【短期集中連載】アヲイ「終奏物語」[最終回]
2014年1月12日にLIQUIDROOM edisuでのワンマン公演を見事完遂したアヲイ。アヲイの内部を短期集中連載としてフィクション、ノンフィクションを交え、メンバーが執筆した小説をみなさんにお伝えしていった本連載。最終回は、メンバー全員が寄稿してくれた。
【最終回~オトギの場合~】
振り返れば、長いようで一瞬の半年間。
リキッドルームを目指すことを決めたあの日から、その大きなステージに立つ自分たちの姿だけを目指して、がむしゃらに、全力で走り抜けてきた。
どんな困難にも、逆境にも屈しないアヲイの雑草魂は、いつの間にか、誰にも負けない自らの個性になっていた。
その、揺るぎない個性、アヲイらしさを胸に、しっかりとリキッドルームのステージに足を踏ん張り、そして、まさにアヲイにしかできないライブ空間を作り出すことができた。
一曲目の「絶望の太陽」から、本編ラストの「レクイエム」。
そしてアンコールでは配布CDの「幸福論」、最後を締めくくった「コトダマ」。
どこを切り取っても、アヲイ。
終始、アヲイらしくあれたライブだった。
ステージの上で脳裏を横切った、これまでの苦難の数々。
よく、このステージに辿り着いた。
本当に、幸せな時間だった。
そして、またここから歩き出す。
どんな苦難にも負けない、本当のアヲイは、まだ、始まったばかりだ。
そして、これからも、共に歩もう。
【最終回~慎の場合~】
あれから数日が経った。
LIQUIDROOM ebisuでのライブ。
終奏と名付けたツアーの最後の日。
昨日のように思い返すことができる。
本番直前の緊張感。
SEと共に登場した時の無我の境地。
第一音を発した時の高揚感。
そこから先はいつも通りのアヲイがそこにいた。
会場の大きさは関係ない、どんな場所でもアヲイはアヲイ。
それ以上もそれ以下もない。
5人の人間が己を曝け出し、誰に何に媚びることなく自分達らしい、自分達にしかないものを、音楽を通して必死に伝える。
いや、ひょっとしたら伝えようとさえしていないかもしれない。
自ずと伝わると信じて恥ずかしげもなく自分というものを見せる。
満員御礼とは言えずとも、フロアを埋め尽くしたファンには伝わっていたのだろう。
メンバーの音や表情に対して拳を挙げる、頭を振る、声を出す、様々な表現で応えていたファンの姿が何よりの証拠である。
あっという間の時間。
苦しくもどこか優しい至福の時間。
「ヴィジュアル系」と聞いて、真っ先に思い浮かぶようなバンドではないかもしれない。
綺麗ではないし、カッコつけてもいないし、キラキラした眩しさも持っていないバンド。
汚くても、ダサくても、ギラギラしてても、全身全霊で自分達の音楽を、それどころか自分達自身を表現して目で耳で伝える、紛れもない「ヴィジュアル系」がリキッドルームでライブをしていた。
そんなアヲイの「終奏物語」は幕を閉じるが、彼らの物語はまだ続いている。
終わりのメロディの先に見えた道に向かって。
また新しい物語を綴るために。
【最終回~翔。の場合~】
アヲイが歩んだ道の一つがリキッドルームだった。
リハーサルから緊張の一言。
理由は簡単。
いつも以上に大人が多い。。。
プレッシャーからかリハーサルから力が入る。
鳴らす音一音一音を丁寧に確認する。
調子が良い。
今日は何か起こる。
そう確信した。
リハーサルを終え本番が近づく。
緊張はピークになる。
最高のテンションだ!
半端じゃなく良いテンション。
いよいよ本番。
オープニングのSEが鳴り幕が開く。
ツアーファイナル。
目に飛び込む最高の景色。
最高の景色には最高で返す。
正直自画自賛で最高のライブでした!
ツアーファイナルで見たもの全部が宝物で一生忘れる事のないライブでした。
アヲイに関わる全ての方に感謝。
アヲイに付いてきたお前らに感謝。
最後の曲で泣いたのは内緒の話。
ありがとうございました!アヲイでした!!
