聴いたという経験はないんです。どちらかというと作家さんですね。小室哲哉さん世代なので、そこから始まったというか。

──というと1990年代のダンス的な歌謡曲から?

トゥライ:最初は打ち込みから入って、後に好きになったのは生音なんですけどね。小松未歩さんとか女性の作家さんも好きで、“この曲、好きだな”とか“いい曲だな”と思うと同じ方が作曲しているということが多かったですね。

──歌声よりも曲そのものに惹かれるということですか?

トゥライ:歌声も重要なんですが、まず“いいメロディーだな”と思わないと、どんなに声が良くても聴かない傾向にあったのは確かですね。“あの曲は好きだけど、この曲は好きじゃない”とか“アレンジは好きだけど、メロディーが好きじゃない”っていう聴き方をしていたりとか。そこから自分で作曲してみたいという願望に繋がるんですね。誰に曲を提供しても、その人のヴォーカルの良さを引き出すメロディーが作れるような作家になれたらいいなっていう。

──作曲家として活動したいと思った原点ですね。トゥライさんはソロのシンガーソングライターで、minatoさんは他者に提供する作曲家という分け方でいいんでしょうか?

トゥライ:最初はminatoが作曲でトゥライが歌という分け方でしたね。minato名義でVOCALOIDの曲を投稿していたとき、歌を自分で唄った動画に関しては無記名でアップしていたんです。minatoとは別人であるという体で。その動画がいきなり何十万回も再生されて、「名を名乗れ」じゃないですけど(笑)、リスナーの方たちのそういう声が多くて。で、リスナーの方から「この名前いいんじゃない?」という提案があってトゥライという名前が生まれたんです。空耳がキッカケなんですけどね。

──「辛い」という歌詞が「トゥライ」に聴こえるというのがアーティスト名の由来だったとか。

トゥライ:そうですね。当初は別人という体で活動していたんですが、“これはもう隠しきれないな”って思ったことがあって、同一人物だと明かしたんです。そこから先は自分でもどういうふうに分けていいかわからない(笑)。だから、今回も「なぜ、minatoじゃなくトゥライなんですか?」って聞かれたら、なんとも言えないんです。ただ、歌だからトゥライかなって。かと言ってminatoでは歌わないということでもないんですね、コーラスもしているし。

──明確に線引きしているわけではないんですね。トゥライさんの歌声は以前から定評がありましたが、昔からトゥライさんを聴いている人のメジャーデビューに関するリアクションはどうですか?

トゥライ:Twitterとかでメッセージをいただいたんですが、みなさん、すごく喜んでくださっています。歌を唄うという意味では5年ぐらいのブランクがあるので、それでも待っていてくれた方がいるのが嬉しい限りというか。逆になんでそんなに待っていてくれたんだろうって。“なんで今?”っていう反応もあると思っていたので。

──なぜ、5年間、歌わなかったんですか?

トゥライ:それは向いてないと思っていたからです。歌を唄うこと自体は好きなんですが、表立って人前で何かをやる能力はないと思っていて。そういう気持ちが消えたわけではないけれど、“向いていない”という理由でやってみたいことを封じこめるのではなく、失敗してもいいからやってみようかなという気持ちに初めてなったんですよね。

──アルバム『ブラックボックス』に収録されている「パンドラ」という曲に込めたのはそんな想いですか?

トゥライ:そうですね。これは2年半ぐらい前に作った曲で、その時期の気持ちを書いた曲です。

──先ほど話していただいたVALSHEさんが初めてライブを行なったあたりの曲ですか?

トゥライ:そうです。

──今まで開けなかったパンドラの匣を開ける決意を歌った曲というか。

トゥライ:ええ。なぜかやっちゃいけない気がしていて、開けてはいけない匣っていう気持ちでやろうとしていたんです。

──意外です。顔を出したときに“トゥライ(minato)さんって、こんなにカッコよかったの?”という反応が多かったんじゃないかと思いますが。

トゥライ:いや、そこはわからないですけど。顔を出すことだけではなく、歌詞や曲も含めて全てをさらけ出さないと意味がないというか、それで初めて成立するアルバムだという気持ちで作りました。だから、内面のことも全て書いたし、発信したかった気持ちを含めて自分がどう考えているのか、聴いている人に理解してほしかったんですね。

──決意のもとにトゥライ、メジャーデビュー!ですね。

トゥライ:いろんな意味で、もう後には引けないというか(笑)。

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