【インタビュー】全力の自由人・所ジョージの奇天烈人生訓『JAM CRACKER』Vol.3/4

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多趣味・多芸・多才で知られる所ジョージだが、そもそも彼のキャリアのスタートは音楽にあり、れっきとしたシンガーソングライターのひとりである。

創意工夫の人生を全力の自由人として闊歩する人物ゆえ、多面的なタレント人の印象が強いものの、彼の作る音楽には、甘みとしょっぱさとビリっと痺れる毒気がいつもたっぷりと仕込まれている。ふざけた視点と、どうでもいいことをそのまま歌ってしまったような屈託のないテーマが全面に踊り出るが、その目線の切れ味は異様に鋭かったりするから、たちが悪い。

わざわざ自主レーベルを立ち上げてのアルバム発売、しかも2枚同時リリースで、フルアルバムながら1枚700円+税という人を喰った価格設定が敷かれている。この人は何を考えているのか。目的は何なのか…というか目的はあるのか? 音楽が売れないと嘆かれている今、唐突にアルバム2枚をリリースする真意は? 本人に直撃すべく、BARKS編集長自ら世田谷ベースに乗り込んだ。

全4回にわたってお送りする当インタビュー、軽快な語り口調から覗かせる核心のキーワードを存分に楽しんでいただきたい。今回はその第3回である。

   ◆   ◆   ◆


■次に作るときは
■ギターのリハビリから

――もともと所さんにはシンガーソングライターが根っこにありますよね。

所ジョージ:ええ、そうですよ。ずっと作り続けるっていうか、ずっと理解されないままやっているっていうか(笑)。

――そんな(笑)。

所ジョージ:面白いんですよ(笑)。「あなたは自由だから、好きなだけスタジオでやってくださいよ」なんて言われると、僕はもう面白くないから、魅力がなくなっちゃう。家に帰らなきゃいけないわけじゃないんだけど、夕飯は夕飯で楽しいから家に帰るでしょ?で、またスタジオに戻ってくるんだけど、それが曖昧な感じでね「みんな今何やってんの?」って、そこもまた楽しい。で、アレンジャーの人が「所さん、ここハーモニカ演ってくださいよ」なんて言われると、ドキっ!としたりするんだよ。「えぇ~?ハーモニカはあの時はやったけどさ、今事務所にあのハーモニカあるのかな?」…探すのめんどくせえとか思いながら(笑)。だからそれも面白いしすごく楽しいね。「RCA 77DX」(『JAM CRACKER 1』12曲目)なんて「これはスローにしちゃったからな、ちゃんと歌うのめんどくせえな…あ、そうだ、アレンジャーの奥さん、歌やるよね? じゃあ歌ってよ」とか言って。

――そういうこと?いきなり女性が歌っているので、理由を聞かないといけないなって思っていました。

所ジョージ:あれは自分が歌をやるのがちょっとめんどくさくなったり、っていうとバトンタッチするの。

――「コンセプトは?」みたいな質問がしたかった(笑)。

所ジョージ:違う違う(笑)。これの前のアルバムでも1曲歌ってもらっているから、今回も可能だなと思っちゃうよね。まんざらでもないみたい。歌は好きみたいよ。

――せめて「RCAのマイクが彼女の声と相性が良かった」とか、なんかそんなのが欲しかったな。

所ジョージ:いや、そういうのはないね(笑)。でもね、RCAのマイクは褒められたよ。コーラスやってる人たちにも「これはいいマイクだね」って。だから単純だよね。見た目とか目に入ってくるもので人間は気持ちが変わるよね。聴こえないものも聴こえてくる。

――それはわかります。

所ジョージ:ほんとに。だから車にシール貼るとかラインを入れるだけでアクセルの踏みしろが変わるのと同じで、性能は変わらないのに馬力が上がった感じがするっていう。

――はい。

所ジョージ:マイクでもギターでも形ってあるよね。だからギタリストがギターをたくさん持っているけど何?って思っていたけど、持ち替えた時点で変わるんだね、あれ。昨日ね、(THE ALFEEの)高見沢(俊彦)と仕事が一緒で、あいつギターがあと16本で500本になるなんてわけのわからないこと言ってた。ずいぶん細かく数えてるんじゃねえかよって。