【最終回~サキの場合~】
『じりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりうっふんりりりりりりりりりりりりりりりりりりるららりりりりりりりりりりりりバンッッッ!!!!!!!!!!』
慌てて時計を止める朝。
そうか…いよいよ今日か…。
そう。
冷たい風が吹きすさぶ東京、目覚めたその朝は、LIQUIDROOMでのツアーファイナルの朝だった。
特にいつもと違った事もなく、いつも通りの準備をし、いつも通りの顔で、一人また一人と、メンバーが集合する。
煙草を吸うメンバー、お茶を飲んで体を伸ばしているメンバー、携帯ゲームに夢中なメンバー、溜まった領収書を今すぐ清算しろとマネージャーに詰め寄るメンバー、自宅に置いてきた拳銃と薬莢から警察に足がつかないかをしきりに心配して部下に電話をかけているメンバー…。
じつにいつも通りだ。
「そういやさ、ちょっと聞いて、おれ凄い夢見てん!」
「マジで!?じつはおれも皆が集まったら、同じく見た夢の話しようと思っててん!」
「えっ、おれも変な夢なら見たで、何か凄かったわ…ゾンビに事務所を襲撃されたりRyoちゃんがキュウリをまた美味しく調理してたり…。」
「うわっ…怖っ…全く同じ内容かもしれん…それおれも見たわ…カラオケに行ったりもしてたな、しかもそれがさ、全部繋がって一本の話で進んでいくんよ…。」
「そうそうそう!!!回数で言うと全12回くらいの連続ドラマを見てるみたいな感覚でな!!!」
メンバー全員、全く同じ内容の夢を見て、今日という日を迎えたようだ。
こんな奇妙な一致があるのだろうか。
流石、関西発信ロックバンド最後の刺客、アヲイ。
底の知れぬ、その持て余すグルーヴ力を、こんなところでも無駄に発揮してしまうのだ。
流石アヲイ。
「凄い話やな、メンバー全員、同じ夢を見るなんて…。」
「な…ちょっとキモイよな(笑)」
「うん、キモイキモイ(笑)」
「いや、でもさ、同じ夢ならこの5人はずっと見てきたやん?」
「慎ちゃんはすぐに良い事を言おうとするな(笑)、でもそれって、LIQUIDROOMっていう夢やろ?」
「今日は夢が現実になる日やな!!!」
そう言って会場に入っていくメンバー。
現実をしっかりと生き抜いて、今日この日が終わる頃には、この五人はまた次の夢を見ているんでしょう。
その夢を現実に変える為にもまた走り出すんでしょう。
その夢への道中、仲間は一人でも多い方が心強い、そして楽しい。
それを知っているからこそこの5人は。
あんな無茶な、寿命を縮めるようなライブを繰り返し、本当に一緒に闘っていく事の出来る仲間を探しているんだと思う。
船体はもうボロボロで、お世辞にもオシャレともカッコいいとも言えない、でも絶対に沈まない迷わない、目的地に向かって真っ直ぐ進むこの船。
乗りたくなったらいつでも乗っかってこいよ。
次の目的地はどこがいいかな?
~おしまい~
【最終回~Ryoの場合~】
あれから僕たちは、
どれだけの時を共に過ごしただろう。
最初は2010年7月17日、
オトギ、翔。、サキというメンバーに新たなメンバーとして慎、Ryoが加入しアヲイは5人で活動を再開した。
あの頃僕たちは目を輝かせて話していた。
アヲイの未来を。
その話の中には『LIQUIDROOM』という単語も出ていたのだ。
此処LIQUIDROOMまで辿り着く時間は僕たちの描いた想像以上に長く、
今思い返せばあの頃は『アヲイなら何でもできる、凄いバンドになるぞ。』なんて少し過信していたかもしれない。
でも、
僕たちのその気持ちは今も変わらない。
あの頃の気持ちは誰一人忘れることはない。
それがアヲイ。
それが今回のツアーファイナルLIQUIDROOMの集大成だ。
映画を撮ろう、
綱引きをしよう…
そんな発想もひっくるめてのツアーファイナル、
5人はきっと悔いのないツアーファイナルになっただろう。
会場に集まったファンも遠くから応援してくれていたファンも、
アヲイにとってはかけがえのない存在なのだから。
あれから僕たちは、
どれだけの時を共に過ごしただろう。
2013.10.23 5th Mini Album 「終わりのメロディ」 リリース
【初回限定盤A-type】
CD( 全5 曲)+DVD(PV) 2 枚組 ¥2,940-(tax in) BRA-028
【初回限定盤B-type】
CD( 全5 曲)+DVD 2 枚組 ¥2,940-(tax in) BRA-029
【通常盤】 CD 全6 曲 2,310-(tax in) BRA-030
◆アヲイオフィシャルサイト
◆BARKS ヴィジュアル系・V-RCOKチャンネル「VARKS」
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