【インタビュー】西村由紀江、「30周年を前に“私はこの方向で進もう”と思えるアルバムが出来た」

■ショパンやベートーベンもその当時の人にはロックみたいなもので
■急にジャジャジャジャーン！って始まった時に聴衆はびっくりしたと思う

▲『スマイルピアノ500』プロジェクト

──そして、震災のあとにもまた、縁がつながることも多かったと思います。

西村：本当にそうですね。『スマイルピアノ500』の活動ではいろんなことがあって、ここでは語り尽くせないんですけど、一つ挙げるとすればピアノってこんなに愛すべきものなんだということを、被災地の方々から改めて教わりましたね。ピアノって、そのおうちの方にとって、物じゃなくて家族なんですね。子供たちは「ピアノが帰って来た！」って言うんですよ。いなくなってずっと淋しかった、という表現を自然にするんです。ああそうか、大切な家族なんだと。私にとってピアノは40年以上、あまりにも身近にあるので、家族だとかいとおしいとかいう気持ちを、ともすると忘れてしまうんです。でも、こんなにも素晴らしくていとおしいものを私はいつも弾いてるんだと思うと、コンサートで弾く時の気持ちも変わりました。被災地に行くとそういう原点みたいなものを教わりますね。ピアノのことだけじゃなくて、生きることの原点だとか、人間と人間のつながりの原点だとか。

──ぜひ、ずっと続けて行ってほしいと思います。そして2015年はこれから、どんな活動をしていきますか。

西村：とにかく自分らしく、自分の音楽を通じて出来ることをマイペースで続けて行く。それだけです。先ほどお話したように、私のピアノを聴くことで、少しでも安らいだり元気になったり、自然に心の扉を開いてもらえたら。　それが積み重なることで、世界の人たちの心が優しくなれるお手伝いができればと思っています。

▲『My Stories』通常盤

──いい話がたくさん聞けました。今日はありがとうございました。で、最後におまけの質問なんですけども。西村さん、ロックとかポップスとか、そっちのジャンルの音楽って普段聴かれたりします？

西村：聴きますよ。私は中学生の頃から洋楽に興味を持ち始めたんです。どっちかというとブリティッシュが好きですね。高校の時に流行っていたのがブリティッシュポップスで、ポリス、デュラン・デュラン、デヴィッド・ボウイとか。だから今でもなんとなくラジオを聴いていて、好きだなと思うアーティストはイギリス系の人が多いです。大学に入った頃は、デヴィッド・ボウイやスタイル・カウンシル、シンプリー・レッドのコンサートに行ったりしてました。

──ちなみに最近のお気に入りというと？

西村：最近はですね、マルーン5とか、テイラー・スウィフトとかが好きかな。去年は、ローリング・ストーンズのコンサートも行きましたよ。

──それは純粋にリスナーですよね。

西村：純粋にリスナー、ファンです。

──そういう音もやってみたいとか、思ったりします？

西村：ええ、もちろん。作る音楽は全然違いますねって言われるんですけど、実はコード進行とかを大いに真似させてもらってるんですよ。リズムがエイトビートだからロックだとか、そういうのは私の中には全然なくて。いろんな音楽から常に刺激を受けています。

──面白いです。聴くことと、作ることと、分けているわけではないという。

西村：そうです。さっきもスタッフと話してたんですけど、ショパンやベートーベンもその当時の人にはロックみたいなもので、びっくりしたと思うんですよ。不思議な和音とかね。バッハなどのバロックを聴いていた人にとっては、ベートーヴェンの「運命」なんて、急にジャジャジャジャーン！って始まった時に、聴衆はびっくりしたと思うし。あれから何百年も経ってるから、昔の古い曲のように思われるけれども、そういう意味ではジャンルってあるようでない、と思うんですね。だから、ビジュアル系のロックのコンサートに行った後に思いっきり静かな曲が生まれることもあるんですよ。何か、奥に熱いものがあるのが好きですね。意外に、ピアノのコンサートは一番行かないかもしれないです。

──それは思いっきり意外ですね（笑）。

西村：行かないし、家でもあまり聴かないし。ピアノの音楽を聴いていてもリフレッシュにはならない（笑）。ロック系のライブは、今年もできるだけ足を運びたいと思っています。

取材・文◎宮本英夫





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