【ライヴレポート】<LUNATIC FEST.>、「世界に誇れる最高のカルチャーにしようぜ!」

ポスト

LUNA SEA初主宰による史上最狂のロックフェス<LUNATIC FEST.>が2015年6月27日と28日の2日間、幕張メッセにて開催された。出演バンドは先駆者である先輩バンドから、影響を公言する後輩バンド、そして同時代を駆け抜けてきた戦友バンドまで全22組。全2日間全20時間の狂宴はLUNA SEAの25周年を締めくくる名目であると同時に、終わってみれば日本ロックの歴史に残る祭典となった。

◆<LUNATIC FEST.> 画像

速報レポに続いて、LUNA SEAを見続けてきたライターの山本弘子氏と増田勇一氏による詳細レポートをお届けしたい。なお、BARKSでは各バンドのステージをできる限り深くお伝えするため、両氏に執筆対象をシェアしてもらった。ぜひ2つのレポートを併せてご覧いただきたい。こちらのレポートは山本弘子氏によるものだ。

   ◆   ◆   ◆

25周年のアニヴァーサリーイヤーの締めくくりとして6月27日および28日の2日間にわたって幕張メッセで行なわれた<LUNATIC FEST.>は後世にまで語り継がれる伝説のフェスとなるだろう。いや、すでになったと言っても過言ではない。まずは世代もジャンルも飛び超えたバンドがありえない組み合わせで集結し、すべての出演者、そして参加者たちが持てるエネルギーを放出し、楽しみ尽くした今回のフェスを主宰したLUNA SEAに敬意を表したいと思う。

▲LUNACY画像(全6点)

6月27日、オープニングアクトのLUNACYを見るために、FATE STAGEのまわりは早くから多くのオーディエンスで埋めつくされていた。チケットが即日ソールドアウトした初日には約3万人のオーディエンスが集結。巨大なスタンディングの会場に3万人と言っても今ひとつ実感が湧かないかもしれないが、MOON STAGE、SHINE STAGE、FATE STAGEの3つのステージを移動するのもタイミングによっては困難なぐらいなのである。開演時刻の11時に2日間にわたってMCを務めるDJ BOOが登場。LUNA SEAの25周年を祝い、自身も「緊張のあまり、朝から何も食べていない」と実感を語って興奮を加速させる。

やがて、場内が暗くなりスクリーンに浮かび上がるのは“赤い月”と“LUNACY”の文字。ハンドクラップでそのときを待ちわびるオーディエンスの目の前についに伝説のバンドLUNACYが姿を表した。REBOOT後にインディー時代のバンド名LUNACYとして<黒服限定GIG>の無料ライヴを東京ドームで開催した経緯もあり、やってくれるとは思っていたが、RYUICHIは派手なメイクに髪を立て、SUGIZOは網シャツ、INORANはドレッドのエクステンションとヴィジュアルからして期待を裏切らない。オープニングは「CHESS」でいきなり刺激的なステージが繰り広げられ、INORANが鋭いプレイでシャウト、SUGIZOのギターが吠える。Jのシャープなベースがフィーチャーされ、真矢のパワフルなドラムと絡みあう「MECHANICAL DANCE」ではRYUICHIが煽りコール&レスポンス。もちろん、今のスキルを持ってしてのLUNACYなのだが、喉を締め気味のRYUICHIのヴォーカルスタイルもアレンジも音色も、当時の印象を壊さないのがこだわりにこだわる彼ららしい。

「今日のオープニングアクトをつとめますLUNACYです。“CY”のほうね(笑)。今日は俺たちと同じ時を駆け抜けた先輩、仲間、後輩たちが来てくれているんで、宇宙一、熱い幕張にしましょう! いいですか!?」──RYUICHI

そして、当時のLUNACYの狂いっぷりを象徴する高速ナンバー「SHADE」が披露され、場内はさらに大興奮。途中でワルツへと移行し、再びねじをキリキリ巻くようにビートが早くなる構成も含め、当時の彼らの異端っぷりが伝わってくる。まるで嵐のごとく3曲を演奏してLUNACYはステージを去った。

