【インタビュー】Ken Yokoyama、ギターを語る「グレッチは僕の生き方を投影してくれる」

■その時を楽しめないものに幸せなんて待ってないと思ってるんです
■それを僕は、ステージ上で毎日やってます

──ライブの話に戻りますが、以前から存在する曲を箱モノで弾くこともありますけど、そこに変化や発見があったりもしますか？

横山：曲そのものに僕はそんなに影響を感じてないですね。聴くほうからしたら、もしかして劇的な変化を感じるのかもしれないけど、ステージ上ではさほどないです。1点、強いて挙げるとしたら、リードギターの感じが変わりました。サステインが若干足りないんですよ、グレッチって。というか、ギブソンのロングトーンって特長的じゃないですか。そこでギタリストとしての自分が形成されてきてしまった部分もあって、ロングトーンに頼るクセができていたんですね。でもグレッチだと、ハンマリングとかプリングとかのフィンガリングでなんとかなっていたところさえも、フルピッキングしないとちゃんと鳴ってくれない。なので、結構スタイルが変わってきましたね。

──スパルタなギターですね、グレッチは。プレイヤーに甘くない。

横山：そうなんです。それで上手くいかない日もあるんですけれども、それすらも楽しいんですよ、今は。“今日、へたくそだったな、俺！”って楽しめちゃう自分もいたりして。

──なかなかM体質な（笑）。もともと健さんのギターサウンドって、いわゆる“レスポール＋ディーゼル”から想像する破壊的なサウンドではなくて、ピッキングニュアンスが如実に表れたりとか、音に生々しさがあると思うんですね。それが箱モノを使うことによって一層強まったというか、フィーリングがよりダイレクトに伝わってくるように感じているんですが？

横山：やっぱり今まで僕が使っていたどのギターよりも、繊細さがあるんでしょうね。一方で暴れっぷりもあって。その両面を持っているギターなんです。

──先ほどの“フルピッキングしないとちゃんと鳴ってくれない”じゃないですけど、そういうギターって弾く人を選びますよね。裏を返せば、ギタリストとしての自信がないと弾けないギターというか。

横山：確かに。そこがまた僕、変わったアティチュードの持ち主で、僕は人前で上手く弾こうとは思ってないんですよ。普通は絶対、上手く弾きたいと思うはずなんですよね、僕もそっちに向かっていた時期があったのでわかるんですけど。でも、上手くやってやろうっていう高いアベレージを求めなくてもいい。僕はギタリストですけど、そんなに特別なギタリストじゃないので。たとえばCharさんくらい弾けたら話は別ですけど、そうではない。

──いやいや。

横山：僕は、人に聴かせることよりも、弾いてる自分に興奮したいんですよ。なので、上手くできたかできなかったか、結果はどうでもいいんです。それは深く話をすると、自分の人生観にも関わってくるんですけど。刹那的とか投げやりな意味ではなくて、その時を楽しめないものに幸せなんて待ってないと思ってるんですね。その時が良ければいい。それを僕はステージ上で毎日やってます。だから、ステージに出る前から、“今日はギタープレイ、上手くいくだろうか”とかでビビることもないし、“こうでなければいけない”というゴールも定めてない。“今日はさすがに自分でも良かったと思うぜ”っていう日もあれば、“今日はへたくそだったなー”っていう日もあって、そのどっちでもいいんです。楽しんだ一瞬一瞬の果てに、それがあれば。

──ピッキングミスがなかったとか、リズムに上手く乗れたかどうかということとはまったく次元の異なる話ですね。

横山：全然ですね（笑）。一般的に言ったら、もしかしたらギタープレイヤーとして失格なのかもしれないですけど、人間の生き方として、すごくありな気がしちゃうんですよ。……なんか今日はアルバムの話も含めてすごい話をたくさんしちゃいましたね（笑）。でね、グレッチというギターはそういうところを、今の僕の生き方を投影してくれる楽器なので。もしかしたら、“えー!?”って思っている人もいるかもしれないけど、みんなに箱モノを手に取ってもらいたいですね。

取材・文◎梶原靖夫（BARKS）　撮影◎佐藤哲郎








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