【インタビュー】Purple Stone、完全復活作に「3人でステージに立てる嬉しさや貴重さ」

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■宅録すると時間の制限がないじゃないですか
■最大限時間を使って納得いくまで弾くことができた──GAK

▲風麻(B)

──その後1stミニ・アルバム『NEXUS』を完成させて順調にバンドが進んでいく中、2014年3月にkeiyaさんの喉疾患で、半年間の活動休止を余儀なくされました。

keiya:すごくショックでした。当初は結構深刻な状態だったんです。ホームページ上で細かく説明すると病状が伝わりにくくなってしまうので、“喉疾患”という言葉を使わせてもらいましたけど、実は脳神経の病気だったんです。左半分のいくつかの神経をやられてしまって、そのうちの一つに声帯の神経が入っていたんですね。歌うどころか全く喋れないし、食べ物を飲み込むのも難しい状態になってしまった。最初は「原因不明で治らないかもしれない」と言われたんです。その後、実家で療養して、良い医師に巡り合えたことで治療法も分かったんですけど、珍しい病気なので、いつ治るか分からなかったんです。

──病状は快方へ向かえど、完全に治るのがいつくらいになるか、もしくは完全には治らないのかもわからなかったということですか?

keiya:そうですね。喉のポリープなら、これくらい休めば復帰できるということが分かりますよね。でもそうではなかったから。だけどずっと待っているわけにもいかないから、自分の中で活動休止から半年後に復帰しようと決めたんです。その時点で完治している保証はなかったけどライブを決めて。それからいろんな医者に行ったり、いろんなことを試した結果、ホントに半年で完治しました。医師の方も、「そんなにすぐ治るの?」とビックリしていました(笑)。

風麻:本当にホッとしました。keiyaが療養している間もGAKと2人でライブは続けていたので、復帰ライブでは、“ああ、この狭さや”と感じたという(笑)。keiyaはやっぱりここに立つべき人だなと。2人でライブをしたときもボーカリストがいるような感覚でやっていたけど、やっぱり実際にいるのといないのでは全く違うもので。3人でステージ立てることの嬉しさや貴重さを改めて感じました。

GAK:風麻くんとの2人のステージにも正直怖さは感じていなかったんです。でも、実際にステージに立つと、ファンの方々が不安そうだったり悲しそうな表情をされていて。そういう状況で、演奏面だけでなく、いかにみんなのモチベーションを上げるかということが課題で、ライブのたびに風麻と話し合いました。2人のライブを通して、keiyaくんがただ歌っているだけじゃなくて、もっと大きなものを背負っていることも感じたし。そういう意味では大きなアクシデントだったけど、バンドにとって意味のある半年になったと思います。

▲「甘酸っぱいマンゴー」初回盤

──完治されて本当に良かったです。そして、Purple Stoneの再スタート作となるシングル「甘酸っぱいマンゴー」が11月26日にリリースとなります。

keiya:僕が療養に入る前に「シングルを作ろう」という話があって、何曲か作っていたんですよ。表題曲の「甘酸っぱいマンゴー」は、その中の1曲です。その時点では歌詞がなかったし、今回のリリースにあたってアレンジもだいぶ変えました。

GAK:原曲は僕が作ったんですけど、最初のデモの段階ではもっとシンフォニックな感じでした。ストリングスが前面に出ていて、テンポの速いエヴァネッセンスみたいな。だけど、歌詞が乗ってメロディもいじって、試行錯誤を経たことで今の形になりました。

keiya:歌詞に関して言えば、実は僕、マンゴー・アレルギーなんです。マンゴーはすごく美味しそうだけど、食べられない……みたいなことを考えていたら、恋愛と近いものがあるなと。手が届きそうで届かないとか、想いを伝えたくても口に出せない…みたいな、もどかしい恋ってあるじゃないですか。だから発想が普通と逆なんですよね。片想いをマンゴーが食べたくても食べられない状況に例えるんじゃなくて、マンゴーが食べられないことを書いたら、ラブソングとして捉えられる歌詞になったという(笑)。