▲the telephones画像(全5点)

12時15分。キラキラ回るミラーボールの光の中、FATE STAGEに登場したthe telephonesは場内をLUNATIC DISCOに変えてしまう快楽グルーヴでオーディエンスを魅了した。「Monkey Discoooooooo」で幕を開け、彼らのヒット曲やキラーチューンがたて続けに披露されるというアガりまくりのセットリスト。「ここをダンスフロアにしようぜ」と叫ぶ石毛(Vo)がブリッジ状態でギターを弾いたり、岡本(Syn)がカウベルを叩いて上手下手と暴れまわり、振り切れたパフォーマンスと中毒性のあるビートでステージに集まるオーディエンスはもとより、離れたところで見ている人たちの身体も揺らせるステージを展開した。

「今日、初めて見る人も多いんじゃないかと思います。僕らにはコール&レスポンスがあって、“We are”と言ったら“DISCO!!”と叫んでいるのです!」と石毛がレクチャー。大コール&レスポンス大会に盛り上がり、「I Hate DISCOOOOOOO!!!」で“I Love LUNA SEA!”とアドリブで叫んだ彼らは、最強のラストナンバー「Love & DISCO」で至福と狂騒のステージを締めくくった。最後に7月22日にラストアルバムがリリースされること、11月3日にさいたまスーパーアリーナで無期限の活動休止前のラストライヴを行なうことを告知。LUNA SEAに影響を受けたと公言している彼らの一種宇宙的でぶっとんだライヴは、密室的空間を色鮮やかに染め上げてくれた。

▲TOKYO YANKEES画像(全5点)

12時50分。SHINE STAGEに登場したのはエクスタシー時代のLUNA SEAの先輩格に当たるTOKYO YANKEESだ。ステージ周辺には男子が多く集まり、メンバーが登場すると“ウォーッ!”という野太い歓声が上がる。1989年に結成された彼らは現在、NORI(G&Vo)、YOSHINUMA(B&Vo)、U.D.A(Dr&cho)のスリーピース編成で、重低音のきいた男気のあるヘヴィな演奏は存在感たっぷり。ステージ中央にはライダースジャケットが吊るされて、ロックを追求し続ける男の美学を感じさせる。

<LUNATIC FEST.>への感謝の想いを伝え、「今日は祭りだからな。オマエら、もっと盛り上がっていけるか!? じゃあ、あんまりしゃべる時間もないんで次の曲やります」というNORIのMCに続いて披露された「Drugstore Cowboy」では、爆撃機のような攻撃的でスリリングな演奏にオーディエンスから拳が上がった。イギリスのハードコアパンク&メタルを包括するバンド、モーターヘッドの「Ace of Spades」もカヴァーしたライヴでは最後にサプライズが。「TOKYO YANKEESはたまに臨時のギタリストを呼んでるんだ。今日も臨時のギタリストが来てます!」とX JAPANのPATAをステージに迎え入れたのだ。ギターバトルに場内が沸きに沸いたのは言うまでもなく、熱く渋いステージを締めくくった。

▲coldrain画像(全6点)

13時25分、日本のラウドシーンを牽引する新世代バンドとして評価の高いcoldrainはオープニング「The Revelation」から、ド迫力のマッシヴなサウンドを叩きつけた。ヨーロッパツアーなど海外でもその名を轟かせている彼らもまたLUNA SEAをリスペクトするバンドであり、ヘヴィでアグレッシヴであると同時に美しいメロディが際立つ“静”と“動”が混在しているのが魅力だ。「No Escape」では躍動感たっぷりのサウンドでオーディエンスを跳ねさせたほか、Y.K.CとSugiのギターのコンビネーション、アグレッシヴかつバンドの柱の役目を担うRxYxOとKatsumaのリズム隊も強力だ。伸びのあるクリーンなヴォーカルが魅力のMasatoが「今日のラインナップ見たらわかるだろ? 今年は<LUNATIC FEST.>が日本でいちばんヘドバンできるフェスだと思います」と沸かせ、「かかってこいよ!」というLUNA SEAを意識した煽りで、ガシガシ攻めるステージングを繰り広げる。