――ちゃんと把握してるんですね。

所ジョージ:してるの。あと16本で500本って。「お前バカじゃねえの?」って。でもまあ、あいつはギタリストだから、やっぱり持つギターで変わるんだろうね。でも500本は要らないんじゃないの?とか思うけど。あいつね、もう40年も知り合いなのに、私がちゃんとギターを弾いて歌うっていう認識がなかったみたいで、昨日初めて気が付いたみたい。YouTube見て感心してた。「え、面白い。ひとりでこういう風にやってるんだ」なんて言ってた。

――所さんがたくさんアルバムを出されていること知らなかったんですか?とぼけた人ですね。

所ジョージ:とぼけてるでしょ?浮世離れしてるんだよ、あいつ。浮世がわかってないよね。でもね、世の中の大半の人が、テレビメインの人だと思っているんじゃないかな。私が歌を作って何か発表してるっていうのは、薄々は知っているけど「なんかお考えになって演ってらっしゃるんですね」っていうのは、あんまり感じてないみたい。

――あ…、お考えになって演ってらっしゃるんですね?

所ジョージ:お考えになってますよ!…あ、今の「お考えになってますよ!」っていうのもいいメロだね。“お考えになってるんだよ、お考えになってますよ”♪

――またイヤな曲ができたな。

所ジョージ:バカなことをずーっと歌っといて、最後に“お考えになってますよ、私だって!”っていいね。

――それが大サビで?

所ジョージ:エンディングだね(笑)。歌に夢中だったら、夕方には歌になってますよね。でも今、鉄砲に夢中なんで、全然そっち方向いかない(笑)。今、ギター弾けないですよ、きっと。

――そんなバカな(笑)。

所ジョージ:ひとつの作品が完成するとそれで解放されるんで、ギターが弾けなくなる。だから次に作るときは、ギターのリハビリから。


■俺は犬神様に守られてる
■全然レベルが違うよと(笑)

――所さんの人生は、そんな歴史の繰り返しですか?

所ジョージ:もうずっとそうですね。今面白いのはね、毎日鉄砲磨いてるでしょ?手がめちゃくちゃ荒れるんです。本気でやってるから。金属粉や悪い液体やらで手がこんなに荒れちゃってると思ってたんですよ。そしたらちょうどうちの犬が仔犬を産んで帰ってきたんです。仔犬はそのお店にあげてね。「産ませたかっただけだから、そういう経験をさせたかっただけだから」って。

――親心ですね。

所ジョージ:で、その犬が帰ってきたんですけど、でもまだ乳が張っておっぱいが出る。これ、出してあげないと乳腺炎になっちゃうから、朝晩俺が出してあげてるわけ。絞ってあげてるの。まさか犬の搾乳をするとは思わなかったけど(笑)、その犬の搾乳がちょっと面白くなってきているんだよね。犬の搾乳ってね、おっぱいを触ってる感じじゃないくて、キンタマ触ってるみたいな感じなのよ。

――またそんな。

所ジョージ:犬のおっぱいってそうなのよ。乳首がこれぐらいで、その下におっぱいが溜まってるところがあってぶにょぶにょしてて、これはキンタマみたいだなと思って。

――8つあるんですよね?

所ジョージ:そうそう。8つキンタマがついてるみたいなんだよ。それをほぐしてはちゅーって出してあげてるの。

――もう、記事にしたくないです(笑)。

所ジョージ:でね、あいつバカだから地面にこぼれると舐めちゃうから、タオルにしめさせるように絞っているの。意外と面倒な作業なんだけど、それが全部終わるころには手が犬のミルクでぐちゃぐちゃでしょ?それでね、手がつるっつるになるのよ。

――へぇ~、すごい。

所ジョージ:神様は見てるなぁと思って。

――あははは(笑)、神様のおぼしめし?

所ジョージ:そうそう! じゃなきゃこんなタイミングにならないもん。鉄砲を磨いて荒れた手をね、搾乳によってミルクで潤いますよって。

――それは犬からの恩返しも含めて、ですかね。

所ジョージ:そうだね。犬神様だね。だから犬は狛犬として神社なんかにいるんじゃねえか? 昔、キツネを飼ってる時はね、キツネの頭をいつも撫でてたの。お稲荷さんじゃない?キツネって。撫でるといいことあるんじゃねえかな~って。しかも俺、生きてるキツネを撫でてるからな~って。


――キツネを飼っていたこともあるんですね。

所ジョージ:昔ね。これが3年で死ぬっていうから飼ったんですよ。3年間楽しめるなと思って。そしたら10年ぐらい生きたかな?

