【連載】アヲイ執筆レポ第四回、サキ視点の江坂は「ゾッとする思いで口角を上げさせられた」
アヲイが、5月30日の新宿RUIDO K4公演を皮切りに<ONEMAN TOUR 2014 「フテキゴウな林檎」>を開催中だ。このツアーは8月8日の渋谷WWWまで、仙台、松山、吹田、渋谷、岡山、福岡、名古屋、大阪を2DAYSずつ廻るもの。足掛け3ヵ月間全19公演のロングスケールな規模で行われる。
◆アヲイ 画像
2014年10月22日の結成10周年をもって解散することが決定している彼らだが、その活動ぶりは現在も活発だ。前述のツアーファイナルを迎える8月にベストアルバムのリリース、8月下旬から9月頭にかけて東名阪ラスト公演、9月に最後の主催イベント開催、同じく9月にラストシングルリリース、10月に最後のワンマンツアーを行うなど、息をもつかせぬスケジュールが発表となっている。
そして開催中の<ONEMAN TOUR 2014 「フテキゴウな林檎」>は、潔いまでに豪快なステージを繰り広げる5人の姿が印象的だ。そこには湿っぽさなど微塵もない。最後の時まで全力でひた走るメンバーの弾き出すサウンドが揺るぎない決意を示すようで、彼らにしか成し得ない空間を築き上げることに成功している。
全身全霊のステージを余すところなくお伝えするべく、【連載レポ】として同ツアーの模様をメンバー自身が、自らの視点で執筆したライブレポートをお届けする。四ヵ所目は6月20日および21日のESAKA MUSE、執筆者はベースのサキだ。ドラマティックな文体に加え、セットリストをひとつのストーリーに仕立てた文章構成はサキならではのもの。お楽しみいただきたい。
◆ ◆ ◆
【06月20日(金) ESAKA MUSE 文◎サキ】
「悪い夢を見ようか大阪!」
オトギ(Vo)の咆哮を受けて、オープニングナンバーの「nightmare」から一気に会場の、オーディエンスの、そしてメンバー全員のボルテージは沸点に達した。二ヶ月以上もの期間をかけて全国を駆け巡る<ONEMAN TOUR 2014 「フテキゴウな林檎」>。アヲイの本拠地でもある大阪一本目となるESAKA MUSEでの2daysが始まった。
踊り狂い、拳をただひたすらに天に突き上げるオーディエンスの視線を浴びながら、攻撃の手を休めること無く、出し惜しむことも無くアヲイのアルテマウェポン曲「鈴虫」へとなだれ込む。“ここで一気に切り崩して仕留めてやる”と言わんばかりに、このツアーで特にそのパフォーマンスに磨きをかけたギタリストの翔。が全身をフル稼働させてフロアを煽る。
続く「絶望の太陽」「メランコリィ」では、“動”の翔。とは対極の“静”のアプローチで魅せるギタリスト慎の一音一音が、まるで耳元で不気味に囁かれているような妖艶なアルペジオフレーズを響かせる。
そんな中、前回の松山でのライブも踏まえて、この日のセットリストメニューを中心になって組んできたオトギの悪戯心も含まれているであろう、「beauty」が披露される。続く二日目のライブにも、実は小さな仕掛けがあったのだが、それはまた次の機会にでも触れようと思う。
「beauty」でライブの歩みを少し変え、ミニアルバム『フテキゴウな林檎』収録曲からのスピードチューン「SAW」を注ぎ、“扉”の“カギ”を開けたところで、第一のセクションを完結させた。
不思議で不気味なSEに包まれた会場内に、途切れ目を感じさせることなく、何処からか爆撃音が鳴り響き始める。「SAW」によって開かれた扉の先に待っていたのは、まさに生きながらにしてこの世の地獄を味わう、人間こそ「bakemono」の世界であった。絶望を感じるのは期待をするからだ、この世に、ヒトに、何も期待などするな、その期待こそが化け物なんだ。でもそんな化け物すらも僕なら綺麗に残さず食べてあげるよ、だから安心して、思うがままにその身を委ねなさい。そう笑みを浮かべながら、「午前0時の蟻とショートケーキ」へ。メンバー各々があまりにもバラバラで結び付かないようなプレイでありながら、そこを楽曲の武器としても成立させたアヲイアレンジの十八番ともいえるナンバーで、その手をさらにグイと引き込んでいく。