「歴史の一部になれて光栄です。僕らの前に出たバンド、後に出たバンドが作った歴史。coldrainは日本のバンドとして世界に広めて、日本に広めて、coldrainのフェスができるまでやります! リスペクト、LUNA SEA!」と叫び、ラストナンバーは「The War is On」。世界で勝負する後輩バンドの可能性を感じさせてくれた。

▲SIAM SHADE画像(全6点)

そして大歓声の中、MOON STAGEに登場したのは栄喜、KAZUMA、DAITA、NATCHIN、淳士の5人からなるSIAM SHADEだ。2013年に再々再結成を果たし、2015年10月にさいたまスーパーアリーナでデビュー20周年記念ライヴを行なう彼らのステージには男性からの熱い声援が飛び交い、デビューシングル「RAIN」から始まるセットリストは長年のファンにはたまらない。ハードかつ爽快なサウンドとキャッチーなメロディ、抜けのいいハイトーンヴォーカルとスキルに裏打ちされた演奏はさすがの安定感で、場内にシンガロングが響きわたった。

そしてオーディエンスを驚かせたのは突然の真矢の乱入だ。ドラムで参加と思いきや、「なんてカッコいいんだ! こんな日が来るなんて。バンドが大ブレイクしていろいろあったけど、同じステージに立てるなんて感無量だよね。俺からひとつお願いがあるの。あの有名な曲をここで聴いてみたいんだよな」と語りかけると“おお~っ!”という歓声が場内に沸き起こり、彼らの大ヒット曲「1/3の純情な感情」のイントロが奏でられた。真矢は聴き役かと思いきや、自ら歌い出して会場が爆笑。困惑する栄喜に「エネルギー使っちゃうと大トリが……。ここは僕たちにまかせてください」と止められ、その直後に「じゃあ、オリジナルを!」と真矢がリクエスト、「1/3の純情な感情」が本当に披露された。

曲は好きでも初めてSIAM SHADEを見たオーディエンスも多かったかもしれないが、変わらない5人が奏でる色褪せないヒット曲たちを生で聴くのは格別だったに違いない。MCでは大先輩、LUNA SEAに依頼されて出演を決めたことや、いつも温かく見守ってくれたことに触れ、「今回はJさん、RYUICHIさんに“栄喜、盛り上げてくれよ”と初めて指令が来ましたので、私、かなり燃えております」と沸かせた。ライヴはDAITAのタッピング奏法が冴える「BLACK」でイントロから大歓声。ポップなナンバーと英詞のハードなナンバーを織り交ぜて攻めた彼らのラストはテッパン曲「Don't Tell Lies」だ。場内からは「さすが!」という驚嘆の声が上がっていた。

▲Fear,and Loating in Las Vegas画像(全7点)

15時25分、FATE STAGEに登場したのはラウドシーンの未来を担うバンド、Fear,and Loating in Las Vegasだ。「Rave-up Tonight」で幕を開けたライヴは既成概念をぶっ壊す勢いのかたまり。エモ、スクリーモ、トランス、メタルなど様々なジャンルが交錯するサウンドや、曲の展開のめまぐるしさが強烈で、Soのオートチューンヴォーカルと、キーボードを操りながらスクリームで煽るMinamiのギャップもインパクト大。アッという間にそのステージにひきこまれた。本フェス最年少だが、その若さゆえの暴れっぷり、狂いっぷりも痛快だ。

「LUNA SEAさんは先輩っていう次元じゃないんですよ。25周年って言ったら、俺が2才のときからバンドやってる計算なんです。ウチのヴォーカルなんてタメですから(笑)。いちばん若手の俺らがちょっと生意気かもしれないですけど、ガンガンやっていくんで。同じ空間にいればきっと俺らの姿は見えると思うし、曲は届いていると信じているので一緒に盛り上げて行こうぜ! 幕張!」──Sxun(G)

