ポーランドの新進ロック・バンドが今、すごく面白い
あのショパンが生まれた国だし、ポーランド・ジャズのレベルの高さはよく知られているし、ポーランドの人々は世界で最も音楽的才能に恵まれた幸せな人々だとよく思う。1970年代にはニーメン(Czeslaw Niemen)という、アート・ロックとファンクを見事に融合させたようなゴキゲンな音楽を生み出す才能を輩出している。今は亡き彼の音楽はポーランドにとどまらず、ドイツのオルタナティブ・ロックにも多大な影響を与えた。ポーランドのメジャーなロックバンド、ヘイ(Hey)、レプブリカ(Republika)、マリラ・ロドヴィッツ(Maryla Rodowicz)らの音楽も、卓越した楽器演奏技術に支えられて軽々と様々な音楽ジャンルを超越する魅力に溢れている。そして、優秀な女性アーティストが多い。これがポーランドのロックの最大の魅力である。若手の女性アーティストBrodkaもその精神を受け継いでいて、注目に値する。さて今日は、ポーランドのインディーズ・レベール、シン・マン・レコード(Thin Man Records)の素晴らしいアーティストたちを紹介しよう。
◆プイニー、コビエティ画像
まず、5人のメンバー(男性4名、女性1名)からなるプイニー(Płyny)。プイニーとはポーランド語で液体を意味する。2004年にデュオとして活動を開始、その後5人編成となった。「プイニーの音楽には、ワルシャワに古くから伝わるフォーク音楽や、地中海カリブ風楽曲、地中海風の音楽など世界中の音楽がごちゃ混ぜになっていて、そこにウィットに富んだ歌詞が加わるのです」とシン・マン・レコードのRobert Przyszlak氏。2012年のアルバム『Vacatunens!』では、東欧のフォーク感覚と牧歌的なサウンドから、激しいスライド・ギターやビートをフィチャーしたシックな楽曲まで、多彩な表情をもつ楽曲がおさめられているが、一貫して優しげなポップ感覚があり、何度聴いても聴き飽きない名作である。ハスキーでドスが利いた男性ヴォーカルと、さわやかな女性ヴォーカルのハーモニーは、フェアポート・コンヴェンションやヨ・ラ・テンゴなどルーツ・ミュージックを大切にする優秀なバンド群を彷彿とさせる。英語で歌われる曲もあり、女性ボーカリスト、オーラ・ブリンスカ(Ola Bilińska)がソロで歌う「Lucy's Dreams」や「Vacatunes」が特にすばらしい。
この才女、オーラ・ブリンスカは、ムージカ・コニツァ・ラータ(Muzyka Końca Lata)というバンドにも参加している。このバンドは「夏の終わりの音楽」を意味するバンド名どおり、ポップ色豊かなオリジナル・ナンバーを演奏し、ポーランド共和国で最もロマンティックなバンドと呼ばれている。1960年代のポップ・ナンバーに影響を受けて、2006年に『One Wedding Party and Two Funerals (Jedno wesele dwa pogrzeby)』、2007年に『2:1 for the Girls (2:1 dla dziewczyn)』の2枚のアルバムをリリース。ポーランドにおける人生と普段の日常を捉えた歌詞は、「気取らない、正直でチャーニングな音楽」と多くの音楽評論家から好評を得た。ポーランドのバンドHappysadやKometyのツアーにも同行、2009年のOff Festival(ポーランドのロック・イベント)にも出演した。2011年5月に3作目のアルバムとなる『PKP Anielina』をリリース。この3枚のアルバムは、「ザ・スモール・タウン・ラヴ」三部作と呼ばれている。2012年にシン・マン・レコードから4作目となる最高傑作『Szlagiery』をリリース。アメリカ・シアトルの夏をイメージしたという「Dokad」は、軽快なビート、鋭いカッティング・ギターが光るポップ・チューン。アルバム全体として、キャッチーで覚えやすいメロディ、心地よいハーモニー、繊細なアルペジオが満載の爽やかな名盤だ。