そんな狂気が当然のように渦巻くこの場こそ、本物の地獄「NARAKA」であると歌い、Ryoの重く冷たい一打から「デザイア-desire-」へと紡いでいく。そして、美しさと儚さが共存する唯一のバラード曲「イヴ」で、ステージとフロアを優しくも哀しく包み込み、ここまでの物語は一度幕を閉じることになった。
この日の終盤戦の幕開けが、今ツアーの名刺的ナンバーでもある「拝啓、愛しくも冷たい絶望の雨」によって告げられた。疲れた心をお互いに癒していくように、続く「abeicain」ではさらなる一体感を求め合い、声と音で共に歌い合うかのような「夢」へと陶酔する会場。「screaming idol」「バタフライ」でそれは完全に一つとなり、その場に居る全員による「レクイエム」によって、この日の物語が全ての幕を閉じた。
アンコールの声に応え、慎のお得意のメロディがなんとも気持ち良い「ゆびきり」。もはやオーディエンス無しでは成立しなくなってきたと言っても過言ではないパワーを持った「rainy baby」と、身も心も心地良い疲労に包まれてきたところで、オトギの言葉が空間に響き渡る。
「本当は生きたい だけど怖くて仕方ないんだね 弱くても生きていいから そんなに泣かなくてもいいよ」
ステージからフロア、フロアからステージへ。お互いへの惜しみない称賛の笑みと拍手でESAKA MUSEでの一日目は幕を閉じることとなった。
【06月21日(土) ESAKA MUSE 文◎サキ】
悪い夢を見たあと、さらに見ることになるのはこの世の“現実”という「夢」の始まり。そう言わんばかりに、<ONEMAN TOUR 2014 「フテキゴウな林檎』」>ESAKA MUSE公演二日目の幕が上がった。「夢」を歌い、「レクイエム」に今の姿を見つめ、「abeicain」で逸れぬように、その手と手を必死に取り合うようにも感じられた。
そして続く今ツアーの表題曲「拝啓、愛しくも冷たい絶望の雨」が、早くもすっかりライブでの定番曲にまで成長したかのように加速度的に会場の熱が上がっていく。バトンを受け取るは、“レア曲”とカテゴライズされるのであろう「kaleido」だ。オーディエンスの視線と両の手を支配したバンドが、ここで一気に底の底へと叩き落とすかのように提示したものが、「bakemono」であった。
カットアウトで突然の静寂に包まれた会場に次に響き渡る音は、一音一音ゆっくりと歩を進めるように置いていく「イヴ」。しっかりと話かけるかのようにカウントを刻むRyo、その上に異なるアプローチで音を重ねていく慎とサキのギターとベースで始まった「ララバイ」。オトギが教主となって演説を説いていく「カルト」、この辺りの楽曲も普段のライブではあまり披露する機会が少なくない、まさに長尺のワンマンライブならではの選曲だ。
そして「午前0時の蟻とショートケーキ」「SAW」と異なるタイプの楽曲で立て続けにアヲイのより深い部分へと誘う手を差し伸べる。
終盤戦は、掴んだその手を半ば強引に、もっとこっちへと言うように頭の一音に全パートのフルパワーを込めてスタートする「bastard」から始まり、「blind」「絶望の太陽」では、完全にその場の全員のタガが外れていた。
リミッターを解除されたように踊り、暴れ、呼応し合う場内に鳴り響くは、同期サウンドの軽快なリズムで導かれる「darling」。後半のベースソロ部分でのお馴染みのサキと他メンバーとの掛け合いでは、翔。とのアイコンタクトが上手くいかず、笑いを誘い合うシーンもあった。
徐々にアヲイが持つ顔の一つでもある“好きなものを自由に好きと言える”、そんな時間に会場内の全員が差し掛かってきた。その気持ちを後押しするかのように打ち込まれた「unhappy birthday to me」では、もはや誰一人として遠慮がなかったように思えた。
そのアットホームな温かい雰囲気を良い意味で再度ぶち壊し、グチャグチャにかき混ぜてくれたのが「鈴虫」だ。前述の曲達が居たからこそ、このタイミングでの「鈴虫」が最高に活きたと肌で感じる。そんな締め括りで本編が終了した。
大きな、とても貪欲な声に誘われて再び登場したアンコールでは、江坂という土地での思い出話も交えつつ、ESAKA MUSEという会場への感謝を述べるオトギ。中々上手く曲に持っていけず、「おれ、煽り下手なんで……」という自虐的な言葉もそうだが、オトギ節全開の「Sunnyday」、これぞアヲイというメロディをキッカケに場内が再び瞬時に音と熱気に包まれる。ここまでくるともはや援護射撃以外の何物でもない「screaming idol」でさらに熱く一つに。