そう煽って最新シングル「Let me here」を届け、2015年の秋にニューアルバムをリリース、10月からスタートする全国ツアーのファイナルが2016年1月7日の日本武道館に決定していることも告知。<LUNATIC FEST.>の初日はエクスタシー時代の先輩バンドが揃うということもあり、<エクスタシー・サミット>の再来とも評されてきたが、coldrainやFear,and Loating in Las Vegasのような若手が出演したことにも非常に意味があった。歴史に敬意を表しつつ、ぶち壊して新しいものをクリエイトしていくことでロック史は紡がれてきたからだ。

▲LUNA SEA画像(全8点)

そして先輩、X JAPANがみごとにドラマを作りあげたステージを終えて、いよいよLUNA SEAのライヴだ。とは言え、SUGIZOはX JAPANのギタリストでもあるので2ステージ連続という異例のアクトでもある。登場前にSIAM SHADEの淳士がドラムのサウンドチェックをするという信じられない光景も飛び出し、19時40分をまわった頃に場内が暗転。スモークがたちこめ、SE「月光」が流れると場内は大歓声に揺れた。オープニングはあちこちから歓喜の声が上がった「LOVELESS」。SUGIZOはトリプルネックギター、INORANはアコースティックギター、その切なく美しいアンサンブルから一転。特効とともにJ、INORAN、SUGIZOがはじかれたようにアグレッシヴなパフォーマンスを展開する「Dejavu」に移行し、シンガロングが場内に響きわたった。SLAVEにとってはアルバム『MOTHER』がリリースされた当時のツアーを思い出させる流れだ。

SUGIZOのクールなギターリフに歓声が上がった「Rouge」、真矢の魂の一打一打が響き、JのベースソロとRYUICHIとのヴォーカルのかけあいに場内が湧いた「JESUS」、INORANのカッティングにどよめきが起こった「TONIGHT」と、キラーチューン連続のセットリスト。2日目に関してもそうだったのだが、アルバム『A WILL』のツアーが終了した今のLUNA SEAならではの選曲であり、自らが主宰したフェスへの感謝の想いが伝わってくる。

「先輩たちともなかなか会わなくなっちゃって。久しぶりに楽屋で挨拶して笑顔を見たら、あの頃のままなんだよ。この会場の中にも“久しぶり”ってハイタッチした仲間いない? このシーンを一緒に支えて、盛り上げてきた仲間がこれだけいて、それが<LUNATIC FEST.>だなんて、俺たちホントに幸せです。今日は残念ながら来られなかったけど……いや、違うな。きっと今夜、この会場に来てくれていると思います」

RYUICHIが感慨深げに話した後に披露されたのは、hide with Spread Beaverの「ピンクスパイダー」。このカヴァーは間違いなくこの日のハイライトとなった。想定外のサプライズに“信じられない”という驚愕の歓声が上がり、スクリーンに生前のHIDEの写真が映し出された。SUGIZOが宙を指し、HIDEに届けとばかりにシャウトする。HIDEとの出会いがあったからこそ、LUNA SEAの今があり、繋げていくことの大切さを知っている彼らだからこそ、この最狂のフェスが実現したのだと思う。

「LUNA SEAは雨バンドをやめました」とRYUICHI。以前は“嵐を呼ぶバンド”と評されていたが、復活後は「5人が揃っても天候が乱れなくなった」とオーディエンスを笑わせ、後半の「STORM」へと駆け抜けていった。オープニングアクト、ゲストセッションと喉を酷使したせいか、RYUICHIの声は珍しく掠れていたが、それも<LUNATIC FEST.>に賭ける並々ならぬ情熱があってこそ。「HIDEさんの愛に救われて、声が辛くてもこんなに達成感があるんだなって」と想いを伝えていた。

出演者たちが次々に登場したアンコールでは、最後に呼びこまれたYOSHIKIがHIDEのオリジナルギター“イエローハート”を持ち、「今日は本物のHIDEも連れてきました」と笑顔。LUNA SEAの初期ナンバー「PRECIOUS…」を全員でセッションするという超レアな光景が繰り広げられた。エクスタシー時代の先輩であるLADIESROOMのリーダーGEORGEが、長いMCで嵐を巻き起こす初日ならではの微笑ましいハプニングもありつつ、メンバー紹介に続いて、届けられたラストナンバーは「WISH」。こうして最初から最後まで濃厚過ぎる<LUNATIC FEST.>初日は幕を閉じたのだった。

