【レビュー】“ファンク”を生み出したJBの全てを描く『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』

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2015年の5月から劇場公開され、音楽映画の最新傑作として大きな注目を集めたあの作品が、いよいよBlu-ray&DVD化されて11月6日にリリースされる。『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』は、アメリカのソウル/ファンク・ミュージックの歴史における最重要人物、JBことジェームス・ブラウンの破天荒な生涯を描く人間ドキュメントの側面と、演奏シーンもたっぷり盛り込んだパワフルな音楽映画の側面とを併せ持つ。たとえJBのことを知らなくても(いや、そんな人がいるだろうか?)、見始めたら最後まで止められない、優れたエンタテインメント作品だ。ライブシーンではJBの未発表音源を使用するなど、熱心なファンもうならせる大興奮シーンが続出。Blu-rayではミック・ジャガーのインタビューや、製作の裏側など映画では知ることが出来なかった内容満載となっている。

◆『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』~画像~

■ドラマチックなジェームス・ブラウンの生き様

映画の中でも丁寧に描かれているが、少年時代のJBの生活環境は貧しく、崩壊した家庭に育ち、やむをえず犯罪にも手を染め、やがてゴスペルに出会って天性の歌唱力に目覚めてゆく。このあたりの事情は、興味のある方は『俺がJBだ! ジェームス・ブラウン自叙伝』を読んでいただけるとわかるが、そもそもドラマのようなエピソードが盛りだくさんなので、映像で見るとなおさらにドラマチックだ。バンドメンバーとのもめごと、女性関係、お金、人種差別など、ミュージシャンにつきもののトラブルを、強烈な自己主張で次々突破してゆく、理不尽なほどに痛快な言動もたっぷり楽しめる。アメリカの黒人を取り巻く環境が大きく変化していった50年代~70年代と、JBのエネルギッシュな生き方が見事にシンクロしている。


■ジェームス・ブラウンが音楽界に及ぼした影響

音楽的には、ゴスペルからスタートし、R&B、ソウル、そしてファンクへと、ブラックミュージックの流れを進化させていく過程もしっかりと描かれている。“ソウル・ブラザー・No.1”“ファンキー・プレジデント”など数々の異名を授かり、ソウル・ミュージックのゴッドファーザーとして音楽界に君臨してきたJBだが、やはり真骨頂は彼が発明したといっても過言ではない“ファンク”を歌うJBだ。強烈なリズム、パーカッションのようなホーン、鋭いギター・カッティングが生み出すグルーヴは、後にヒップホップの誕生にも大きく関わることになる。その影響力はプリンスやマイケル・ジャクソンなどにも及び、ビートルズやローリング・ストーンズなどロックバンドに与えたインスピレーションも限りない。マイルス・デイヴィスを始めジャズ・ミュージシャンとのつながりも、後の世のアシッド・ジャズなどクラブ・ミュージックに至る原点もここにある。


■ライブ・シーンには実際に演奏されたものの未発表音源を使用

そうした音楽の数々が、しっかりとした時代考証のもとに再現されたライブ・シーンが、この映画のハイライトであることは言うまでもない。ライブ盤として有名な1962年のニューヨーク、アポロシアターでのショーの再現などは特に素晴らしい。それもそのはず、いくつかのライブ・シーンには実際に演奏されたものの未発表音源が使われているので、その迫力は本物だ。ほかに名場面として、70年の代表曲「セックス・マシーン」を歌い踊る圧巻のシーン、そして映画の終わり近くに登場する素晴らしいソウル・バラード「トライ・ミー」のシーンなど、いくつもあるのだが、あとは見てのお楽しみ。


■JBの人生の光と影、人生のほとんどを描ききった作品

映画に関わったスタッフと俳優についても、最後に触れておこう。プロデューサーと音楽製作総指揮は、ローリング・ストーンズのミック・ジャガー。ミックが“JBの人生の光と影、人生のほとんどを描ききった”作品というコメントを発していることから見ると、彼自身にも胸を張れる作品になったことは間違いない。ちなみに映画の中でJBがストーンズとニアミスするという、思わずニヤリとさせられるシーンもある。

監督は『ヘルプ~心がつなぐストーリー』のテイト・テイラー。そしてなんといっても、主演のチャドウィック・ボーズマン(『42世界を変えた男』など)の、JBなりきりぶりの見事さが、この映画の成功のカギになっていることは間違いない。時にシリアスに、時にコミカルに、パワフルに、エモーショナルに、気まぐれで複雑な人間・JBの姿を、ライブでの見事なダンスや歌いぶりとともに演じきった彼には、大きな賛辞を贈りたい。


映画の感想は、人それぞれだろう。だが個人的に最も心に残ったセリフがある。それは「望み通りに生きろ」。時代も環境も、事実もフィクションも、すべてを超えて届いたその言葉こそ、JBの本質だったのではないか。『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』は、様々な側面から何度でも楽しめるエンタテインメント映画として、長く愛される作品になるはずだ。

文●宮本英夫
© 2014 Universal Studios. All Rights Reserved.

『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男 Blu-ray+DVDセット』

11月6日(金)リリース ¥3,990(税別)
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
© 2014 Universal Studios. All Rights Reserved.
【特典映像】
■“未公開シーン/ロング・バージョン/別バージョン”
■挿入曲フル・バージョン
・アウト・オブ・サイト ・スティール・アウェイ ・アイル・ゴー・クレイジー ・コールド・スウェット
■挿入曲ロング・バージョン
・「プリーズ、プリーズ、プリーズ」レコーディング風景
・「プリーズ、プリーズ、プリーズ」ライヴ
・「セイ・イット・ラウド、アイム・ブラック・アンド・アイム・プラウド」
■映画化への長い道のり(ミック・ジャガー他製作陣が語る)
■JBを演じるチャドウィック・ボーズマン
■最高のキャスト
■ショービズ界一の働き者
■ファンクの帝王
■ダンスシーン フル・バージョン
■監督/製作 テイト・テイラーによる本編音声解説

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