バンド名が“Women”を意味するコビエティ(Kobiety)はポーランドのアバンギャルド・ポップ史における伝説的なバンド。2001年のヒット曲「Marcello」は今でもポーランドのラジオで流れているロングセラーだ。2011年にリリースされた4作目となるアルバム『Mutanty』はポップ色を強めたアルバムでリーダーのGrzegorz Nawrockiはフランス音楽の官能性と、ドイツ音楽の精密さと、バルト海音楽の寂しげな響きを融合させたような曲を書く。堅実なリズム隊を中心にバンドの演奏もロック・スピリットに溢れており、良質なオルタナティブ・ロックや、ニューウェイヴ、マガジンやロキシー・ミュージックなどのスリリングなロックを想起させる。女性ベーシストでヴォーカリストのNela Gzowskaがよい。
その他、2012年のデビュー・アルバムがポーランドの新聞「Gazeta Wyborcza」にて「アルバム・オブ・ザ・イヤー」と評価を受けた、UL/KRは、2012年のポーランドの夏フェスの常連だった。3人の女性からなるドレコテ(Drekoty)はジャンルを超越した実験的なサウンドを聴かせる。これらのバンドの今後の活動も見逃せない。
ヨーロッパ圏にあって、特殊な音楽史を展開してきたポーランド。そして今もなお、ポーランドのロック・バンドがすごく面白い!
文:Masataka Koduka
◆シン・マン・レコード オフィシャルサイト
◆Płyny「Lucy's Dreams」
◆Thin Man Records Sound Cloud
◆プイニー、コビエティ画像
▲プイニー |
この才女、オーラ・ブリンスカは、ムージカ・コニツァ・ラータ(Muzyka Końca Lata)というバンドにも参加している。このバンドは「夏の終わりの音楽」を意味するバンド名どおり、ポップ色豊かなオリジナル・ナンバーを演奏し、ポーランド共和国で最もロマンティックなバンドと呼ばれている。1960年代のポップ・ナンバーに影響を受けて、2006年に『One Wedding Party and Two Funerals (Jedno wesele dwa pogrzeby)』、2007年に『2:1 for the Girls (2:1 dla dziewczyn)』の2枚のアルバムをリリース。ポーランドにおける人生と普段の日常を捉えた歌詞は、「気取らない、正直でチャーニングな音楽」と多くの音楽評論家から好評を得た。ポーランドのバンドHappysadやKometyのツアーにも同行、2009年のOff Festival(ポーランドのロック・イベント)にも出演した。2011年5月に3作目のアルバムとなる『PKP Anielina』をリリース。この3枚のアルバムは、「ザ・スモール・タウン・ラヴ」三部作と呼ばれている。2012年にシン・マン・レコードから4作目となる最高傑作『Szlagiery』をリリース。アメリカ・シアトルの夏をイメージしたという「Dokad」は、軽快なビート、鋭いカッティング・ギターが光るポップ・チューン。アルバム全体として、キャッチーで覚えやすいメロディ、心地よいハーモニー、繊細なアルペジオが満載の爽やかな名盤だ。
▲コビエティ |
その他、2012年のデビュー・アルバムがポーランドの新聞「Gazeta Wyborcza」にて「アルバム・オブ・ザ・イヤー」と評価を受けた、UL/KRは、2012年のポーランドの夏フェスの常連だった。3人の女性からなるドレコテ(Drekoty)はジャンルを超越した実験的なサウンドを聴かせる。これらのバンドの今後の活動も見逃せない。
ヨーロッパ圏にあって、特殊な音楽史を展開してきたポーランド。そして今もなお、ポーランドのロック・バンドがすごく面白い!
文:Masataka Koduka
◆シン・マン・レコード オフィシャルサイト
◆Płyny「Lucy's Dreams」
◆Thin Man Records Sound Cloud
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