   ◆   ◆   ◆

<LUNATIC FEST.>の2日目となる6月28日のラインナップも初日に負けず劣らず濃厚である。BUCK-TICK、GLAY、LUNA SEAが一同に会するというだけでも当時のシーンの真っ直中にいたリスナーにとっては垂涎ものだが、オーディエンスの世代は実に幅広く、20代の参加者も目立つ。初日同様、男子が多いのにも驚かされた。蓋を開けてみなければわからなかった現象だが、2日間を通して、各アクトが終わったときに「初めて見た」「カッコいい」という感想を数多く耳にしたのも印象的で、LUNA SEAが本フェスを主宰した意味はとてつもなく大きいものだったと思わされた。

2日目もオープニングアクトはLUNACY。多大な影響を受けたポジティブパンク/ゴシックロックの代表格、バウハウスのナンバーをSEに「FATE」で幕を開けたこの日のライヴは、初日よりエッジを増してダークに振り切れていた。インディー時代の彼らはほぼMCをせずに客席を突き放すようなライヴをやっていたが、そのステージングは当時を彷彿とさせるものだ。2曲目に当時のデモ音源にしか収録されていなかった(後にライヴDVDには収録された)「SUSPICIOUS」が披露されると怒濤の大歓声。ラストは初日と同じく「SHADE」が叩きつけられ、終始クールな佇まいを貫き通しつつ、「楽しんで帰ってくれよ」とRYUICHIが言い残してステージを去った。

▲凛として時雨画像(全4点)

11時35分。MOON STAGEに登場したのはSUGIZOやJとの交流も深い、凛として時雨だ。オープニングナンバーは「I was music」。“いいよ おかしくなって”という歌詞が“狂気”を意味する“LUNATIC FEST.”にふさわしい。また、日本武道館のような大会場でもスクリーンを用いない彼らは<LUNATIC FEST.>でも、そのアティテュードを変えることがない。遠く離れたところから見ているオーディエンスに対しても音楽だけで勝負するステージを繰り広げた。TK(Vo&G)の鋭利かつ繊細なギターと345(Vo&B)の骨太なベース、ピエール中野(Dr)の攻めのドラミングが織り成すサウンドがTKと345のハイトーンツインヴォーカルとあいまって独特の空気をつくり出す。すると、ここが幕張メッセだということを忘れ、遠くに連れ去っていかれるような不思議な感覚に襲われた。代表曲のひとつ「DISCO FLIGHT」では345もオーディエンスも飛び跳ね、「感覚UFO」で意識を飛ばせて、空気を振動させるような演奏を響かせる。

「またここから歴史が始まると思います。今日は最後まで楽しんでいってください」──TK

赤く染まるステージの中、最後に届けられた「傍観」は突き刺さりまくりの圧巻のナンバー。“僕は知らない 僕は見えない 僕は汚い 僕は消えたい”という歌詞、狂気と静寂が交錯する演奏に息を飲んで聴き入った。

▲minus(-)画像(全4点)

12時50分、SHINE STAGEに登場したのは、元SOFT BALLETの藤井麻輝と森岡賢によるユニット、minus(-)だ。犬猿の中と噂されていた2人が2014年、再びタッグを組んだことはファンを驚かせたが、ニューウェイヴ直系のメロディと張りつめた緊張感、新たなアンビエント感を提示する楽曲は素晴らしく、サポートドラマーFLiPのYuumiを迎えた3人編成で遠巻きに見ていたオーディエンスをも徐々に魅了していく。