──なるほど(笑)。そういう書き方をすることで、危険な香りのする女性に惹かれてしまった状況とも解釈できますね。

keiya:そう。高根の花に手を伸ばすというシチュエーションを書きたかったんです。手が届かないものを“欲しい”と言うことはカッコ悪いことかもしれないけど、僕はどんなリスクを背負ってでも「それが欲しい」と言えることはとてもカッコ良いと思うんです。でもみんながそんなに強いわけじゃない。だから、“欲しい!”という願望がありつつ、“いや、でもなぁ…”という弱気なところもあるというグチャグチャな心理を描きました。そのほうがリアリティーがあるなと。

──多くのリスナーの共感を得られそうな歌詞になっています。プレイ面で意識したことも話してもらえますか。

風麻:テンポがすごく速いんですよね。パンクの曲をカバーしたこととかもあるけど、この曲は群を抜いて速い。最初にスタジオで合わせたときに、「ちょっ、ちょっと待って…」みたいになって(笑)。そういうところからのスタートだったのでレコーディングも必死でした。

──ベースの音の定位がかなり低くて、太くウネッているのがカッコいいです。

風麻:ウネリはすごく好きなので。音を立たせてソリッドなドライブ感を出すアプローチではなくて、「甘酸っぱいマンゴー」はこういう方向でいくことにしました。これだけテンポが速い曲をピック弾きで刻むと、弾いていない5弦もかなり振幅するんですよ。そうするとすごくボヤケたグルーヴになってしまうので、そこは気をつけましたけど、全体として弾いててすごく楽しかったです。

GAK:ギターは、keiya君ももともとギタリストだから2人で相談しながら、レコーディングのときには立ち会ってもらったりしたんですね。バッキング・パートをkeiya君にスタジオで弾いてもらって、僕はリード・ギターを自宅で録ったり。そうやって、キャラクターの異なる2人のアンサンブルを活かした形になっています。

keiya:僕は特に、速い刻みは誰にも負けへんちゃうかなというくらい自信がある。クリックを切っても、ずっと一定のテンポで弾けますから。それを活かさない手はないので今回弾くことにしました。

風麻:keiyaは、相当ギター上手いですよ。

keiya:ライブでも弾きたい気持ちはあるけど、ギターを弾きながら歌うとマイクスタンドから動けないじゃないですか。ライブのときは動きでみせたり、前に出ていってお客さんを盛り上げたりしたいので。でも、ワンマンライブとかができるようになって曲数が増えたら何曲かは弾こうかなと思っています。

GAK:そういうことも試してみたいですね。自分のギターパートに関して言えば、宅録すると時間の制限がないじゃないですか。最大限時間を使って納得いくまで弾けたので、わりと良いテイクが録れたかなと思います。一番悩んだのはシンセでしたね。ストリングスを入れつつも、シンフォニックよりはポップな感じだったり、デジタリックな感じに持っていきたいというのがあって。いろんな音色を散りばめたり、冒頭にフィルターエフェクトを掛けた自分の声を入れたりしながら、これがベストだろうというところまで持っていきました。

──「甘酸っぱいマンゴー」は、アップテンポのハードチューンながらオシャレな味わいが独特な印象的です。ボーカルレコーディングはいかがでしたか?

keiya:歌は自宅で録るんですよ。

──そうなんですか? 家にブースがあるとか?

keiya:ありません(笑)。だから昼間歌うようにしています。親しいお隣さんがホントに優しい方で、「うるさくないですか?」と聞くと、「全然大丈夫」と言ってくれているんですよ。その言葉に甘えてます(笑)。レコーディング・スタジオは、“録るぞ!”という雰囲気になるじゃないですか。曲によってはそれが上手くハマるときもあるけど、僕はどちらかというと誰も見ていないところで、集中して歌いたいんです。GAKも言ったように、宅録は時間の制限がないし、エンジニアさんとかにも気を遣わず細かいところまでこだわれるので。

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