――いいことじゃないですか(笑)。

所ジョージ:なんだよ、約束違うじゃんって思って。いや、面倒見るのが大変だから。

――そうなんですか。犬とは違う?

所ジョージ:匂いもすごいしご近所迷惑だしね。で、散歩も行けないしね。でもそれは楽しかったな。勝手に自分がこれはお稲荷さんだなと思ったり、お前狛犬だろうと思ったりなんかして、だから四角い顔してるんだな?って。勝手なことを後付けして、だから面白いんですよ。

――じゃ、搾乳が終わる頃には鉄砲熱は冷めるんですかね。

所ジョージ:そうだと思う。搾乳があと1週間ぐらいはやんなきゃいけないけど、鉄砲もそろそろエンディングに入ってきたかな。タイミング的にはちょうどかな。

――神様は見てますね(笑)。

所ジョージ:見てます。そいつには息子が1匹いるんですよ、その前にも1回産んでるから。それはうちの犬で今訓練に行っているんだけど、母犬がケリーっていう名前で一匹だけオスを産んだから、名前はケリオス。

――あははは。

所ジョージ:意外とカッコいい名前で。中世の剣士みたいだな、ケリオス。カッコいいね~!なんつって。で、それが訓練から帰ってくるんですよ。帰ってくるんだけど、シェパードもいるから、大型犬がこんなにいてもなぁ…って思ったら、このタイミングでうちの娘がちょうど番犬が欲しいみたいなことを言い出して、シェパードを連れて行くことになったわけで、そこにケリオスがちょうど帰ってくる。タイミングがすごいの。これは犬神様がいるな、と思って(笑)。

――犬神様に守られていますね。『JAM CRACKER 1』『JAM CRACKER 2』のジャケットのワンちゃんは?

所ジョージ:そう、それがケリオス!ケリーの子供。だから『JAM CRACKER 3』が出た時は、そこに成犬がいますよ。

――10倍の値段で(笑)。じゃ今はまだ仔犬なんですね?

所ジョージ:仔犬っつってもね、それでもこれぐらいデカいんですよ。ロットワイラーっていう軍用犬なんです。僕、小型犬とか大嫌いなの。巷ではみんな小型犬だけど。

──またそういうことを言う(笑)。

所ジョージ:小型犬って、誰が飼ったって自分の配下に置けるじゃん。

――気性の荒い小犬もいるんじゃないですか?

所ジョージ:でも小っちゃいじゃん。噛まれてもそこそこじゃん。うち、甘噛みでこんな穴空くんだよ?(と、腕の傷痕をみせる)これ、甘噛み痕だよ、ケリオスの。手におえない生き物を配下に置くっていうのが楽しいことでね、買ってきたその日からペットとして使えるものなんかは全然楽しくないよ。意味ないわ。自分じゃなくてもいいじゃん? 他の人に買われてもその犬は同じことするわけで、そんなヤツには用はない。うちにしかなびかないものを周りに置きたいっていう。

――なるほど。

所ジョージ:そう。だから小犬買ってきちゃったらダメだよ。そんなちっちゃい犬は誰の言うことも聞くし、人間じゃなくても大きけりゃそいつについていくよっていう。

――まあ…そうかもしれない、ですけど。

所ジョージ:だからね、ペット飼ってる人がバカに見えちゃうの。お前じゃなくても大丈夫だよっていう。「よくなついちゃって~」って、「エサくれるヤツになついてるだけだ、バーカ」とか思いながら。そういうのを見てて「なんだこいつら」と思ってるわけです、僕は。

――お前の犬は、乳で手をサラサラにしてくれないだろって?(笑)。

所ジョージ:俺はすごい犬神様に守られてるから。ふふふふ(笑)。そのへん散歩させてるヤツとね、全然レベルが違うよと(笑)。芸能界の人も小っちゃい犬で「かわいいでしょ?」なんてやってるでしょ?ああいうのをテレビで観てても「全然話が違うよ、うちとは」っていう。いつも上位にたってるような気がして嬉しくなる。

――ひとりでそう思ってる(笑)。

所ジョージ:うん、やってることはキンタマみたいなのを壊さないようにぎゅーってやってるだけだけどね。犬に関して言えばそういうのが面白いんだよね。

続く

取材・文・撮影:BARKS編集長 烏丸哲也


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