【インタビュー】keeno、寡作なボカロPの“ひとつの区切りになる作品”が生まれるまで
keeno待望の2ndアルバム『before light』が届いた。ニコニコ動画への動画投稿楽曲が全て殿堂入りを果たしている逸材だ(※最新投稿動画「yours」「alternate」を除く)。アルバムに先行してアップされたリード曲「morning haze」は、すでに25万再生を超えている。ギターのアルペジオやメロディーが柔らかなkeenoらしさ。そして、洗練されながらもエモーショナルにせつない、音楽的に豊かな感動を与えてくれる楽曲に注目して欲しい。作品力のみで勝負する、いまだ謎めいた存在であるkeenoへ、メール取材で作品がどんな想いで作り上げられたかを聞いてみた。
テキスト=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
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■ハッピーな曲を書くつもりで書き始めても
■気付いたらなぜか悲しい曲になっています。
── まずは自己紹介をお願いします。
keeno:keenoと申します。主にVocaloidを使用した楽曲を制作しております。Vocaloidに関しましては、初音ミクAppendのDARKのライブラリーをメインに使用しています。Vocaloid2をいまだに使用していますが、私の作りたい楽曲に声も合っていますし、とても素直で扱いやすい声だと思っています。
── 2ndアルバム『before light』が無事完成されて、今はどんなお気持ちですか?
keeno:完成した当初は、その嬉しさよりも作曲に悩み続けた苦しみから開放されて嬉しい気持ちのほうが勝ってしまいまして、作り終えてしばらく経った今になってやっと少しずつアルバムを作ったという実感が湧いてきています。延期を重ねてしまった理由でもあるのですが、『before light』制作中に何をやっても曲が出来なくなってしまいまして、収録される新曲のほとんどは悩みに悩んで搾り出した曲たちです。正直納得できていないところも悪いところも多々ありますが、今出来得る限りのことは出来たと思っています。ですので、これで一区切り打って作曲面で新しいことにチャレンジしたいなと、この作品を作って思うことが出来ました。私にとってはひとつの区切りになる作品ではないかと思います。そして、携わっていただいた皆様には度重なる延期で申し訳ない気持ちでいっぱいです。
── 前作『in the rain』は自己紹介的なアルバムだと思いましたが、2nd『before light』におけるコンセプトがありましたら教えてください。書き下ろし新曲をたくさん収録された理由も教えてください。
keeno:今回の制作に取り掛かった時点では発表曲も多くはなく、必然的に新曲を書かないといけない状況ではありましたし、私は頻繁に楽曲を発表するほうではないですから、それでも待っていて下さる方たちに出来るだけ多く新曲を聴いていただきたいという気持ちはありました。その分悩むことになりましたし、途中で心は折れましたが……。コンセプトに関しては、特にこれといって決めて取り掛かったわけではなく、出来上がってみれば良くも悪くもいつもどおりだなと自分では思っています。
── アルバムのテーマになっているように感じた「孤独」、「悲恋」、「痛み」というテイスト。洗練されたせつなさを感じさせるkeenoサウンドが生まれた理由を教えてください。
keeno:ハッピーな曲を書きたい気持ちはありまして、そのつもりでメロディーや歌詞を書き始めても気付いたらなぜか悲しい曲になっています。悲しさや辛さはなかなか表に出し難いですし、はけ口の見つけにくい感情かなとも思いますし、そういった部分を曲にぶつけているのかもしれません。
── シンプルなことば使いと、絶妙な比喩で表現される歌詞がグッときますが、作詞はどのようにされていますか?
keeno:作詞と作曲を完全に別けて行うことはほとんどありません。ギターを弾いて歌いながら、所々出てくる言葉を繋ぎ合わせて作っていきます。なので気に入った言葉や使いやすい言葉はいろんな曲でかぶってしまいます。あんまりよくはないのでしょうけど、気にしないことにしています……。具体的な表現を避けていることに関しては、仰っていただいたように、細かい内容は聴いてくださった方にお任せして、その方の過去や現在に触れることが出来ればいいなと思っています。
── サウンドや歌詞から「ツライのはあなただけではないんだよ」というメッセージも受け取れました。リスナーに寄り添うような、求められているポップミュージックとしての存在感の強さを感じました。この辺は意識的に創作されているのでしょうか?
keeno:前の質問にお答えした中にもありましたが、聴いてくださった方それぞれに色々な感じ方の出来る曲であればいいなと思っています。自分を重ねてみたり、比べてみたり、曲のその先の物語を想像してみたり、好きに聞いていただければいいなと。寄り添うといったら恐れ多いですが、そう感じていただけたならとても嬉しいことだと思います。
── 初音ミクのヴィジュアルをあえて表には活用しない理由を教えてください。
keeno:初音ミクを使用して楽曲を制作している以上はそのヴィジュアルやキャラクターとは絶対に切り離せないとも思いますし私自身、初音ミクをはじめとしたVocaloidのキャラクターたちは好きですし愛着もありますので、なんとも難しいです。曲の雰囲気や歌詞やあとはずっとお世話になっている麺類子さんの様々なイラストのイメージが自分の中で強いこともありまして……。なんとなくとしか言えないかもしれません。
── アルバム『before light』における、アートワークやイラスト、動画など、ヴィジュアルへのこだわりについて教えてください。
keeno:麺類子さんのイラストが単純に好きで、今までもそのイラストで楽曲を何倍にもいいものにしていただきました。この方のイラストだけは絶対に外せませんので、今回もお願いしまして、お忙しい中ご尽力いただき、本当に感謝しています。げみさんは私が前々からこっそりファンでして、ワーナーの方にお願いをしていただきまして、表題曲のイラストを描いていただきました。とても鮮やかで曲以上の物語を感じ取ることが出来て、大好きなイラストです。今回ご一緒することが出来て本当に嬉しく思っています。ke-sanβさんも動画でずっと楽曲を支えてくださっていて、毎回、楽曲やイラストにぴったりの、かつ出過ぎることのない素敵な演出をしてくださって、いつも頼りにさせていただいています。私自身シンプルなものが好きという以外はあまりヴィジュアルにこだわりが無いので、その道の方達に助けていただいて、感謝しております。
▲「morning haze」イメージイラスト
▲「yours」イメージイラスト
▲「alternate」イメージイラスト
▲「before light」イメージイラスト
◆インタビュー(2)へ
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