【ライブレポート】健在アクセプト、今もなお全盛期
アクセプトが日本でも好セールスを記録した最新アルバム『ブラインド・レイジ』を引っ提げてジャパン・ツアーを行った。
◆アクセプト画像
“ジャーマン・メタル”という呼び名すらない時代から、彼らはドイツのヘヴィ・メタル界の礎を築いてきた。この日の会場には、1985年の初来日を知る年季の入ったマニアから、これがライブ初体験となる若手ファンまで、幅広い観客層がフロアを埋めていた。
中世から刃物で知られてきたゾーリンゲン市で結成されたアクセプトだが、新作からの1曲目「スタンピード」は、30年以上のキャリアを経ても錆びることのない切っ先で斬り込むオープニング・ナンバーだ。続いて「スターリングラード」「ヘルファイア」「200イヤーズ」と、近作からのナンバーの連打が続くが、驚かされるのはそれらに対する観衆の反応だ。彼らは新しい曲に対しても歌い、首を振り、拳を突き上げ、アクセプト・クラシックスとして全身で迎え入れている。ステージ上にいるラインアップこそが、現在進行形のアクセプトなのだ。
ウルフ・ホフマン(G)とピーター・バルテス(B)は、アクセプト・スタイルを継続してきたバンドの支柱だ。ヘヴィに刻むギター・リフとソリッドなベースラインは結成以来、彼ら流のヘヴィ・メタルを確立させてきた。既にアクセプトの一員として3枚のアルバムで歌い、ツアーを行ってきたマーク・トーニロ(Vo)は、今や看板シンガーの座を不動にしている。ウド・ダークシュナイダーという強力すぎる個性を持ったボーカリストの後任である彼は、異なったベクトルのアクが強い声質、より幅の広い表現力、観衆とのコミュニケーションを取りながら盛り上げていくパフォーマーとしての才覚など、バンドに新たな魅力をもたらすことになった。
さらに1980年代にもバンドに在籍してきたハーマン・フランク(G)、そして全幅の信頼を得てビートを叩き出すステファン・シュヴァルツマン(Dr)を加えた現在の布陣は、新たなる絶頂期を迎えようとしている。
アクセプトは1980年代以来、数々の名曲を生んできたベテラン・バンドでもある。1984年の『ボールズ・トゥ・ザ・ウォール』からの「ルーザーズ・アンド・ウィナーズ」、続いてプレイされた重量級ナンバー「ロンドン・レザーボーイズ」では、分厚いコーラスが場内を揺るがす。野太い合唱は、バンドのファン層の主軸が男声であることを物語っていたが、女性ファンの“レザーガールズ”の絶唱も検討していた。一方『戦慄の掟』からの「スターライト」は研ぎ澄まされたスピード・メタルの嚆矢であり、性別を超えたヘッドバンギングの嵐を呼ぶことになった。
アクセプトのライブには、徹底した機能美の追求がある。凝ったステージ・セットや背後のバックドロップもなく、機材も最小限に抑えられていたが、そんなシンプルさがいっそうの凄みを見せる。ウルフ、ピーター、ハーマンによるステージ上のフォーメーションもステージ・アクションやショーアップではなく、無駄を削ぎ落とした美学が貫かれていた。そんな中で感情を露わにしてシャウト、ステージを左右に動き回るマークは、熱くヒューマンな存在感を放っていた。
アクセプトにあって若手ジャーマン・メタル・バンドにないものを挙げるとしたら、“威厳”だろう。偉大なる鋼鉄の先達たちに捧げた「ダイイング・ブリード」、エドヴァルド・グリーグ『ペール・ギュント』をギター・ソロのモチーフにした「ファイナル・ジャーニー」、不死鳥のように蘇ることを宣言する「フロム・ジ・アッシェズ・ウィ・ライズ」は、音楽のヘヴィネスとは異なった意味での重みをもたらしていた。
アルバム『レストレス・アンド・ワイルド』は1982年のリリースから時代も国境も超えて聴かれてきた、アクセプトを代表する名盤だ。「レストレス・アンド・ワイルド」は彼らのライブで欠くことの出来ない必殺ナンバーであり、往年のナンバーに新しい生命を吹き込んできたマークですらも、オリジナルに忠実な唱法で歌っている。一方、同アルバムからの「アヘッド・オブ・ザ・パック」は日本初披露となるが、ファンは一瞬驚きながらも、すぐに体勢を立て直し、盤石の構えで受け入れる。
また、会場が一体となって「プリンセス・オブ・ザ・ドーン」のコーラス、そしてギター・メロディを合唱するさまは、美しくすらあった。
「ノー・シェルター」「ダーク・サイド・オブ・マイ・ハート」は我々の愛するアクセプト・サウンドをさらに純化させ、現代に蘇らせたナンバーであり、大きな声援が湧き上がったが、マーク・トーニロをフロントマンに迎えた“新生アクセプト”を鮮烈に印象づけたのが「パンデミック」だ。バンドの伝統を受け継ぎながらマークのエネルギーを加えて、伝染病の世界流行というタイムリーな題材を歌ったこの曲は、ライブ本編のラスト前に相応しい存在感を放っていた。
「ハイディ、ハイド、ハイダ♪」という歌声のテープが流れると、本日最大の超速ヘッドバンギングに備えるべく、会場に緊張感が走る。「ファスト・アズ・ア・シャーク」は曲そのものが鋭角的に突き進む、ひとつの凶器であった。アンコール1曲目の「メタル・ハート」は、1985年の初来日時にオープニング・ナンバーとして演奏された日本のファンには思い出深い曲だ。「メッタル・ハート!」という重厚なコーラスとベートーヴェン「エリーゼのために」の生み出す壮大な高揚感は、一大クライマックスだった。
続いて演奏された「チュートニック・テラー」はマークが加入してから発表された新しめの曲だが、新時代の名曲として愛されており、盛り上がりは申し分なし。「ボールズ・トゥ・ザ・ウォール」は大音量のヘヴィ・メタル、男声コーラスの鉄壁、ステージ上のフォーメーションなどすべてを持ち備えた名曲であり、2時間におよぶライブのフィナーレを飾る大団円となった。『ブラインド・レイジ』と、アルバムに伴うライブ・パフォーマンスで、何度目かの全盛期にあることを証明したアクセプト。その鋭くもヘヴィなサウンドが、2014年を斬った夜であった。
BSフジ「伊藤政則のロックTV!」では11月29日土曜日に「アクセプト日本ツアー大特集」を放送する。番組内ではEXシアターでのライブ映像や各地のミートアンドグリートの模様、伊藤政則によるインタビューがロックTV独占で紹介される。
文:山崎智之
<アクセプト日本公演>
・Stampede
・Stalingrad
・Hellfire
・200 Years
・Losers and Winners
・London Leatherboys
・Starlight
・Dying Breed
・Final Journey
・Shadow Soldiers
・From the Ashes We Rise
・Restless and Wild
・Ahead of the Pack
・No Shelter
・Princess of the Dawn
・Dark Side of My Heart
・Pandemic
・Fast as a Shark
・Encore:
・Metal Heart
・Teutonic Terror
・Balls to the Wall
◆ワードレコーズダイレクト・アクセプト・サイト