【コラム】本命はロードの複数部門獲得か、近年の傾向から見るグラミー賞受賞予想
12月6日、第56回グラミー賞のノミネーションが発表され、いよいよ2014年1月27日の授賞式へ向けての“予想戦”がスタートした。2013年は主要4部門のうち最優秀新人賞と最優秀楽曲賞をファン.が獲得し、最優秀アルバム賞を受賞したマムフォード・アンド・サンズ、最優秀レコード賞のゴティエfeat.キンブラが日本でもかなりのヒットを記録するなど、フレッシュなメンバーが受賞者に名を連ねたが、今年の顔ぶれも過去に受賞経験のない若手~中堅アーティストがずらりと勢ぞろい。誰が獲ってもおかしくないだけに予想が難しく、そのぶん楽しみも多いと言えるかもしれない。
◆ロード画像
まず注目アーティストの筆頭は、「最優秀レコード」と「最優秀楽曲」部門に挙げられたブルーノ・マーズだ。R&B、ソウル、ロックなどを柔軟に取り込んだポップな楽曲と抜群の歌唱力で、2010年のデビューからいきなり大ヒットを連発し、第53回、第54回と連続で6部門にノミネートされたものの主要部門での受賞を逃してきたブルーノが、三度目の正直をついに叶えるか。
そしてもう一人、今年のアメリカのヒット・チャートで旋風を巻き起こした17歳の女性シンガー、ロードが「最優秀レコード」「最優秀楽曲」などノミネートされた4部門でどこまで健闘するかにも注目だ。デビューシングル「ROYALS」はニュージーランド生まれのアーティストとして史上初のビルボードHOT100で1位(しかも9週連続)を記録したモンスター・ヒットで、ゴスペルソングとオルタナティヴ・ポップを掛け合わせたような独特の楽曲と、17歳とは思えない大人びた歌声が印象的な曲。年上のアーティストを押しのけて複数受賞する可能性は大いにある。
ほかにもケイティ・ペリー、P!nk feat.Nate Ruess、ダフト・パンク&ファレル・ウィリアムズ、テイラー・スウィフト、ロビン・シック feat.T.I.&ファレルら実力派から、オルタナティヴ・ロックバンドの新星イマジン・ドラゴンズ、正統派シンガーソングライターのサラ・バレリス、新進ラッパーのケンドリック・ラマーと、新人賞以外の3部門のノミネーションは各ジャンルにまんべんなく振り分けられた印象がある。その中でも特に異彩を放つのが「最優秀新人」「最優秀楽曲」「最優秀アルバム」にエントリーしたマックルモア&ライアン・ルイスで、日本ではあまりなじみがないかもしれないが、同姓婚を支持する「Same Love」の大ヒットで一躍注目を浴びた二人組ヒップホップ・ユニット。そのメッセージ性も含めてどのように評価されるのか、非常に興味深いところだ。
2000年以降のグラミー賞の歴史を振り返ってみると、2000年の第42回でのサンタナを初め、主要2部門以上を同時受賞したのはU2、アリシア・キーズ、ディキシー・チックス、エイミー・ワインハウス、ロバート・プラント&アリソン・クラウス、アデル、そしてファン.で、第34回のノラ・ジョーンズのように4冠制覇という例もある。良い作品と認められれば、一気に複数受賞する可能性はけっこう高いのがグラミー賞の特徴だ。
それとは正反対に、「最多ノミネート作品は受賞しにくい」というジンクスがあるのも面白いところ。今回の最多ノミネートはJay-Zの9部門で、久々に音楽活動を再開したジャスティン・ティンバーレイクの7部門がそれに続くが、主要部門には入れず。そういった意味では過去数年間で最も「恵まれなかった男」は間違いなくラッパー/プロデューサーのカニエ・ウエストで、新人だった第52回の10部門を初め、毎年のように6~8部門にノミネートされながら主要部門での受賞はおあずけ。今回もチャンスはなさそうだが、こうなるといつか受賞させてあげたくなるのが人情というもので、カニエのようにだけではなく人気・実力と受賞歴が一致しないアーティストにあえて注目してみるのも、グラミー賞の楽しみ方として面白いかもしれない。
最後に日本人のノミネートだが、今回は2組。「最優秀ニューエイジ・アルバム」部門では常連の喜多郎と、「ベスト・レゲエ・アルバム」部門ではスライ&ロビー・アンド・ジャム・マスターズの『Reggae Connection』に参加した、プロデューサーで元外交官の阿曽沼和彦と、演奏メンバーの宅見将典の名が挙がっている。このアルバムは元ちとせ、lecca、COMA-CHIらが参加した日本に縁の深いものなので、ぜひ受賞してほしいところだ。
ちなみに主要部門で個人的予想をするならば、やはりロードの複数部門獲得は濃厚と見る。特に「最優秀レコード」は昨年のゴティエfeat.キンブラ、一昨年のアデル「ローリング・イン・ザ・ディープ」など、派手ではない玄人好みの曲が選ばれる傾向があるように思うので、「Royals」に決まる可能性が高いと予想するのだが…果たしてどうなるだろうか?
Text:宮本英夫/Photo:Getty Images
「生中継!グラミー賞ノミネーションコンサート」
12月7日(土)午前11:50~WOWOWプライム
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