黒いブラウス姿の森岡賢がいきなりテンションマックスで場内を手拍子で盛り上げ、上手下手へと動きまわりながら歌う新曲に始まったステージは、続けて1stミニアルバム『D』からのナンバーを披露。エキゾチックでテクノな「No_4」では、鍵盤とヴォーカルを兼任する森岡の一度見たら忘れられないダンスがSOFT BALLET時代を彷彿とさせ、藤井はアナログモデリングシンセVIRUS T12を操って研ぎすまされたフレーズでminus(-)のサウンドにエッジと奥行きを与えていく。ロマンティシズムと狂気が共存する彼らのライヴは、藤井が歌う深い哀しみをたたえた「B612」(ver.0)で締めくくられた。

▲KA.F.KA画像(全7点)

同じくSHINE STAGEに14時50分に姿を現したのは、新人にしてスーパーバンドのKA.F.KAだ。SUGIZOが敬愛する土屋昌巳、ISSAY(Der Zibet)、森岡賢(minus(-))、ウエノコウジ(the HIATUS)、MOTOKATSU(THE MAD CAPSULE MARKETS)というありえない個性派揃い。ライヴは土屋昌巳の最新ソロアルバム『Swan Dive』収録インストゥルメンタルからスタートし、途中からタキシード姿のISSAYが登場。「ようこそKA.F.KAです。先月1stアルバムをリリースしたばかりの新人です。どうぞよろしく。そのアルバム『ファントム ノアール』の中から1曲、聴いてください」と「Jack The Midnight」を披露した。ティム・バートンにも通じるダークファンタジーな歌の世界、闇のカーニヴァルのような土屋昌巳のギターフレーズ、ソリッドでパワフルなリズム。混ざり合うとは思えないメンバーが起こすバンドマジックほか、純度の高いロックの衝動が根底に流れているところがKA.F.KA最大の魅力だ。ウエノのカミソリのようなベースがフィーチャーされる「The Prisoner」では15歳の加害者と被害者の中に潜む狂気を浮き彫りにするようなゾクッとする歌を響かせた。

スペシャルなフェスに招かれたことに感謝を述べた土屋昌巳が「スペシャルついでに、僕のとてもスペシャルな友達が一緒に演ってくれます」と告げると場内からは歓声が。「知ってるくせに」と沸かせ、呼び込まれたのはSUGIZOだ。最後に演奏されたのはKA.F.KAを結成するにあたって刺激になったという伝説のポストパンクバンドJoy Divisionのカヴァー「Transmission」で、土屋とSUGIZOのギターバトルも最高に刺激的。初めて彼らを見たという人が大半だったと思うが、場内のあちこちから驚嘆の声が上がっていた。

▲MUCC画像(全5点)

14時35分。MOON STAGEで最新ミニアルバム『T.R.E.N.D.Y-Paradise from 1997』収録曲「睡蓮」でライヴをスタートさせたのはMUCCだ。LUNA SEAのメンバーも“ボーダーラインを超えていくバンド”と彼らを評価していたが、そのダイナミックでエッジの立ったヘヴィなサウンドと日本人ならではの情緒的なメロディラインが絡み合う楽曲&演奏は海外からの評価が高い。新曲のあとはライヴのキラーチューン「ENDER ENDER」で盛り上げ、百戦錬磨のライヴ力をフルに発揮するステージングをみせる。低域に艶のある達瑯のヴォーカル、ミヤ(G)、YUKKE(B)、SATOち(Dr)のムダのない研ぎすまされたバンドアンサンブルからは、結成18年目を迎え、今なお最前線で新たな刺激を取り入れながら進化し続ける姿勢が伝わってくるようだ。

「オマエら、全員の顔、覚えて帰るからな!」と煽った達瑯はその台詞がLUNA SEA初の東京ドーム公演<LUNATIC TOKYO>(1995年)のRYUICHIのMCから拝借したものだと笑わせた。「このMCをステージでしたのは2回目です。初めて言ったのはMUCCの初ライヴ。小さいライヴハウスでガチガチに緊張している達瑯少年をほぐしてくれた言葉です。ありがとうございます。でも、このステージに立って思った。全員の顔を覚えるのはムリだ!(笑)。少なくとも俺には。代わりにここにいるみなさんに、MUCCを覚えてもらおうと思います!」と場内の空気を掻っさらった彼らは、会場全員をその場にしゃがませ、SATOちのカウントでジャンプするといったMUCCのライヴに欠かせぬ盛り上がり曲「蘭鋳」へ突入。ラストナンバーを新曲「TONIGHT」で締めくくった。

