【インタビュー】Mary's Blood、重みを増したバンドのいまをそのままパッケージできたアルバム『Bloody Palace』

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■プレイで大変だったのは「Bloody Birth Day」とかかな
■フレーズがメッチャ細かくて悪態をつきながら録りました


――感じました。激しさを押し出してはいますが、楽曲、歌詞ともにキャッチーで、すごく間口の広いアルバムという印象を受けました。では、続いてプレイに関する話をしましょう。今回レコーディングするにあたって、プレイ面で心がけたことは?

SAKI:今回は、全曲フラクタル(様々なアンプをモデリングしたデジタル・アンプ)を使いました。フラクタルを使って、前作以上に1曲1曲細かく音を作り込みたいなと思って。フラクタルはライブでも使っていて良さが分かっているから、不安とかはなかったですね。結局ギターも4~5本使って、1曲ごとにフラクタルのパラメーターも細かく変えて録っていきました。

――メインになったアンプ・モデリングは、ありましたか?

SAKI:基本は、自分がいつも使っているマーシャルのJVMでした。本物のJVMもヘッドだけ使ったりしたし。あとは、フェンダーのモデリングでクリーン・トーンを作ったりとか。だから、結構いろいろ使っている気がする。どの曲で、どのモデリングを使ったかという細かいことは覚えていないけど。やっぱり、フラクタルは優秀だなと思いました。高いだけのことはある(笑)。個々のエフェクトのレベルもすごく高いので、ライブではフラクタルをマルチ・エフェクターとして使っているんです。アンプは、マーシャルのJVMとキャビを使っていますけど。


▲『Bloody Palace』初回限定盤


▲『Bloody Palace』通常盤

――フラクタルは選択肢が多過ぎて逆に難しいというプレイヤーもいますが、うまく活用されていますね。ギターのプレイ面に関しては、いかがでした?

SAKI:前回は、“速く弾け!”みたいなプレッシャーがすごくて。とにかく何でも良いから速弾きしろ…みたいな感じだったんですよ。そこに悔いが残ったので、今回はのびのび弾かせてもらいました。今回はギター録りの時に、人払いをしてもらったんです。人がいると、いろいろ気になっちゃうので。最初は聴いててもらっても、お菓子とか食べてるのを見ると、“家に帰って食べてたほうが良いんじゃないの?”とか思っちゃって。あとは、まだ30分くらい掛かるけど、みんな終電とかなくなるし、どうしようと思ったりとか、お昼も自分はいらないけど、みんなお腹減ってたらどうしようとか考えちゃうから人払いをしてもらって、エンジニアさんと2人だけでギター録りをしました。

――周りのいろいろなことが気になるのが嫌で宅録しているというギタリストは多いみたいですね。

SAKI:私も家で録りたいと言ったけど、それはダメと言われたんです。アンサンブルとかのことがあるから、エンジニアは立ち会わせてくれと。エンジニアさんと2人だけだから、スタジオではすごく自由でした。急にお腹すいたと言って「えっ、今?」「うん、今食べたいっス」みたいな(笑)いや、エンジニアさんも結構自由で、レコーディング中に散歩行きたいとか言い出して、散歩に行っちゃったりするんですよ(笑)。

EYE:エンジニアが散歩に行きたいとか言うのは、珍しいよね(笑)。

SAKI:うん(笑)。そういう風にのびのび録って、それが良い方向に出たなと思います。プレイで大変だったのは、「Bloody Birth Day」とかかな。フレーズとかがメッチャ細かくて、悪態をつきながら録りました(笑)。

EYE:それで、エンジニアさん散歩に行きたくなったんじゃないの?(笑)

SAKI:アハハ(笑)。エンジニアさんに悪態をついてるわけじゃなくて、うまく弾けなくて、独り言で「ああ、もう!」とか言うじゃないですか。そうしたら、散歩に行きたいとか、クワガタ捕りに行きたいとか言いだして。それは、ちょっと待ってと。さすがにそれは時間が掛かるから、終わるまで待ってと言いました(笑)。

――……キテますね(笑)。「Bloody Birth Day」は、スリリングなギター・ソロも聴きどころです。

SAKI:このソロは、もう“勢い一発”みたいな感じですね。“グワァーッ!”と速弾きを始める辺りからは、ほぼほぼ一発録りで「これっ!」みたいな。

――本当に? 途中のスケールアウトっぽいフレーズもアドリブですか?

SAKI:はい。この曲は何回か録ったけど、なかなか上手くいかなくて。夜中の11時くらいに、完全に煮詰まっちゃったんです。そうしたら、エンジニアさんが「だったら、もう途中で止めずに一気に弾きます?」と言ってきて。そうしますといって、立って、壁のほうを向いて弾きました。

――なぜ、壁に向かって?

