【2014年グラミーコラム】いまだ世界最高の音楽プレゼンテーションパーティー「グラミー賞」を楽しむために

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遂に来ました、グラミー賞の時が!アメリカの音楽祭として最大の規模を持ち、ここにノミネートされることはトップレベルに位置することを示し、最優秀に選ばれると、世界各地で再認識再評価、そして音源が瞬く間に聴かれて行くという、マーケット的にも権威的にもとても大きなものを生み出すアワードです。

◆グラミー賞画像

アメリカにおける音楽の評価、そしてミュージシャン以外の裏方を含めたクリエイター全般を支援する姿勢、そして時代を位置づけようとする選択眼。グラミー賞は今も世界最大の音楽アワードとして、その役割を真摯に務め続けています(ちなみにその次に大きな影響力を持っているアワードは、イギリスの『ブリットアワード』です)。

ちなみにアワードが開催される地はロサンゼルス、場所はステイプルズ・センターという、NBAのレイカーズなどのホームアリーナ。ここにはグラミー博物館なる数々の音楽の歴史を振り返るミュージアムが隣接されています。

グラミー賞は数々の感動と驚きを見せて来ました。ブルーノートという老舗ジャズレーベルから輩出され、新たなクロスオーバーポップを生み出したノラ・ジョーンズや、稀代なる人生の果てで最高の音楽と歌唱を手に入れ、そのまま救われない救世主として人生を終えたエイミー・ワインハウス、さらには最近では、あれよあれよという間に世界中でアルバムがトップチャートに長く鎮座し、ここグラミー賞でも殆どの章をお腹いっぱい喰い尽くしたアデルなど。女性陣のミラクルは毎回凄まじいものがあります。こういうシンデレラストーリーが色濃く目に焼き付いているからこそ、2014年の17歳のニュージーランドのアンニュイなディーヴァ、ロードにもシンデレラストーリーの再現が期待されているとも言えます。

ちなみにザ・ビートルズは、1965年に最優秀新人賞を、1967年にジョン・レノン&ポール・マッカートニーのソングライターチームが「ミッシェル」で最優秀楽曲賞を、そして1968年にあの『サージェント・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』で、最優秀アルバム賞を受賞しています。

2013年は主要4部門を観ると──。

最優秀レコード賞:ゴティエ“サムバディ・ザット・アイ・ユーズド・トゥ・ノウ“
最優秀アルバム賞:マムフォード・アンド・サンズ『バベル』
最優秀楽曲賞:ファン.“ウィー・アー・ヤング”
最優秀新人賞:ファン.

となりました。順当と言えば順当な結果でしたね。ファン.とマムフォード・アンド・サンズに関しては、グラミー賞後にフジロックフェスに出演し、とても盛り上がったアクトを繰り広げました。明らかに「これはグラミー賞を取ったバンドとしてライヴを観ているんだな、みんな」というのがわかるんですね(ゴティエに関してはグラミー賞の半年前のサマーソニックに出演したんです)。改めてグラミー賞効果というものを感じました。

さて、今年はどうなるんでしょうね?前述したロードは、ニュージーランドの17歳という意外過ぎるプロフィールを持っていますが、今の時代、スポティファイなどのサブスクリプションサービスや、iTunesなどのダウンロードミュージックシステムによって、音楽における国籍の壁は殆ど取っ払われました。勿論世代の壁もそうですね。だからこそ彼女のような存在が早くから日の目を見たのだろうし、音楽的にもエレクトロニカやアンビエント性などのダークな世界観を築いている彼女の音楽は、部屋やiPhoneなどでイヤフォンを耳に突っ込んで「独りっきり」で音楽と対峙する今の時代にとてもフィットしているし何よりリアルなのでしょう。

ジャンルに対する評価ではない主要4部門以外にも沢山のアワードが存在しているグラミー賞。2014年はジェイ・Zが最優秀ラップアルバム賞を始め9部門にノミネートされて相変わらずの強さを示したり、2013年のグラミー賞でのパフォーマンスでシーンに復帰を果たしたジャスティン・ティンバーレイクも最優秀ポップヴォーカルアルバム部門を始め各所にノミネートされたり、まさに百花繚乱な賑わいを見せていますが、僕は勝手に、ブルーノ・マーズとダフト・パンクの「米仏対決」を楽しみにしています。

