【連載】山岸賢介(ウラニーノ)[vol.2]「ツアーメン~バイトのシフトに入れない~」

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社会的に見ても特異なポジションに身を置くバンドマン。謎に包まれたバンドマンの生態を、自ら赤裸々に語り、明かしていこうというこのコラム。新年度も始まり新生活を始めたという方も多いでしょう。新歓コンパなど飲み会も増えるこの季節!そこで今回のテーマはこちら!

第2回「バンドマンに学ぶ飲み会攻略法」

バンドマンライフとは切っても切れないもの、それがライブ後の打ち上げ。「歴史は夜作られる」なんて言葉もありますが、お酒を飲んで交流し、腹を割って話す中で、意気投合して次のイベントが決まったりするわけです。

しかし、社会人の皆さんが苦手な先輩や上司ともつき合いでお酒を飲みに行かなければならない時があるように、バンドマンにも正直あります。特に人見知りのぼくにとっては、嫌いな人がいるわけじゃないんだけどなんだか居場所がない、そんな時がよくあります。

バンドマン歴12年。そんな打ち上げをいくつも経験してきました。そんな中でぼくが身につけた技。それは、ずばり消え方。そうです。いなくなっちゃえばいいのです。いづらい時は、ぼくもう帰る!
今回はTPOに応じての「飲み会での上手な消え方」をご紹介!

写真1
まず初級。大部屋での団体打ち上げ。乾杯から約2時間経過としましょう。この段階での消え方はさほど難しくはありません。もう周りもいい感じに酔っています。もしバンド単位で消えるならば、こそこそせずに爽やかに宣言しましょう。「すみません!ウラニーノお先に失礼しますー!」。ただ、この時に注意することは、視線を特定の人に向けないということ。なんとなく、全体の空気に挨拶する。間違っても各バンド、もしくは一人一人に挨拶に回るのはやめましょう。そんなことしたら松山千春さんのコンサートばりにアンコールが長くなります。あくまでさらっと帰る。

仮にバンド単位でなくソロで抜ける場合は、主催者・ライブハウス店長クラスだけ押さえておきましょう。申し訳ないオーラを出しつつ、こっそり話しかけましょう。「すみません、明日ちょっとあるんで…」。これで大丈夫。もちろん、本当に明日何かあるかないかは、大した問題ではありません。

写真1 ※大部屋編。これくらいの人数がいれば難易度は高くありません。手前テーブルで余裕をかます筆者。

写真2
お次は中級。同じく大部屋。時間は乾杯から1時間前後経過。この時間帯の難しさは、「もう帰っちゃうんですか」攻撃に遭う点です。こうなると「明日ちょっとあるんで…」に具体性が求められます。一番使えるのは、レコーディング。リハくらいだと、弱い。やはりレコーディング。「明日、レコーディングあるんで」。この言葉には黄門さまの印籠並みの制圧力があります。あと使えるのはボーカルの仮病。いずれにしてもこのへんはバンド内での事前打ち合わせが必要ですね。

写真2 ※これくらいの人数だと中級でしょうか。筆者は右サイド奥から2番目、いい位置につけています。あとはタイミング。

さあ、いよいよ上級。小部屋~中部屋。時間は乾杯後30分!これはかなりのテクが求められます。筆者でも年に数回やるかやらないかの大技です。このへんになると段階を踏むことと、そこそこの演技力が求められます。まず、トイレと出口の位置は正確に把握しておきましょう。

写真3
最初にトイレに行くという体で中座します。この時、さりげなく手荷物を部屋の一番出口付近にセットしておきます。これは、いざ消える時に荷物を持って席を立つと「あれ?帰るの?」とバレてしまうから。消えるときは手ぶらで。これ重要です。ただし携帯電話だけポケットに忍ばせてください。あとで使います。

手荷物セッティング後、一度戻ったら、あとはひたすら視聴率の下がるタイミングを待ちます。視聴率とは、飲み会での注目度。例えば誰かが一気飲みを始めたり、特定の人物がいじられて話題の中心に躍り出た瞬間、自分の視聴率はにわかにゼロに近づきます。プロはその瞬間を逃しません。すかさずポケットから携帯電話を取り出す!そして「あ、やべ、かかってきちゃった」的な表情をして(視聴率が低くても細かい演技を忘れない!)「はい、もしもし!」と電話に出るふりをしながら、席を立つ!そして「ちょっと外で一件電話してきます」的なオーラを十分に背中で演出しつつ、部屋の出口にセットしておいた手荷物を素早く拾い上げ、そのままランナウェイ!

写真3 ※このように高視聴率を持っていく男たちが現れれば、いなくなるのはけっこう簡単。

バンドマンに学ぶ飲み会攻略法?はい、おっしゃりたいことはよくわかります。何も学ぶところがないと!すみません。使える部分あれば使ってください。

それからぼくはお酒も打ち上げも大好きです。まさに取ってつけたようですが、大半の打ち上げを楽しく過ごしていることだけは最後につけ加えて、今回はこのへんで。

「あれ?そういえばウラニーノのボーカルさんは?」

◆【連載】山岸賢介(ウラニーノ)「ツアーメン~バイトのシフトに入れない~」まとめページ
◆ウラニーノ・オフィシャルサイト
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