【ライブレポート】インド人演歌歌手チャダ、アイヌ古式舞踏とのコラボ実現でインド人もビックリ
◆チャダ、アイヌ古式舞踏とのコラボ~拡大画像~
各公演はインドの各方面の一流アーティストが共演。ムンバイでは先住民ワルリー族と村での交流。在インド日本大使館、国際交流基金等、現地日本人の方々の協力も得ながら、国際交流事業としてNPO法人日印交流を盛り上げる会(理事長:長谷川時夫)によって実施された。
2013年12月2日(火)インド公演、最終日のニューデリー公演では、ニューデリー在中のインド人演歌歌手チャダとの共演が実現した。当日、会場には400名を超えるインド人、日本人で埋めつくされ(会場:ニューデリー中心部に位置するICCRオーディトリアム)、19時10分、ライブがスタートした。
厳かな舞台の雰囲気の中、アイヌ古式舞踊の演目がスタート。演目1幕目は、アイヌ古式舞踊のオープニングを飾る“タプカラ”tapkar(踏み舞)。アイヌの伝統に裏打ちされた荘厳な雰囲気の中、アイヌ民族衣装に身を包んだ男女2人の演者が古式舞踊の始まりを告げる。観客も息をのみ舞台を凝視している。アイヌ古式舞踊にBGMやSE効果のような演出は一切ない。縄文時代から続いてきた日本先住民族の日々の生活から代々受け継がれてきた自然への尊敬と家族愛の舞踊を、その当時の言葉、踊りのみで忠実に再現しているのだ。演目は全12話にわたる。司会者による英語の解説を挟み、総勢18名のアイヌ演者により次々と演目は続いてゆき、観客から演目毎に大きな拍手を受けていた。
その後、舞踊集団セライケラ・チョウがインドに古くから伝わる軽快な古式舞踊を披露した後、インド人演歌歌手チャダが割れんばかりの拍手の中、ステージに登場した。現在、チャダはインドと日本を頻繁に往来しながら演歌を通じて、日本とインドとの友好親善を自らの使命として音楽活動をしている。今回のアイヌ古式舞踊のインド公演についても早い段階からニューデリーでの受け入れの準備を支援していた。
チャダは、自らのヒットナンバーの「面影の女」に始まり、吉幾三の「酒よ」「酔歌」千昌夫の「星影のワルツ」等、日本人なら誰もが知っている演歌のスタンダートを歌う。会場のインド人観客にとっては、初めて聴く音色、節回しの歌である人が多いと思われるが、1曲毎にバカ受け状態に大喝采の歓声と拍手が鳴り響びき、ボルテージは最高潮に達した。
ライブのラストソングにチャダはアイヌ古式舞踊の演者18名を舞台に呼び込んだ。チャダの発案で、インドの若者が好んで歌い、踊る、インド・バンジャブ州発祥のバングラビート(曲名:「ハニーシング」)がステージ上に鳴り響びき始めた。インド楽器を使用した激しいハウス調のバッグ・トラックにパンジャビ語のラップという、いかしたナンバーだ。まさに昨今、日本でも注目されるボリウッド映画音楽を彷彿させるビートが鳴り響く。チャダとアイヌ演者、そして日本人インド人観客が一体となって縦に横に揺れに揺れたダンシングは続いた。ここにインド音楽、アイヌ古式舞踊とのコラボレーションが結実した。
ライブ終演後、チャダは「アイヌの皆様との共演を私の故郷のインドでできた事は、本当に感謝の一言です。アイヌ古式舞踊には、インドの古い歌、踊り、言い伝えと相通じるものがあります。今日、見に来てくださったインドのお客様も、そう思われたと思いますよ。私の愛する演歌も含めて、日本の懐の深さに、インド人もビックリですよ!アイヌの皆様は、まさにクール・ジャパンです!」と興奮冷めやらぬ様相で感想を語った。
アイヌとは古墳時代、奈良時代には蝦夷と呼ばれる人々の中に存在していた。鎌倉時代に入り、交易がはじまり現在のアイヌ文化が形作られていったと言われている。
江戸時代の後期、明治時代に始まる同化政策により、現代の日本人と変わらない生活をしている。戦後、多方面からアイヌ文化の再評価が大きくなり、アイヌの方々自らも誇りを持ち、文化再生の動きとなり、今日に至っている。
今回のアイヌ文化保存会の18名、スタッフ3名総勢21名によるインドへのアイヌ文化使節団はアイヌ民族の歴史の中でも初めてのことであり、画期的なこととなったくしくも11月30日に天皇皇后両陛下もインドにご訪問をされており、ダブルの日印友好親善の週となった。
<コルカタ公演>
11月28日(木)開場18:00開演20:30
会場:プールヴァシリオーディトリア/Purvashree Auditorium
プログラム:第1部:アイヌ古式舞踊公演第2部:仮面舞踊プルリア・チョウ公演
<ムンバイ公演>
11月30日(土)開場19:30開演21:00
ソフィアバーバオーディトリアム/Sophia Bhabha Auditorium
プログラム:第1部:アイヌ古式舞踊公演
第2部:ガザルの女王ペナーズ・マサーニー公演
<ニューデリー公演>
12月2日(月)開場19:00開演20:30
ICCRオーディトリアム/ICCR Auditorium
プログラム:第1部:アイヌ古式舞踊公演
第2部:インド人演歌歌手チャダ、セライケラ・チョウ公演
アイヌ古式舞踊セットリスト
演目1 タプカラ tapkar (踏み舞)
演目2 ウポポ upopo (座り歌)
演目3 チャピーヤク cyapiyak (雨ツバメの舞)
演目4 ク リむセ ku rimse (弓の舞)
演目5 ハララキ hararki (大空を舞う一羽の鶴)
演目6 イヨンノッカ iyonnokka (子守歌)
演目7 アンナホーレ anna hore (鳥の舞)
演目8 エムシ リムセ emus rimse (剣舞)
演目9 サポ タプカラ sapo tapkar (小スズメで遊ぶ子供達)
演目10 ハララキ haraki (湿原で遊ぶ鶴の舞)
演目11 ヤイサマ yaisama (即興歌)
演目12 ホリッパ horippa (輪踊り)
出演:平取アイヌ文化保存会
貝澤耕一 新井幹子 川奈野一信 木幡サチ子 関 元子 織田久美子 村山留美子 豊田礼子 川奈野栄子 平村晴美 空 裕子 及川 直美 長野いくみ 木村弘美 藤川真知子 貝澤寛子 貝澤太一 関根健司(順不同)
インド人演歌歌手チャダ、セットリスト
♯1面影の女
♯2酒よ
♯3酒よ(ヒンデー語Ver.)
♯4酒歌
♯5星影のワルツ
♯6ハニーシング(パンジャビ語Ver.)
※♯6は、アイヌ演者がダンスで参加
◆平取アイヌ文化保存会「アイヌ古式舞踊」インド公演のお知らせ(ミティラ―美術館HP)
◆NPO法人日印交流を盛り上げる会HP