【2014年グラミー特集】アイドルは排除されているのか?改めてグラミー賞の選考基準を考える
毎年1月下旬から2月上旬にかけて開催される「グラミー賞授賞式」は、世界最大の音楽の祭典といわれている。だからというべきか、その受賞結果はCDセールスに影響を及ぼすことにもなるわけだけれど、そのような力を持つ、そしてもっともメジャーな音楽賞だからこそ、受賞結果に対する反応はさまざまであり、ときに疑問が生じることもある。
◆ケリー・クラークソン画像
たとえば昨年の「第55回グラミー賞」。ジャスティン・ビーバーはアルバム『ビリーヴ』を、ワン・ダイレクションはアルバム『アップ・オール・ナイト』を100万枚以上売り上げていたけれども、両者ならびに両作品は受賞どころか、ノミネートすらされなかった。たしかに「グラミー賞」の選考はアーティストのネームバリュー、そしてセールスではなく、作品のクオリティが最重視されている。けれども両者の作品はクオリティが低かったわけではなく、むしろ高かった。だからそのノミネーションにはどうしたって懐疑的になってしまうというわけで、つまり、「グラミー賞」を主催するナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンスが、超人気アイドルを意図的にノミネートしないことで賞の権威を捻れた方法で示したのかもしれない、という見方だってできてしまうのである。
ただし、捻れているのはその見方であって、2006年の「第48回グラミー賞」はどうだろう。ケリー・クラークソンが最優秀ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞と最優秀ポップ・ボーカル・アルバム賞の2部門を受賞している。彼女はアイドルである。また、ずいぶんと昔の例になってしまうけれど、1965年の「第7回グラミー賞」の最優秀新人賞はビートルズだった。当時のビートルズはあきらかにアイドルで、だから、特定の年にフォーカスすれば「グラミー賞」がアイドルを排除しているという見方はできなくもないけれど、決してそういうわけではないのである。
そもそも、「グラミー賞」とはアメリカの音楽産業において優れた作品を創造したアーティストの業績を讃えると同時に、業界全体の振興と支援を目的としたものである。つまり、広い視野で音楽業界を捉えているというわけで、一方、ノミネーションや受賞結果がなんらかに特化したカラーを持つことはたしかにある。けれども、それがすべてでないことは、たとえば先に述べたジャンスティン・ビーバーやワン・ダイレクションの件からもわかるというもの。ならば、「グラミー賞」の絶対的評価も、それに対するあらゆる反応も、結論としてではなく、音楽を楽しむ、音楽を知るきっかけとして受け止めてみてはどうだろうか。
Text:島田諭
Photo:Getty Images
『生中継!グラミー賞ノミネーションコンサート』
12月7日(土)午前11:50~WOWOWプライム
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