主要4部門で行くと、最優秀レコードに両方、そしてブルーノは最優秀楽曲に、ダフパンは最優秀アルバムにノミネートされています。プエルトリコ系の父とフィリピンの母から生まれたという雑種性もとてもアメリカを感じさせるブルーノの、エンターテイメント性と土着性溢れるソウルポップに栄冠が輝くのか? シカゴハウス以降のアメリカのクラブミュージックをヨーロッパ流のアシッドハウスでクッキングして頭角を表し、アルバム『アクセス・ランダム・メモリーズ』で70年代~80年代ディスコファンク&ソウルを見事なまでに再現したエレトロリックの寵児なる2人が、その出自である「肉体とソウルのシンフォニー」の本質を極めたダフト・パンクにアメリカが賞賛を表すのか? 楽しみでなりません。

その他にも、一時期のLMFAOを凌ぐ勢いで去年の全米売り上げ1位をシングル「Thrift Shop」が記録してしまった、マックルモア&ライアン・ルイスなども、日本から観るとただの飛び道具にすら見えませんが(だって未だ国内盤がリリースされないわけですから)、まったくもって侮れません。さて、56回目のグラミー賞、どう出るのか?

音楽のみならず、すべてのアーティストは凄まじい熱量の自己表現を生み出し、それをもって自己証明を図るわけですが、そんな自分の身を削る行いの中で彼らは必然的に頑固になり、そして孤独に陥って行きます。そういうアーティスト達が、受賞をした時に、両親や兄弟やスタッフやリスナーに不防備で素敵なスピーチを投げかけるあの瞬間、あれもグラミー賞の感動ポイントの一つです。毎回感動のスピーチを聞いている時に、このグラミーという賞の、音楽、そしてアーティストに対するご褒美感の大きさを感じることが出来ます。

今回も沢山のプレミアムなパフォーマンスが用意されます。ケンドリック・ラマーとイマジン・ドラゴンズ、ダフトパンクとスティーヴィー・ワンダーとナイル・ロジャースとファレル・ウィリアムスなどのコラボライヴは、見逃すと後々まで引きずる程の必見ですし、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターもパフォーマーとして登場する今回、この2人の奇跡の、そして世界待望級のコラボレートはあるのか? 最大の焦点はそこに集約されていると言っても差し支えないでしょう。

ちなみにグラミー賞翌日に同じロスのロサンゼルス・コンベンション・センターで『ザ・ビートルズ・トリビュートライブ ~グラミー・スペシャル~』が開催されます。これはアメリカ最大の音楽番組だった「エド・サリバン・ショー」にビートルズが出演してから50周年にあたる記念と、ビートルズの音楽に対する貢献にグラミー賞が敬意を称し行われる一夜限りのイベントで、マルーン5、ジョン・メイヤー、ユーリズミックス、アリシア・キーズ、ジョン・レジェンドなどの出演が決まっています。これに関しては、すでにリンゴが言及している通り、ポールとリンゴという「生きるビートルズ」の出演が決まってます!? 本当にどうしましょうか。

最後になりますが、僕鹿野 淳は、今回のグラミー賞やビートルズ・トリビュート、およびその周辺の数々のパーティーやイベントなどに参加するべく、ロスに入ります。様々なものを観て、吸収して、そして皆さんにレポートしていきますので、是非、楽しみにしていてください! グルメレポート含め、少しでもグラミー賞のロスをみんなにも味わってもらえればと思っています。

それでは、またーーーー。

文:鹿野 淳(MUSICA)/Photo:WireImage

『生中継!第56回グラミー賞授賞式』
1月27日(月)午前9:00~[WOWOWプライム]


◆WOWOW『生中継!グラミー賞ノミネーションコンサート』サイト
◆WOWOW×BARKS2014年グラミー特集チャンネル
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