エリック・カルメン、初のオールタイム・ベスト登場

45年に及ぶキャリアを総括する、エリック・カルメン初のオールタイム・ベスト盤『エッセンシャル・エリック・カルメン』が7月9日に発売となった。

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エリック・カルメンは、ビリー・ジョエルなどと同世代のシンガー・ソングライターとしてアリスタ・レコード時代のソロ作が親しまれてきたが、それ以前に在籍していたバンド＝ラズベリーズでは、ブリティッシュ・ビートをアップデートした鋭利なロックンロールを世に披露してみせた、パワー・ポップの始祖と言える人物だ。

ブルース・スプリングスティーンからカート・コバーンに至るまで多くのアーティストが影響を認めているエリック・カルメンだが、『エッセンシャル・エリック・カルメン』は、そんなエリック・カルメンの音楽人生を凝縮した2枚組である。音楽活動最初期に在籍していたサイラス・エリーの1969年のシングル収録曲「ゲット・ザ・メッセージ」から始まり、ラズベリーズ期、ソロ期を網羅し、初CD化7曲を含め本人監修のもとでリマスタリングが施されている。また、18年ぶりのオリジナル新曲となる「ブランド・ニュー・イヤー」も収録されている。

日本盤は自選ボーナス・トラック6曲も追加収録したBlu-spec CD2仕様となり、ブックレットにはデビュー45周年を祝してブルース・スプリングスティーン、ポール・スタンレー（KISS）、コートニー・ラヴ、スラッシュ、スティーヴ・ジョーンズ（セックス・ピストルズ）、シェリー・カーリー（ランナウェイズ）、マシュー・スウィート、アレックス・チルトン他数多くの著名アーティストからのコメントが寄せられている。その中でブルース・スプリングスティーンはエリック・カルメンからの影響をこう語っている。

「過小評価されているけれどもラズベリーズは最高のパワー・ポップ・バンドだ。彼らが残した音楽はあのころのまま僕たちを最高に楽しませてくれるし、その魅力は些かも色褪せていない…「オーバーナイト・センセーション」は今も抜群に刺激的だ。ミニ・ロック・オペラの傑作として語り継がれていくべき1曲だと思う」──ブルース・スプリングスティーン

7月10日からソニー・ミュージックの公式サイトで公開された最新インタビュー連載の第1弾では、エリック・カルメン自身もブルース・スプリングスティーンとの相互影響についてこう語っている。

「初めてブルースと会った時、僕が彼の楽屋に行くと、ちょうどセット・リストを書いているところだった。顔を上げた彼は僕に向かって“俺が『ザ・リバー』の曲を書いていた時は、ラズベリーズのベスト盤を3枚聴きつぶすところだったよ”と言った（笑）。それで僕も気が楽になって、“僕がセカンド・ソロ・アルバムの曲を書いていた時に毎日かけていたのは、君の『明日なき暴走』だったよ”と言ったんだ。そうして、ブルースと僕は互いに称賛し合う仲になった」

「ブルース・スプリングスティーンが『明日なき暴走』をレコーディングしたのは、ラズベリーズが全4枚のアルバムをレコーディングしたのと同じニューヨークのスタジオで、僕たちが起用したのと同じエンジニアを使った。そのせいもあって、サウンドに似通った点があったんだ。当時ラズベリーズとブルースのセカンド・エンジニアだったジミー・アイオヴィンは、今やビーツ・エレクトロニクス社を売却して億万長者の天才になったね！あの頃僕たちは、ジミーにピザを買いに行かせていたんだけど（笑）。ジミーや『明日なき暴走』を手掛けた人たちから僕が聴いたところによると、あのアルバムはラズベリーズに影響された部分がかなりあったそうだ。「ジャングルランド」のイントロのピアノは、ラズベリーズの「素晴らしき再出発」のイントロとすごくよく似ている。『明日なき暴走』を聴くと、ブルースが使っているちょっとした技がいろいろわかってニヤリとさせられるよ。」

エリック・カルメンのインタビューは、ラズベリーズ結成以前にさかのぼって質問した結果、訳文にして実に2万字以上の大ボリュームとなった。『エッセンシャル・エリック・カルメン』についても、下記のように熱く語っている。

「これまでにリリースされたリマスター盤の音質は、オリジナル音源より2パーセントほど向上している程度だったように思う。一方、今回のリマスター盤とオリジナル音源を比較すると300パーセントもすばらしいサウンドに仕上がっている」

連載では今後、ビートルズやザ・バーズとの出会い、サイラス・エリー/ラズベリーズ時代について、ソロ・アーティストへの転身の経緯と心境、新曲「ブランド・ニュー・イヤー」やニュー・アルバム制作の可能性について掲載される予定だ。

インタビュー◎荒野政寿（CROSSBEAT）
通訳◎川原真理子

エリック・カルメン『エッセンシャル・エリック・カルメン』
Eric Carmen / The Essential Eric Carmen
2枚組 SICP 30621～2 / STEREO/MONO 定価\2,500＋税/
※最新リマスター/日本盤ボーナストラック 6曲収録/解説・歌詞・対訳付/高品質Blu-spec CD2仕様※日本盤ブックレット（全48P）：エリック・カルメン自身の曲解説＆ブルース・スプリングスティーン、ポール・スタンレー（KISS）、コートニー・ラヴ、スラッシュ他ミュージシャンからの特別コメント収録
DISC1
1.ゲット・ザ・メッセージ（サイラス・エリー）＊
2.ゴー・オール・ザ・ウェイ（ラズベリーズ）（全米チャート5位）
3.明日を生きよう（ラズベリーズ）
4.レッツ・プリテンド（ラズベリーズ）
5.トゥナイト（ラズベリーズ）
6.オーヴァーナイト・センセーション（ラズベリーズ）
7.サンライズ
8.愛しのマイ・ガール
9.オール・バイ・マイセルフ（全米チャート2位）
10.恋にノー・タッチ（全米チャート11位）
11.悲しきラスト・ナイト
12.素晴らしき再出発（Live1976）＊
13.すてきなロックン・ロール（Live1976）＊
14.ラン・アウェイ
15.愛をくれたあの娘（全米チャート23位）
16.恋のすべて
DISC2
1.雄々しき翼
2.マラソン・マン
3.つらい別れ
4.チェンジ・オブ・ハート（全米チャート19位）
5.ヘイ・ディニー
6.デスペレート・フールズ
7.サムデイ
8.悲しみTOO MUCH
9.フーリン・マイセルフ（single version）★
10.トゥナイト・ユア・マイン
11.噂の女 ★
12.あの頃の僕達
13.ハングリー・アイズ（88年映画「ダーティ・ダンシング」挿入歌/ 全米チャート4位）
14.メイク・ミー・ルーズ・コントロール（全米チャート3位）
15.ブランド・ニュー・イヤー（18年ぶりの新曲）＊
16.ザ・ロック・ストップス・ヒア（86年レア・シングル）★ ＊
17.パラダイス～愛のテーマ（Winter Dreams Version）★
18.ロング・リヴ・ロックン・ロール（Demo）★ ＊
19.ブランド・ニュー・イヤー（Alternate Mix）★ ＊
★＝日本のみのボーナストラック ＊＝初CD化

◆ソニー・ミュージックのエリック・カルメン公式サイト