▲[Alexandros]画像(全5点)

15時20分、各地フェスにひっぱりだこのバンド[Alexandros]がFATE STAGEへ姿を現すと場内に大歓声が響きわたった。7月17日の日本武道館ワンマンもソールドアウトした彼らのステージはその勢いを物語るもの。エモーショナルでアグレッシヴ、躍動感たっぷりのサウンドも魅力だが、全曲がメロディックということもあり、川上の伸びやかなハイトーンヴォーカルは初めて聴く人の耳にもスコーンと飛びこんでくるようだ。MUSEやColdplayなどのオープニングアクトを務め、UKロックの影響を色濃く感じさせるバンドでありながら、音楽的な親しみやすさも兼ね備えているところが彼らの魅力である。

セットリストには代表曲「Starrrrrrr」や「Kick & Spin」が盛りこまれ、磯辺(B)が「<LUNATIC FEST.>最高です! 俺らのライヴみたいな感じで楽しんでいます」と心境を話すと、続けて川上が、“小学生のときに近所でSLAVEと出会った”というエピソードや、“海外滞在中にLUNA SEAのTV映像を見て衝撃を受けた”という話を披露。「今日、楽屋に挨拶に行ったら“好きなようにやっていいからね”と言っていただいたので、思う存分楽しみましょう! 我々も楽しみます!」と場内を煽り、熱い時間を駆け抜けていった。ラストに演奏された最新シングル「ワタリドリ」が、大空を飛んでいくように幕張メッセを野外へ変えるマジックを持つ曲だったこともつけ加えておきたい。

▲LUNA SEA+SESSION画像(全6点)

GLAY、D’ERLANGER、BUCK-TICKのアクトを挟んで、この史上最狂のフェスを締めくくるLUNA SEAはオーディエンスがハンドクラップで待ちわびるなか、19時20分にMOON STAGEに登場した。オープニングは世界中の光を集めたような強さを放つ「Anthem of LIGHT」だ。「TONIGHT」「DESIRE」「TRUE BLUE」とLUNA SEAの歴史を語るに外せない代表曲やヒット曲が次々に演奏されるセットリストは、王道にしてレアだったと言えるだろう。<LUNATIC FEST.>を最後まで楽しみ尽くしてほしいという主宰者としての気概が伝わってくる。中盤では気合いの入ったSLAVEたちを唸らせる最強のグルーヴ&中毒性の高いナンバー「FACE TO FACE」が披露され、火柱があがる演出も迫力満点。SUGIZOがヴァイオリンに持ち変えると野太い歓声が上がった「Providence」では聖なる旋律が幕張メッセを包み込んでいった。

「このフェス最高じゃない? みんな最高です。どうもありがとう。今回、いろんなバンドを見て、やっぱり音楽はやり続けないとダメだなって実感した。LUNA SEAもみんなと共に歩くよ」──RYUICHI

その宣言に会場から割れんばかりの拍手と声援が起こり、続けてhide with Spread Beaverの大ヒット曲「ROCKET DIVE」のカヴァーがみんなに贈られた。初日の「ピンク スパイダー」にも驚いたけれど、まさか2日続けて演ってくれるとは。しかも、「ROCKET DIVE」のようなロックンロールをLUNA SEAヴァージョンで聴けたことは実にスペシャルな出来事だった。「絶対(ここに)来てるよ。HIDEさんの曲を歌うと背中を押される気がするんだ」と興奮気味に話したRYUICHIは、「こういうイベントをまたやりましょう!」と叫び、最新アルバム『A WILL』から初期のLUNA SEAを彷彿とさせる高速チューン「Metamorphosis」へ。「TIME IS DEAD」ではSUGIZOとJがひとつのマイクでコーラスし、RYUICHIとINORANが絡む場面も。本編ラストは「ROSIER」。エンディングではSUGIZOが狂ったようにギターをかき鳴らし、ドラム台から降りてきた真矢は、全ての力を出し尽くしたように足下がおぼつかなかった。初日に喉を壊したRYUICHIがたった1日で復活を遂げ、オープニングアクトのLUNACYからトリのLUNA SEAまで歌いきったこともこのフェスに賭ける情熱と執念の成せる技だったと言えるだろう。

