【連載】アヲイ執筆レポ第五回、Ryo視点の渋谷は「これだからライブは嫌いになれない」
アヲイが、5月30日の新宿RUIDO K4公演を皮切りに<ONEMAN TOUR 2014 「フテキゴウな林檎」>を開催中だ。このツアーは8月8日の渋谷WWWまで、仙台、松山、吹田、渋谷、岡山、福岡、名古屋、大阪を2DAYSずつ廻るもの。足掛け3ヵ月間全19公演のロングスケールな規模で行われる。
◆アヲイ 画像
2014年10月22日の結成10周年をもって解散することが決定している彼らだが、その活動ぶりは現在も活発だ。前述のツアーファイナルを迎える8月にベストアルバムのリリース、8月下旬から9月頭にかけて東名阪ラスト公演、9月に最後の主催イベント開催、同じく9月にラストシングルリリース、10月に最後のワンマンツアーを行うなど、息をもつかせぬスケジュールが発表となっている。
そして開催中の<ONEMAN TOUR 2014 「フテキゴウな林檎」>は、潔いまでに豪快なステージを繰り広げる5人の姿が印象的だ。そこには湿っぽさなど微塵もない。最後の時まで全力でひた走るメンバーの弾き出すサウンドが揺るぎない決意を示すようで、彼らにしか成し得ない空間を築き上げることに成功している。
全身全霊のステージを余すところなくお伝えするべく、【連載レポ】として同ツアーの模様をメンバー自身が、自らの視点で執筆したライブレポートをお届けする。五ヵ所目は6月28日および29日の渋谷チェルシーホテル、執筆者はドラムのRyoだ。ステージでパワフルなビートを刻み続ける彼のレポートは、やはりリズミカルなもの。ドラムセット越しに見たステージと客席の様子が存分に伝わる内容となった。
◆ ◆ ◆
【06月28日(土) 渋谷チェルシーホテル 文◎Ryo】
初日。悲しげな雰囲気が漂う「水の中のアビス」からライブがスタートした。実にアヲイらしい幕開けだ。「水の中のアビス」を悲しげに歌い上げ、曲が終わると同時に無言で会場を指差し煽り始めるオトギ。その背中は今でも忘れられない程に印象的で、とてもクールだった。何故彼は声を出さなかったのか、それはもしかすると声を出す必要がなかったのかもしれない。
その後、狂ったように咆哮するオトギ。それに続き、僕はカウントを鳴らした。「絶望の太陽」だ。この曲を皮切りに、会場の熱は一気にピークに達したのを肌で感じた。それと共に止まらない汗、汗、汗……。「レクイエム」「abelcain」と曲が進むにつれ、会場の熱はさらに上がる。それと共に溢れ出る汗、汗、汗……。この時には既に衣装が汗を吸いきっていた。
続く「夢」。この曲で僕のテンションがさらに上がるのを皆さんはご存知だろうか。「夢」の“イントロ2”に差し掛かり、猛烈に頭を上下させている僕は、ふとある一つの事実に気がついた。
“フロアに沢山の笑顔が見える……”。
とてもいいことだ。これは何事にも代え難い素晴らしいことだ。僕は嬉しかった。しかしそれと同時に一つの疑問点も生じた。
“あれっ、もしかして俺のヘッドバンキング見て笑ってる?”。
しかしそれは掘り下げてはいけないもの……。闇に葬るべき真実もある……。
この日、僕が濃厚に感じたのは2ブロック目の「イヴ」~「水鏡」ゾーンである。この時の僕から見たメンバー4人の背中は、『フテキゴウな林檎』の楽曲と共に成長してきたことを物語っているように見えた。きっと僕もまた、彼らと共に一歩成長したに違いない。
初日の後半戦はというと、それはもうドラマーとしては気が遠くなるような怒涛のセットリストだった。「拝啓、愛しくも冷たい絶望の雨」「SAW」と続くスピードチューンが酸素濃度の低いフロアを白熱させ、続く「blind」のイントロではオーディエンスが精一杯声を絞り出し、酸素濃度は低下するばかり。その後の「ゆびきり」「screaming idol」のモッシュで、もはや酸素濃度は極限状態になっただろう。
その上で本編ラストにやって参りましたアヲイ最大の好き放題曲「鈴虫」。「鈴虫」という曲名を聞いてふと思い浮かべる小さな昆虫とは相反し、とてつもなく大きな魔物のように僕は感じる。「怪獣」という曲名でも良かったのではないか、と思うほどに……。
こうして初日のライブは幕を閉じた。
【06月29日(日) 渋谷チェルシーホテル 文◎Ryo】
初日のライブを経て僕たちは学んだ。“この会場は危ない……”。そう、酸素濃度の話だ。二日目も私Ryoはこの酸素濃度状態をあくまでもドラマー目線で綴らせて頂こうと思う。
二日目のライブはアヲイとしては珍しい「生キル為ノ歌」で幕開けした。きっと意外な選曲にオーディエンスは内心ふんぞり返り、同時にホッコリしたことだろう。そんなふんぞり返りタイムも束の間、オトギが煽り倒し、次に向かった曲は『フテキゴウな林檎』収録曲の「拝啓、愛しくも冷たい絶望の雨」。テンションは一気に高まり、二曲目とは思えない熱気がフロアからステージに伝わってきた。
