【短期集中連載】アヲイ「終奏物語」[vol.8]

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2013年6月2日、渋谷O-WESTでのツアーファイナル公演にて2014年1月12日にLIQUIDROOM edisuでのワンマン公演を発表したアヲイ。2013年10月20日に5th Mini Album 「終わりのメロディ」をリリースした彼らが行うリリースツアー<終奏>のファイナル公演に相応しい大舞台だ。そんなアヲイの内部を短期集中連載としてフィクション、ノンフィクションを交え、メンバーが執筆した小説をみなさんにお伝えしていく。第8回目はVocalのオトギだ。


 ◆  ◆  ◆

「キュウリってさー、身体の体温下げる効果あるらしいよー。」

大阪のライブを終え、ツアーファイナルのリキッドルームに向けてのスタジオリハの休憩時間、オトギはいつもの様に得意のうんちくを語っていた。

「だからさー、夏とかさー、祭の屋台でさー、最近よく見かけるしさー、食べちゃうしさー、なんくるないさー。」


オトギはいつの間にか一人で喋っていた。


しかし、オトギのキュウリから脱線した沖縄好きトークは止まる事を知らず、さらにエスカレートしていく。


「てな感じでさ、沖縄っていい所だからさ、いつか沖縄でライブしたいゴーヤ。」


いつの間にか、語尾が「ゴーヤ」になってしまったオトギを無視して、他のメンバーはある作戦を立てていた。


「ツアーファイナルの物販で何か面白い物売りたいねー、ゴーヤとか。」

「いやいや、ゴーヤとか誰が買うねん(笑)ゴーヤとか苦過ぎるやろー。」

「チャンプルーにしたら苦味は少し和らぐけど、どうするー?」

「んー…。」


メンバーは良い案が出てこず、ついには黙り込んでしまった。



「そういえばさ、こないだ幸福論を作ってた時にかかってきた非通知電話やねんけどさ、何かずっとさ、遠くで変な言葉が聞こえてたんよね。」

ついに寂しくなったのか、オトギが皆に話しかけてきた。


「え、何それ、めっちゃ怖いやん。」

電話をかけた張本人のRyoは少しビビった表情で立ち上がった。


「いやさ、グサグサ聞こえてる中でさ、ちょいちょい聞こえてきたんよね、声が。」


「へー、何て言ってたか聞こえたん?」

サキがオトギに尋ねた。


「んー…あんまりハッキリとは聞こえなかったんだけどね…んー…確か…“タスケテ、タスケテ、ブッパン、カッテ”みたいな声が何度か聞こえたような…。」


一同は息を飲んだ。


「だからさ、心の中でだけどさ、“買うよ、買う買う、買ったげる”って言っちゃったのよ、なんか可哀想だっし。」


「んで、どうなったの?」

そう聞いてきたサキに対して、オトギは急に何か重要な事を思い出したかのような表情を見せ、一度深く息を吸ってから、神妙な面持ちで再び話し始めた。


「言ってた…言ってたわ…。」


「な、何を?」

急に声のトーンを落としたオトギに少し怖さを感じたサキが身をすくめながら聞いた。


「確かこう聞こえた気がしたんだ。“ありがとぅーす、あ、少し古いか、さんきゅー、じゃあお礼に良いものあげるぅーうふふー”みたいな。んでさーそこで気を失っちゃってさ…」


オトギは少しはにかみながら続けた。


「できちゃった(ハート)…あっ、幸福論がね(笑)」


「えぇー!!!!カツオくーん!!!!」


一同は驚き過ぎてマスオさんになってしまった。


「きっと物販というものに深い情念を残したままこの世を去った人の怨霊なんだろうね。物販が売れたから嬉しかったんだろうね。あっ、これが本当の金の亡者ってやつか、なははー。」


オトギはなはなは言いながら笑っていた。



そして、身体がみるみる透明になり、消えていった…。


「ちょ、待てよ!」

消えゆくオトギを掴もうとRyoが、いやキムタクが立ち上がるがもう手遅れだった。


「ん?何これ?」


消えたオトギの後を慎が覗き込んでいる。


「汁….かな?」

そこには何故かピリ辛キュウリの汁が大量にこぼされていた。


充満するキュウリの青臭さの中、一同は呆然としていた。


「決まりやな。」

消えゆくオトギをクールに傍観しながらタバコを吸っていた翔。が立ち上がり皆にこう言った。


「物販はタオルにしよう。」


そう言うと、翔。はオトギが消えた後に座り込み、タオルでピリ辛キュウリの汁を拭き始めた。


「翔。くん、俺も手伝うからタオル貸し…て…」

翔。に近付いたRyoはハッとした表情で翔。を見つめた。

無言でピリ辛キュウリの汁を拭く翔。の目には涙が光っていたのだ。


「行ったな、地獄に。」


そう呟くと翔。は、皆の顔を見渡しながら話だした。


「オトギは幸福論を生み出す事と引き替えに、物販の怨霊の呪いで地獄へ落ちたんだよ。オトギを助けだす為には俺ら自身が物販を売らなきゃならない。そのためにゴーヤ、いやタオルを売ろう。それしか方法はないんだ。」


その言葉は信じ難いものではあったが、皆は何故だか信用できた。


ここで、彼らのツアーファイナルに対する意志は更に強くなるのだった。


次回予告
「冬のファンタジー」



2013.10.23 5th Mini Album 「終わりのメロディ」 リリース
【初回限定盤A-type】
CD( 全5 曲)+DVD(PV) 2 枚組 ¥2,940-(tax in) BRA-028
【初回限定盤B-type】
CD( 全5 曲)+DVD 2 枚組 ¥2,940-(tax in) BRA-029
【通常盤】 CD 全6 曲 2,310-(tax in) BRA-030

アヲイ5th Mini Album 「終わりのメロディ」Release TOUR<終奏>
10 月30 日( 水) OSAKA BIG CAT
11 月01 日( 金) 名古屋Electric Lady Land
11 月02 日( 土) HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3
11 月05 日( 火) 高田馬場AREA
11 月15 日( 金) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
11 月17 日( 日) 柏PALOOZA
11 月23 日( 土) 秋田 Club SWINDLE
11 月24 日( 日) 盛岡Club Change
11 月26 日( 火) 青森Quarter
11 月28 日( 木) 仙台MACANA
11 月29 日( 金) 郡山CLUB♯9
11 月30 日( 土) 山形ミュージック昭和Session
12 月06 日( 金) 博多DRUM SON
12 月08 日( 日) 岡山CRAZYMAMA 2nd ROOM
12 月10 日( 火) 神戸VARIT.
12 月13 日( 金) OSAKA MUSE
12 月27 日( 金) 高田馬場AREA

TOUR FINAL ONEMAN
2014年1月12日(日) LIQUIDROOM
開場 16:00 / 開演 17:00 前売 3,990円(D別) / 4,500円(D別)
チケット一般発売:10/26(土)


◆アヲイオフィシャルサイト
◆BARKS ヴィジュアル系・V-RCOKチャンネル「VARKS」
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