「バタフライ」ではその一つに固まったものが一気に放射状に弾け飛び、会場を埋め尽くす。アウトロ部分、慎のギターが一音ずつ噛み締めるように最後へと向かっていく最中、そのわずかな一瞬の中で全員が理解し、共有したものがあった。予定調和の台本通りのライブなんて要らない、少なくともアヲイにはそんなものは必要ないと言わんばかりの「バタフライ」を締め括った直後、Ryoのこの日一番の音量による予定外の4つのカウントが鳴り響いた……。
「あいつらほんまに凄いな、なんでついてこれるねん、こんなメチャクチャなライブ(笑)」
全ての音を閉じて楽屋に戻り、気持ちの良い疲労感と一緒に煙草の煙を燻らせながら、幕の向こう側ではまだザワついているフロアの声をBGMにしながら、感謝と同時に、これからこのツアーが本当にまだまだどうなっていくかわからない化け物なんだなと、ゾッとする思いで口角を上げさせられた。
そういうツアーに出会えたこのメンバーに感謝もしながら。そういうツアーを観せてくれるオーディエンスを誇りに思いながら。アヲイのESAKA MUSE公演、そして今回の書き手でもある私、ベースのサキのESAKA MUSEでの2daysも幕を閉じた。
■<アヲイ ONEMAN TOUR 2014 「フテキゴウな林檎」 >
2014年05月30日(金) 新宿RUIDO K4
2014年05月31日(土) 新宿RUIDO K4
2014年06月06日(金) 仙台パークスクエア
2014年06月07日(土) 仙台パークスクエア
2014年06月14日(土) 松山Double-u Studio one
2014年06月15日(日) 松山Double-u Studio one
2014年06月20日(金) ESAKA MUSE
2014年06月21日(土) ESAKA MUSE
2014年06月28日(土) 渋谷チェルシーホテル
2014年06月29日(日) 渋谷チェルシーホテル
2014年07月05日(土) 岡山IMAGE
2014年07月06日(日) 岡山IMAGE
2014年07月12日(土) 福岡DRUM SON
2014年07月13日(日) 福岡DRUM SON
2014年07月18日(金) 名古屋ミュージックファーム
2014年07月19日(土) 名古屋ミュージックファーム
2014年08月01日(金) OSAKA MUSE
2014年08月02日(土) OSAKA MUSE
2014年08月08日(金) 渋谷WWW
■<アヲイPRESENTSファンの集い『雨天決行 名古屋ラスト編』>
2014年08月23日(土) HOLIDAY NEXT NAGOYA
■<アヲイPRESENTSファンの集い『雨天決行 大阪ラスト編』>
2014年08月30日(土) OSAKA BRAND NEW
■<アヲイPRESENTSファンの集い『雨天決行 東京ラスト編』>
2014年09月07日(日) 高田馬場CLUB PHASE
■<アヲイ LAST PRESENTS「BLACK SHOW CASE」FINAL>
2014年09月22日(月) OSAKA MUSE
[問]FACE MUSIC 06-6543-3338
◆アヲイ オフィシャルサイト
この記事の関連情報
【連載】アヲイ執筆レポ最終回、Ryo視点のツアーファイナルは「音楽は素晴らしいという真実」
【連載】アヲイ執筆レポ第九回、サキ視点の大阪セミファイナルは「やはり特別な場所」
【連載】アヲイ執筆レポ第八回、翔。視点の名古屋は「ライブ終演後の話をしたい」
【連載】アヲイ執筆レポ第七回、慎視点の福岡は“最後の地方公演ドキュメント”
【連載】アヲイ執筆レポ第六回、オトギ視点の岡山は「これ以上ないカオス」
【連載】アヲイ執筆レポ第五回、Ryo視点の渋谷は「これだからライブは嫌いになれない」
【連載】アヲイ執筆レポ第三回、翔。視点の松山は「目標は全く飾らない素の自分」
【連載】アヲイ執筆レポ第二回、慎視点の仙台は「後悔なく過ごそうと決意した」
【連載】アヲイ執筆レポ第一回、オトギ視点の新宿RUIDOは「最後に事件が起こった」