【インタビュー】真空ホロウ、自身の名を冠した1stアルバム「すべてがリード曲として打ち出せる」
真空ホロウが4月8日、オリジナルアルバム『真空ホロウ』をリリースした。2012年10月のメジャーデビューから2年半、ついに発表された1stフルアルバムには自身のバンド名がタイトルに掲げられている。そのサウンドは集大成と呼ぶに相応しいもの。これまでに発表されたシングルナンバーやミニアルバム収録曲、さらにはインディーズ時代の新録曲などが収められた全12曲が、彼らの軌跡を物語りながら、しっかりと現在地点を刻み込むことに成功した。
◆「回想列車」ミュージックビデオ
3ピースならではのスリリングで一体感の高い演奏はもちろん、各パートをセパレートして構築したという挑戦的なナンバーや、松本が「正義」と語る十八番の付点8分ディレイまで、アルバムにはこだわりのサウンドがそこかしこに息づいている。3人の音楽的背景や“楽曲製造工場”の仕組みなど、アルバム『真空ホロウ』を基に彼らの音楽観を深く掘り下げるロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■「回想列車」をリリースするためにこれまでの流れがあった
■そこに2年半をかけたということなんです
──待望の1stフルアルバムを、今、このタイミングでリリースする意図と、どのようなイメージでアルバム制作を進めていったのか、そこから訊かせてください。
松本:“名は体を表す”じゃないですけど、そういったつもりで、このアルバムは2年半をかけて作ってきました。これまでも作品はリリースはしてきましたが、それらを“シングル”や“ミニアルバム”と呼んできたのは、主に曲数の問題だったんです。「コンセプティブな6曲ができたから、じゃあミニアルバムという形態で」とか。だから、自分たちとしては、いつでも1stフルアルバムを出せる気持ちがあったんです。その中で、すべてがリード曲として打ち出せるくらいの自信を持って、12曲を収録できたというのが、今、このタイミングだったということなんです。
──と言うことは、現時点での真空ホロウの集大成という感覚ですか?
村田:まあ、そうですね。実質的にも、過去にリリースした曲もいくつかあるので、そういう意味では、集大成的な面もあります。ただ、自分たちの気持ちとしては、ここまで来て、よし、これからだという区切りの1枚なんです。1曲目の「開戦前夜」なんて、まさに“ここからだ!”と、自分自身に対してムチを打つような気持ちも込めていますし、それと同時に、聴いてくださるみなさんに対しては、今まで以上に期待を持っていただけるような作品にしたいと思って作っていました。
大貫:アルバムの中には、それこそ2年半前に作った曲もあれば、つい最近の曲もあるので、1stフルアルバムという形で、改めてそれらを聴き直してみると、自分たちの成長過程も見えてきました。それに、考え方やアレンジ面でも、今はやっていないけど、昔はこうやっていたなとか、いろんな発見もあって、面白かったです。
──どういった点が、この2年半で一番変化、成長したと感じていいますか?
松本:以前から、自分の言葉、メロディに寄り添うというテーマで、3人が言葉や情景や色を濃くしていくことを軸に、アレンジをしてきました。それが最近は、言葉さえも“ひとつの楽器”と言えるくらいに、自然とバンドと呼吸が合わせられるようになってきたことが、自分にとってすごく印象的で。こうやったら、ああくるかという、無意識下のグルーヴが出せるようになってきて、そこを聴いていると、とても楽しいです。これは極端な例ですけど、それこそヒップホップくらい、言葉とビートの“積み”を一直線にできたらなと、最近は目論んでいるんです。今後は、そういう曲があってもいいかなって、思っています。
──「MAGIC」は、そういうアプローチの第一歩という意識もありましたか?
松本:そうかもしれないですね。この曲は、かなり意図的に波形を刻んだり、各パートをセパレートして、ダビングで重ねていったりしたので、僕らにとって、挑戦的な1曲になりましたね。
──そういった新しい試みの曲や、既にリリースしている曲を含めて、新譜に収録された12曲は、どのようにチョイスしていったのですか?
松本:どの曲も、1曲だけでも十分に成立していて、だけど12曲が一緒になることで、さらに凄味が増すと言うか。お互いに殺し合わない楽曲たちを取捨選択して、精鋭を集めたという感覚です。ですから、曲順から曲間まで、すべてにこだわって作りました。
──その中で、アルバムとしての世界観が見えてきたような、キーとなる曲となると?
松本:個人的には、「回想列車」が終わって、そこから後半に向けて、どんどんとドロドロとしていく流れが、真空ホロウの核だと思っています。
村田:おいおい、リード曲の「回想列車」を挙げろよ(一同爆笑)。いやいや、ちょっとツッコミたかっただけですから、全然大丈夫ですけど(笑)。
──ははは。確かに「回想列車」以降の、「CAGE」だとか、「Tokyo Blue bug」と「こどものくに」の流れは、とてもグッと引きつけられました。しかもこの流れも、「回想列車」があってこそ、作り出せた流れですよね。
松本:そうなんです。後半の曲たちって、自分たちの閉じた部分というか、内面的にヒリヒリした部分、つまり、一般的に言うと“大衆性のない音楽”だと思うんですが、それをどこまでポップにできるかということを、これまでのミニアルバムでも考えて作ってきました。そこに、さらなる風穴を開けるというか、もう一歩、踏み出すべきなんじゃないかと思ったんです。「MAGIC」を入れたのも、そのためのひとつの要因でしたし、それもこれも、「回想列車」という曲があったからこそできたわけです。
──「Tokyo Blue bug」は、スタジオライブかのような、他の曲とは違う独特な質感がありますが、これも意図してのものですか?
松本:「MAGIC」以外のベーシックトラックは、全員で「せーの」の一発録りなんです。だけどその中でも、「Tokyo Blue bug」は、さらに音数を減らして、サウンド観としても、曲に寄り添うために、枯れた質感に仕上げようと、よりデッドな音にしました。
──なるほど。そういったいろんな試みの枝葉の中心に、「回想列車」が大黒柱のように存在しているわけですね。
松本:善くも悪くも、「回想列車」をリリースするために、これまでの流れがあったと思っています。「回想列車」は、2011年に作っていた曲で、これをどのように発表するか、そこに2年半をかけたということなんです。
──「回想列車」は、元々は弾き語りバージョンで『The◎』(2014年/ライブ会場限定盤)に収録されていましたよね。それを、どのようにバンドアレンジにしていったのですか?
松本:実は、順番が逆なんです。最初にバンドアレンジで作っていて、それをアコースティックバージョンにアレンジしたものを『The◎』に収録したんです。ですから、元々の形が、今回のアルバムに収録したアレンジになります。
村田:この曲は、最初の3人のセッションで、ほとんどアレンジが決まりましたね。そこから後に、ストリングスを足していったという感じです。
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