【インタビュー】My Little Loverグッズのキーパーソン・渡邉俊介(VIRI-DARI deserta 代表)「モノとして愛せるものを作りたいという想いは一貫してる」

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“素材がよさそう!”と、2013年末あたりからファンの間で話題になっていた<My Little Lover Live#10 acoakko gift>のコンサートグッズ。制作過程を紐解くと、そこにはakkoとマイラバチームの想いが込められ、その想いが連鎖するように作られていったアイテムだということがわかった。

そこで、My Little Loverグッズのキーパーソンである、カジュアルブランド「VIRI-DARI deserta(ヴィリダリ・デセルタ)」代表・渡邉俊介 氏に話を伺うことにした。オーガニックコットン(※)を“使う”ことをスタンダードとしている「VIRI-DARI deserta」。グッズという形で、akkoやマイラバチームの想いを具現化するようになって3年という渡邉 氏から見た、今回のグッズのポイント、そしてakkoという人について語ってもらった。

※ オーガニックコットンとは
「3年間無農薬、無化学肥料の土地で栽培された綿花のこと。綿花の作付面積は、全世界の農地面積の約5%に過ぎませんが、使用されている農薬は全世界の10%、殺虫剤に至っては25%を占めると言われています。この多量の農薬使用は、周辺の土壌汚染、水質汚染は勿論、農薬散布時の健康被害や、汚染された水を摂取した内臓疾患など、多くの問題を引き起こしています。一般的に、CONTROL UNIONやECOCERTなど世界的なオーガニック認証団体があり、その認証を得たコットンをオーガニックコットンと呼んでいます。(VIRI-DARI desertaのオフィシャルサイト より)」

  ◆  ◆  ◆

── akkoさんのコンサートグッズを手がけることになった、経緯を教えていただけますか?

そこから話すと、すごく長くなりますけど、大丈夫ですか(笑)?

── こちらもがんばりますので、出来るだけ手短にお願いできますか(笑)。

アハハハ。僕がこの事業を始める前、地元のある大学のサッカー部のコーチをしていました。そのときのある教え子が、たまたまOORONG-SHAの方と繋がりがあったので、教え子だった彼を経由して、僕のビジネスについてOORONG-SHAの方、仮にA氏としましょう、に伝わったんです。そのA氏が「似た考え方をするアーティストがいるから話してみましょう」と話してくださったのがMy Little Loverのakkoさんでした。

── そもそも渡邉さんがオーガニックコットンの製品を作り始めたきっかけは?

モノづくりを始めて最初の6~7年は、上質な素材で作られたものなら“良いもの”と単純に考えていましたし、それを勧めることが“良いこと”だと思っていました。でも、モノづくりについて知れば知るほど、いろいろな“憤り”を感じてしまって(苦笑)それから素材について深く掘り下げ調べていったら、コットンを作ること=農薬などで環境を汚染していると知りました。誰かの犠牲の上に成り立っている物を「これ、良いですよ」と言っていた自分を恥ずかしいと思うようになったんです。また、オーガニックコットンが世の中にいい形で広まっていないとも感じました。オーガニック=ださくて高価というか。それでは普及していかないから、独自のやり方でなんとかしたいと思ったんです。

── 確かにオーガニックを語ると、やや固くて難しい話になりがちですね。

そこが一番難しいところですね。何かきっかけになることがあれば、その魅力に気付いてもらえると思うんです。akkoさんもお子さんがきっかけで、体に優しいものとしてオーガニックを使い始めたそうです。そこからどう作られているかを自ら学ばれたようで、環境にも優しくて良いものだと分かった。発信者として、もっと多くの人に良いものを知って、使って欲しくて、コンサートグッズをオーガニックコットンで作ろうと思い立ったそうです。

── これまでにコンサートグッズを作った経験はありましたか?

まったくなかったんです。僕の仕事はそもそもアパレルやリビングアイテム、ライフスタイル雑貨などを取り扱っていたのでグッズとは無縁でした。出会った当時、すでにオーガニックコットン製品を扱っていましたが……まぁ、言ってしまえば、僕の中ではコンサートグッズのイメージがあまり良くなくて。だから僕にできるかなという不安も正直ありましたね。それが2011年でした。

── akkoさんの第一印象はいかがでしたか?