アンコールでは「この会場を後にするのも、すごく寂しくなっちゃったんだけど。今回、賛同して出演してくれた先輩たち、仲間たち、後輩たち、足を運んでくれた仲間たち、寝ずに頑張ってくれたスタッフ、TVの前のみんなにも感謝しています」と述べ、初日同様出演者たちが呼びこまれた。

「がんばってる姿を見たら涙が出てきた」と語ったGLAYのTERU、「<エクスタシー・サミット 1992>のLUNA SEAのように、白い衣装で出てきました」と登場したROTTENGRAFFTYのNOBUYA、「僕らの憧れの大先輩」と改めて紹介された土屋昌巳、「僕らを初めてツアーに連れていってくれたのはこの方です」と言われ照れ臭そうだったAIONのIZUMIなど、初日に負けず劣らずの豪華メンバーがステージに揃ったところで、LUNA SEAのデビューシングル「BELIEVE」のセッションが繰り広げられた。

熱い狂乱の2日間を振り返るメンバー紹介で、「最高の気分です!」と叫んだINORAN、「魂のバトンを次の世代、さらに次の世代に繋いでいって、日本のロックシーンを世界に誇れる最高のカルチャーにしようぜ!」と告げたSUGIZO、「夢にまで見たフェスがやれたことに感謝しています。とんでもないバンドばかりが集まって、俺たちの25年を祝ってくれました。ムキになって刺激しあって、ときには喧嘩して突っ走ってきただけのことはあるなと。そんな奇跡みたいな2日間をありがとうございます! でも、奇跡を起こしたのは俺たちじゃなくて、この会場に来てくれたみんな。25年間、俺たちを支えてくれたみんなが起こしたんだぜ! それだけは忘れるな!」と力強い言葉を残したJ。「さっきSUGIZOが“幕張!”って叫んだのが、“アドバルーン”に聞こえたんだよ。なるほど。この会場はみんなの夢を乗せてるアドバルーンだと。そうしたらここがアドバルーンにしか見えなくなっちゃったんだよ」と沸かせ、“アドバルーン”コールで盛り上げた真矢。狂宴を締めくくるナンバーは、途切れない夢を繋いでいくような「WISH」。感動の笑顔と涙がオーディエンスからこぼれた。

5人がステージを去り、フェスのMCを務めたDJ BOOも感謝の言葉を述べ、感極まって涙を流していた。ステージの裏にもきっとたくさんのドラマが生まれていたことだろう。数々の伝説を生んできたLUNA SEAだが、この<LUNATIC FEST.>が残した意味合い、メッセージの大きさを今は噛み締めていたいと思う。

取材・文◎山本弘子


<LUNATIC FEST.>

2015年6月27日(土) 幕張メッセ 1~4 ホール
2015年6月28日(日) 幕張メッセ 1~4 ホール
OPEN 9:30/START 11:00 / END 20:00 予定
■出演アーティスト
【6月27日(土) 全12組】
LUNA SEA、X JAPAN、DEAD END、DIR EN GREY、Fear, and Loathing in Las Vegas、SIAM SHADE、LADIES ROOM、coldrain、TOKYO YANKEES、the telephones、9mm Parabellum Bullet、LUNACY(Opening Act)
【6月28日(日) 全12組】
LUNA SEA、BUCK-TICK、D’ERLANGER、GLAY、[Alexandros]、MUCC、KA.F.KA、AION、minus(-)、ROTTENGRAFFTY、凛として時雨、LUNACY(Opening Act)

◆【ライヴレポート】<LUNATIC FEST.>にこそ、フェスのあるべき形のひとつが──増田勇一

この記事をポスト

この記事の関連情報