酸素濃度の激減を感じたのはこの時だ。こちらもアヲイのドラマーとして負けじと酸素を吸引する。ここからは酸素吸引対決になった。「メランコリィ」「screaming idol」「バタフライ」と続き、オーディエンスは酸素を吸っては脂肪を燃焼させ、弛んだ身体を引き締めたに違いない。新しいダイエット法だ。
6曲目、今までの雰囲気とは一変し、アヲイの世界観に引き込んだ「bakemono」。毎回この曲になると、フロアが緊張感に包まれるのを肌で感じる。SEが明け、タイトルコールと共に始まったのは「午前0時の蟻とショートケーキ」。相変わらず気味悪い楽曲だ。この曲の聴きどころはなんと言ってもサビ明けの間奏部分。CDでは聴き取りづらい加工がされているので、ライブでしっかり感じて欲しい。
ここからの流れはかなりクレイジーだった。アヲイでは珍しいテイストの「フェル」、自分でフレーズ構成したと言えどドラマー泣かせな「Dies irae」、宗教的かつ哀愁漂う「水中花」。こんなにも痺れる流れはなかなかない。これだからアヲイのライブは見逃せない。と我ながら思った。
2ブロック目、最後を締めくくるのは「イヴ」だ。鍵盤の音と共に悲しげなギターを奏でる慎。それとはまた違ったアプローチで少しポップでヘヴィな要素を取り入れた翔。。サキは絶妙な音階を駆使し、楽曲に広がりを持たせる。僕はいつもシンプルかつ感情的に叩く。それら全てを自らの声で優しく抱き締めるように歌うオトギ。彼はきっと抱き締め上手だ。オーディエンスからも優しい表情が生まれ、2ブロックは幕を閉じた。
ここからがアヲイ怒涛の快進撃。酸素濃度の心配なんてしていられなくなる。「夢」はやはりヤバい。しかし僕はあのヘッドバンキングが好きだ。続く「SAW」は一言でいえば狂気乱舞。フロア全体から殺意に似た何かを感じる。「絶望の太陽」で一層熱気が増し、ここで早くもオーディエンスの首はへし折れただろう。しかし、首をへし折りながらも「darling」ではモッシュの嵐。やはりアヲイのファンは強い。
ここに来てさらに「abelcain」を畳み掛ける。この日の「abelcain」はとても印象深く、Bメロで会場がこの日一番の一体感を得たように見えた。ドラマーはメンバーも客席も全てが見える。これがドラムをやってて良かったなと思えるポイントだ。
本編ラストを飾るのは「レクイエム」。この曲になると俺はつい笑ってしまう。下手のギタリストが“カッコ面白い”からだ。ぜひチェックしてほしい。笑いながらドラムを叩くと一気に呼吸困難に陥る。ゲラドラマーは辛い。
アンコール最後の「鈴虫」はとても物足りなかった。理由は簡単。オーディエンスの本気がまだまだ伝わってこなかったから。だから僕は演奏を止め、計3回オーディエンスに「鈴虫」を浴びせた。それはまさに死闘……。息を止めてマラソンをしているような感覚だった。
しかし、その甲斐あってか、最後はとても素敵な笑顔が沢山見られた。これだからライブは嫌いになれない。その笑顔、忘れんなよ。
■<アヲイ ONEMAN TOUR 2014 「フテキゴウな林檎」 >
2014年05月30日(金) 新宿RUIDO K4
2014年05月31日(土) 新宿RUIDO K4
2014年06月06日(金) 仙台パークスクエア
2014年06月07日(土) 仙台パークスクエア
2014年06月14日(土) 松山Double-u Studio one
2014年06月15日(日) 松山Double-u Studio one
2014年06月20日(金) ESAKA MUSE
2014年06月21日(土) ESAKA MUSE
2014年06月28日(土) 渋谷チェルシーホテル
2014年06月29日(日) 渋谷チェルシーホテル
2014年07月05日(土) 岡山IMAGE
2014年07月06日(日) 岡山IMAGE
2014年07月12日(土) 福岡DRUM SON
2014年07月13日(日) 福岡DRUM SON
2014年07月18日(金) 名古屋ミュージックファーム
2014年07月19日(土) 名古屋ミュージックファーム
2014年08月01日(金) OSAKA MUSE
2014年08月02日(土) OSAKA MUSE
2014年08月08日(金) 渋谷WWW
■<アヲイPRESENTSファンの集い『雨天決行 名古屋ラスト編』>
2014年08月23日(土) HOLIDAY NEXT NAGOYA
■<アヲイPRESENTSファンの集い『雨天決行 大阪ラスト編』>
2014年08月30日(土) OSAKA BRAND NEW
■<アヲイPRESENTSファンの集い『雨天決行 東京ラスト編』>
2014年09月07日(日) 高田馬場CLUB PHASE
■<アヲイ LAST PRESENTS「BLACK SHOW CASE」FINAL>
2014年09月22日(月) OSAKA MUSE
[問]FACE MUSIC 06-6543-3338
◆アヲイ オフィシャルサイト
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