今も変わりませんが、こんなおもしろい人がこの業界にいるんだ、と驚きました。akkoさんは生活レベルまでしっかり環境のことやエコ、オーガニックについて考えているんです。それに、僕のような、いわば一般人に対しても、何ら態度が変わらない。だから本音で話ができます。それ以前にも僕は芸能関係やアーティストさんとお仕事する機会があり、あまり踏み込まないように気を遣っていた経緯がありました。でも、akkoさんにはそういう壁は必要ない。同じ想いを持つ者同士、初対面から意気投合したという感じでした。akkoさんや僕がやろうとしていることは、世界から見たら小さな事かもしれないけど、本当にいいモノづくりを続けていくことで、それがスタンダードになっていくかもしれない。akkoさんとグッズ制作をすることになり、より強くそう想うようになりました。 いろんな立場や立ち位置の違う人間がメッセージを発信することで、広まっていくんだなと実感していますから。

── どんなとき、それを感じますか?

一番最初にグッズを作らせてもらったとき、ライブ会場のフロアに長蛇の列ができていたんです。僕は「ドリンク待ちかな?」と思ったんですが、実はグッズを買い求める人の列でした。それは鮮烈に残ってます。また、akkoさんのファンから僕のやってるブランドにメールをいただくこともありますね。

── コンサートグッズを作る際、akkoさんからはどんな要望がありましたか?

3年間ブレてないのは、普段から使えるもの、使いたくなるものですね。オーガニックコットンというのはどちらかと言えば後からついてくるもので、モノとして愛せるものを作りたいという想いは一貫してると思います。一番最初にどんなものを作ろうかという話をした時は、akkoさんは私物のストールなんかを持ってきてくださって「こういうのがあると嬉しい」と具体的に提案してくれました。だからこちらも、「この素材はどうですか?」と返しやすいんですよね。

── 2013年は、akkoさんと一緒にグッズを作っている各地の工房にも足を運ばれたとか?

はい。そうやってモノづくりに対して、人任せにせずに常に関心を持っていられるのは、akkoさんがそういうことを普段から考え、行動しているからだと思うんですよ。だからどうやって作られているか知りたくなるし、実際に確かめてみたくなるんだろうな、と。僕の方から「工場を見に行ってみたら?」って提案したら、「本当に! 見に行ってもいいの?」って目を輝かせてましたね(笑)。実際に見に行った先々で、「こんなに丁寧に作られてるんですね!」とか「一枚一枚手縫いをして、アイロンをかけてタグをつけるところまで全てが手作業だなんて!」とか「だからこそ私たちは大切に使わなきゃいけないし、そのことをきちんと伝えたい」と、折りに触れて感心したり、驚いたりしていた姿が印象的でした。僕らにとっては当たり前に見える風景も、akkoさんの視線を通すとそうじゃないんだなと思ったし、やっぱりこの人は面白いなと(笑)。工場見学なんてややもすると、さらっと流してしまうと思うんですよ。でも、akkoさんはいちいち目に留るし、立ち止まるんです。

── 2013年のグッズからは、東北を支援するグッズも加わりました。

グッズ制作に携わらせてもらったのが震災のあった2011年からというのもありましたし、僕が東北でモノづくりを始めようとしていたので、「今年、東北でもモノづくりしてみたらどう??」と話すと、「えっ、できるの?であれば、野田村でできないかなぁ」とすぐにレスポンスがありました。元々akkoさんは東北には震災直後から「贈る図書館」という活動や、岩手県野田村で支援ライブをしていたみたいで。周囲のスタッフさんにも「野田村でモノづくりがしたい」と言っていたものの、なかなか実現できずにいたようです。これもたまたまですが、想いが繋がったわけです。


── 同じ方向を見ている仲間、という感じなんですね?

僕が言うのもなんですが、この3年間でとても信頼していただけていると感じます。なのでグッズに関しても任せていただいている分も結構あって、自由にクリエイトできる環境です。本当に“一緒に作っている”感じです。僕のほうから、「今ハマっているものあります??」と聞いて、そこからクリエイトしたりして。 2012年だったらエコバックがそこからできたり。13年はテーマが「gift」と決まったことや、akkoさんが絵本を出版されたこともあったので、akkoさんが大切にしている“笑顔の連鎖”という言葉や、“輪”や“繋がり”がキーワードとして挙がりました。その時、akkoさんがシルバーリングにハマってて(笑)「“輪、繋がり”だからシルバーリングなんかつくれないかなぁ」と。その言葉から、今回初めてシルバーリングを作ることになったんですが、何気ない会話の中からアイデアがわいてくる感じです。
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