SAKI:エンジニアさんが目に入るのが嫌だと、超ワガママを言ったんです(笑)。どこか見えない場所に行ってくださいと言ったら、「いや、ボタンを押さないとダメなので」と言われて。それで、じゃあ私が壁のほうを向くので、合図したらオケを流してくださいと言って録りました。超、迷惑(笑)。

EYE:自由過ぎる(笑)。

――で、でも一番大事なのは、良いテイクを録ることですから(笑)。リード・プレイに関しては、フル・ピッキングの速弾きやタッピングの音がクリアなことやハーモニーの多用などが特徴になっています。

SAKI:私は聖飢魔Ⅱがすごく好きで、LUKE篁さんは速弾きにしても、タッピングにしても発音がはっきりしているじゃないですか。それを目指して練習していたら、こうなりました。だから、LUKEさんのお陰です(笑)。ハーモニーはクィーンとかが好きで、多重録音っぽいのとかも好きなんです。昔ピアノをやっていたから、ハーモニーの付け方もすぐに分かるし。「Grayish World」のソロとかはハーモニーの他にオクターブとかも入れているから、結構多いかもしれないですね。ハモる場所は最初に決めることが多いけど、その場で足すことにしたパートもありました。全部ハモって、逆に後から減らすことも結構あるし。曲によって、いろいろです。

EYE:ギターがハモると華やかな感じになって良いよね。歌の面で今回心がけたのは、声のトーンかな。それぞれの曲のキャラクターを表現するために、1曲1曲声のトーンを変えて歌ったんです。ボーカリストとして特徴のある声を持っているというのも大事なことだと思うんですよ、個性だとか、インパクトという意味では。でも、せっかくフルアルバムとかを出すなら、ずっと同じ声というのはもったいないなと思って。今回は、結構歌い方の振り幅を広くできたかなと思います。

――パワフルな歌をメインとしながら「Song for You」や「Infinite Love」のウォームな歌もあれば、「Grayish World」のような艶やかな歌もあるという内容になっていて、本当に聴き応えがあります。

EYE:ありがとうございます。リスナーとしての自分は、ボーカリストがいろんな表情を見せる作品が好きなんです。それぞれの曲の声のトーンだったり、振り切った時の振り切り具合だったりを細かく聴いてしまうタイプなので、自分がそうやって聴いているなら、自分もそれができなければ…というのがあって。今回は、今まで以上にそういうところには気を遣いました。どの曲もキャラが濃いから、歌録りは結構大変でしたね。一番大変だったのは、「I'm Dead」です。これは、レコーディングの一番最後にまわしたんです。もう明日声が出なくても良いや…という状態で歌わないとヤバいだろうということで。それに、ずっと声を歪ませたまま歌っているとだんだん勢いがなくなっていくので、勢いがあるうちに一気に録りました。あと、私もやっぱり女なので、低い音程のがなり声は難しいんですよ。上のほうの響きと下のほうの響きを活かしたまま歪ませた声を保つのがすごく難しい。なので、元気のあるうちに全体を録っておいて、がなるところは全部まとめて最後に一気に録りました。

――「I'm Dead」の迫力に満ちた歌は必聴です。「Song for You」や「Infinite Love」辺りは、いかがでした?

EYE:特に問題なかったです。メタルバンドをやっていながらナンですけど、私はバラードとかが大好きなんです。アコースティック編成のライブとかも聴くのも、やるのも好きだし。元々の音楽の出発点がそういうところで、なぜか今はここにいるんですけど(笑)。だから、久しぶりにバラードを歌ったなという感じでしたね。でも、その頃よりは表現できたというか、思った通りに歌えたなという気はしています。

――深みのある歌に惹き込まれました。『Bloody Palace』は、プレイの聴きどころが多いことも魅力になっています。それに、アルバム・リリースに伴って東名阪で行なわれるレコ初ワンマン・ライブも楽しみです。

EYE:ライブは、しんどいライブになると思います(笑)。

SAKI:この間リハをしたら、すっごいしんどくて。体力を、すごく奪われるんですよ。だから、次の曲のカウントが始まると、“あ゛ーっ!”みたいな(笑)。

EYE:前半3曲くらいで、“うわーっ! もう最後のほうまで、できる気がしない”と思いました(笑)。もう曲順を決めて通しリハをしているんですけど、まぁ気合の入ったセットリストを組んでしまって、自分達の首を締めたという(笑)。でも、自分達の体力に気を遣ってセットリストを変えるのは違うと思うし、本番はアドレナリン効果で意外と体力も持つから、激しいライブになると思います。それに、『Bloody Palace』は“ガヤ”を入れている曲が多いので、一緒に歌えるところはぜひ一緒に歌って欲しいですね。ライブに来てくれた皆さんを完全燃焼させるので、楽しみにしていてください。

SAKI:Mary's Bloodのライブは、本当に激しいです。この間も名古屋で40分くらいのセットのライブをしたんですけど、その時はいつも以上に激しくて、酸欠になってしまって。ライブが終わった後、ステージ袖でバスドラのケースに突っ込みました(笑)。次のバンドの人に「大丈夫ですかぁ?」とか言われて(笑)。それくらい完全燃焼するので、レコ初ライブも期待していてください。私は、酸素を用意して頑張ります(笑)。

取材・文●村上孝之


『Bloody Palace』

10月7日発売
VIZL-880 DVD付き初回限定盤 \3,500 +税
Special DVD
収録内容 (約40分収録)
・「Moebius Loop」 Music Video
・Mary's Bloodに迫る、Special Interview

VICL- 64416 通常盤 ¥3,000 +税
<収録曲>
1.The Gate of Palace
2.Bite The Bullet
3.Crime and Punishment
4.Song for You
5.Ready to Go
6.Grayish World
7.Bloody Birth Day
8.I’m Dead
9.Sweet Trap
10.Infinite Love
11.Moebius Loop

ライブ・イベント情報

<レコ発ワンマン Mary's Blood Tour 2015 “Invasion of Queen”>
10月17日(土)名古屋RAD HALL
10月18日(日)大阪アメリカ村 DROP
10月25日(日)東京原宿アストロホール
9月5日(土)より一般発売


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